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異世界転生を果たした、おば、コホン、お姉さまは、お嬢様生活のために悪役回避、頑張ります!  作者: 渡 幸美
第三章 建国祭と学園と

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59.学園祭。now.4

幸せな人は意地悪をしない。


前世でひっそり尊敬していた、ファビュラスな姉妹を見る度に、過った言葉。


彼女たちは周りが好き勝手に噂をしても、悪意をぶつけても、それを返すようなことは全くしなかった。と、思う。いろいろ余裕があるからさ~!って言う人も多かったけれど、その余裕があるように見える人なのに、そうでもない人って沢山いない?

自分に幸せな自信があるからこそできることだ、って勝手に思っている。


エレナは下を向きながら、「申し訳ございません」と、泣くことさえ諦めたような顔をして父親に返す。


エレナはずっと、父親に否定をされ続けたのだろうか。そうだとしたら、自分の存在を肯定するのだって難しくなってしまうだろう。そうだとしたら、本当にそうだとしたら、あの父親は何てことを。


マリーと共に、思わずぐっと一歩を踏み出そうとしたところで、彼の奥方がそっと何かを告げた。


「おっ、そろそろローレンの出番だ!お前たち、参考によく見ておけ!」


ご機嫌に大会観戦に戻るグリッタ侯爵。心配そうにエレナを見る夫人と、全てを諦めたように前を見るエレナ。そして弟だろうか、私と同じ年くらいの少年も、心配そうにエレナに寄り添っている。


ローレンとは、今年最高学年のエレナの兄らしい。マリーアがそっと教えてくれた。マリーアも複雑そうな顔でエレナを見つめている。


「マリー、リリー、座ろうか」


渋々という感じで二人で立ち尽くしていたら、お父様が優しいような、困ったような笑顔で、そっと私たちの肩を抱いた。


「「お父様、でも」」

「二人の正義感の強さは、もちろん長所だ。言いたいことも分かる。だが、他家の話に口を出すことはよろしくない」

「「……はい」」


思うところがありありながら振り返れば、前世だって他人の子を叱るのだって難しかったなと考える。親なんて、もっと難題だった。この時代の貴族社会なら、ますます難しいのは理解はできる。


「……それでも、わたしも、いつか侯爵が己を振り返ってくれたらとは祈っているよ。二人の優しさも分かっているからね」


お父様ったら。普段はヘタレのくせに、そういうことは気付くんだから。ヘタレだけど……お父様がお父様で良かった。私は、私たちは幸せだね。


「お父様、大好きです」

「わたくしもです」

「ありがとう。お父様もだよ」


なんだか二人して久し振りに甘えたくなって、お父様に肩を抱かれながらきゃっきゃする。お父様も嬉しそうにきゅっとしてくれた。日々忘れがちだけど、私はまだ10歳。時々、素直な子どもの気持ちが強くなる。そうだよ、10歳だもん。甘えたい頃なんだぞ!!きっとこんな時間もあげたことがないんだろ!グリッタ侯爵!!


「……グリッタ家はね、ちょっとうちと似ているんだ。マリーアは、学園で聞いたことがあったかな?」


少しばかり言い淀むように話すお父様の言葉に、マリーアは少し驚いた顔をして首を横に振った。


そうか、気を遣われているのかな、と、コソッと一人言ちて、お父様は続ける。


「エレナ嬢と弟君は、今の母君のお子だけど、兄上のローレン君は亡くなった前の母君のお子なんだ。……侯爵は、どうにも兄君に気持ちが行きがちのようでね……」


ああ、そうか。


それで完全に腑に落ちた。


いや、ダメなんだよ?自分が辛くても、人に当たるのは良くない。それは、正しい。

けれど彼女のあの姿は、前世の記憶がなければ私が通ったはずの道と、限りなく近いのだ。


ううん、生まれた時からああならば、物語のリリアンナよりも酷いとさえ言える。物語の中でさえ、行き違ったとはいえ父の愛はあったのだから。


「……グリッタ様…。だから……」


いろいろと悟ったであろうマリーアも、泣きそうな顔になっている。入学以来、あれこれと嫌な思いをさせられたであろうに、何だかんだ、優しいんだよなあ。


私なんか、オバチャンの記憶があるから少し寄り添えるだけで、素のリリアンナだったら怪しかった訳ですよ。


こんな瞬間瞬間の度に、やっぱりマリーアは魂から聖女なんだなと再認識する。自覚が薄いのが不思議なくらいだよ。


そうやって、ぶつぶつと考えながら観戦しているうちに、上級生の部の試合も全て終了した。


「89-61!ローレン=グリッタの勝利!!」


エレナの、兄上の優勝にて。


上級生の試合も、観客の皆さんの想像通りいつもよりレベルが高かったようだ。下級生の部に引き続き、観客の皆様は興奮しきりだ。


ローレンの試合も素晴らしかった。


彼の努力を否定する気は、全くもって、ない。


けれど、つい。目線はグリッタ家が集まる座席へ向かう彼を、目で追ってしまっていた。






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