016 思ってたのと違った女子高生の強烈会話
※今回も昔の話です。
いまも他部署のプロジェクト支援で常駐中。
ただ、自分の部下チーム(4つくらい)はそのままなので、月に何度かは現場を回ってリーダさんへヒヤリングをしている。
その日も夕方から抜け出して、一つのチームがいる京王多摩センターへ。
◇
改札を出た瞬間、売店の夕刊に目が止まった。
すげぇインパクトのある一面に釘づけになり、思わず購入。
(夕刊も高くなったよなぁ……)
普段なら京王プラザホテルのラウンジを使うけど、
この日はホテルの団体予約で満席。
――仕方なく向かいの喫茶店に変更。
(でも学生が多いとガヤガヤしてるんだよなぁ……)
京王多摩センターといえば「サンリオピューロランド」の街。
改札周りから学生やファミリーでにぎやかだった。
アイスコーヒーを買って窓際の2人席へ。
リーダさんに「場所変えました」とメールしつつ、買ってきた夕刊を広げる。
本日の東スポ一面は……
――ジャジャーン!
『【実話】おれは――宇宙人を食べた!!』
……なんじゃ、これw
でもこういう眉唾モンの超常現象ネタ、けっこう嫌いじゃない。
◇
時間を見ると、待ち合わせまであと30分。
記事を追いながらクスクス笑いをこらえていたら――隣の席がやけに騒がしい。
横を見ると、派手めな髪色の女子高生2人組。
どうせドンキやコスメの話だろうと油断していたら……まったく違った。
活発そうなショート茶髪っ子が、声を張り上げる。
「アンタ知ってる?」
「ん、なに?」金髪ちょいおすましが返す。
「あのさぁ――《《鼻の穴のにおい》》って知ってる?」
「……は?」
え、待て待て待て。
マジ顔で、いったい、この2人は何の話を始めたんだ!?
◇
「鼻の穴のにおいだよ!」
「……?」
いやいやいや。
東スポを読むフリしてるけど、まったく内容が頭に入らん。
(吹き出す5秒前w)
「だから、鼻の穴のにおい!!」
「鼻の穴のにおいって?」
……頼む、それ連呼すんなぁぁぁ!!
おじさん、心の中で土下座です。
◇
「そんなのあるわけないじゃん!」
「あるって!――鼻の穴のにおい!」
「ばぁーか、鼻の穴に匂いあったらいつも臭いじゃん」
「あるって!!」
もう、さっき見ていた『宇宙人を食った話』が吹っ飛んぢまいましたよ。
ちょっと涙も出てきたし……w
「じゃあ、どんなにおいよ?」
「鼻の穴のにおいは――血の匂いなんだよ!」
「へっ!?」
「だから、《《血のにおい》》!!」
……金髪っ子、口半開きで目をパチクリ。
「それって、もしかして、……“鼻血”じゃね?」
「あーーーー!」
あー!じゃないって。まじ、勘弁しちくれぇ~(涙)。
これ、なんかの罰ゲームか、……腹痛いよ~(笑)。
◇
――30分後。
気づけば女子高生たちは消えていて、向かいにリーダさんが座っていた。
「レイジさん、お疲れ様です!」
「ああ」
リーダさん、手帳を取り出しつつ言う。
「報告を始めてよろしい……」
「いや待て。おまえ、“鼻の穴の匂い”って知ってるか?」
「……あー知ってますよw また東スポのネタか何かでしょ?」
……うわぁ、こいつ、付き合い長すぎだろ。
◇
【今日の教訓】
宇宙人は食べられても平気。
だが――鼻の穴の匂いは、おじさんの理性を確実に破壊する。
【了】




