019 高輪ゲートウェイ―人様々の何気ない朝の風景
――今日は朝から、高輪ゲートウェイの客先で打ち合わせ。
相手はア〇センチュアとオ〇クル。
……遅刻=社会的死亡だ。
気合を入れて少し早めに家を出たら――まさかの30分前着。
(おい、俺にしては奇跡の快挙)
今回は、少し余裕ぶっこいて、駅前のTULLY’Sに入ったときの話です。
◆ 朝のタリーズ劇場・第一幕 ― 謎のおばちゃん
カウンター横のガムシロップ&ミルクコーナーで、
ホットコーヒーを注文した、一人のおばちゃんが……まったく動かない。
後ろが詰まってるのに、微動だにしない。
(なんかの儀式か……?)
そっと覗くと、
トレイの上には――山盛りのフレッシュとレモン汁。
いや、待って。レモンは紅茶だろ。
ホットコーヒーに何を召喚する気なんだ。
まぁ、そこは見なかったことにして、
俺はさっさと席に座って、手帳を開き、
「今日の議題……クラウド連携、AI自動化、RPA……」なんて書いてた。
ふと気づくと――そのおばちゃん、
空席だらけなのに、なぜか俺の横の席に。
……おいおい。なんでピンポイントで来るんだ。
(いや、もしかして、俺、そんなにイケメン?)
トレイには、さっきの“山”がそのまま鎮座。
「それ、テイクアウト用かな」と思った次の瞬間――
コーヒーの横に置かれた紙コップの水へ、
レモン汁全部投入!
さらに、コーヒーにはフレッシュ8個と砂糖山盛り。
……そして、それを交互に飲み始めた。
――うまそぉ~~~に、満足げな顔で。
え、ちょっと待って。
それ、何て名前の飲み物!?
ホット・スイート・アシッド・ミックス・カオス?
(飲む者に一時的な勇気と胃もたれを与えるカオス飲料?)
◆ 第二幕 ― 謎の男
その時点で、すでに情報過多。
だが、朝のタリーズ劇場はまだ終わらない。
ふと顔を戻すと、
一個空けた向かいの席に黒スーツのお兄さん。
IBMのノートPCを広げ、
鬼のようなスピードでキーボードを叩いている。
できる男、感満載。
腕時計も金色でゴツい。ネクタイもキマってる。
……が。
袖口からチラリ――黒いタトゥー。
え、なに?サイバー系反社?
それとも「ORACLE認定インク腕刻印済エンジニア」?
◆ 第三幕 ― そして、俺の現実
ここは異世界――?
得体の知れぬ“名も無き爆弾ドリンク”で微笑むおばちゃんと、
――タトゥ、そしてノートパソコンと会社員。
ん~、今日も朝から、様々な人間模様を見てしまった。
――この二人が、同じ朝の喫茶店にいる不思議。
俺はカフェラテをすすりながら思った。
人の数だけ、朝のドラマがある。
(そして俺の朝は、それと比べたら、これ上なく地味だな)
そんなことを感心していたら――
「……あれ、会議5分前じゃん!!」
立ち上がって走り出す俺。
背中では、タトゥーの男がキーをチャカチャカ、
隣ではおばちゃんがフレッシュを一気飲み。
高輪ゲートウェイの朝は、今日も“カオス”が一杯の平和でした。
……そして、誰もが自分だけの“第一幕”を演じてる。
【今日の教訓】
・おばちゃんのドリンクは、もはや錬金術。
・タトゥーの男は、たぶん俺より仕事が早い。それに力もある。
・そして――早く着いた朝ほど、だいたい最後はギリギリになる。
でもまぁ、社会人の朝なんて、だいたいそんなもんだ。
【了】




