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異世界転生を果たした、おば、コホン、お姉さまは、お嬢様生活のために悪役回避、頑張ります!  作者: 渡 幸美
第三章 建国祭と学園と

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56.学園祭。now.1

突然の敵(仮)に遭遇し、イデアーレと繋いだ手に自然と力が入る。イデアーレも、同じ様にきゅっとしてきた。


「……初めまして、グリッタ様。リリアンナ=サバンズでございます」

「イデアーレ=ドゥルキスでございます」


ひとまず挨拶はしたものの、どうすんだ、これ。


共通の話題は間違いなくマリーアだけど、まあ、出せないし。いや、出さなくても不自然か?えっと、まずは。


「グローリア様もいらしてたのですね」

「もちろんですわ。来年から通うところですし、フィス様とエレナの応援もありますし。リリアンナ様はマリーア様の応援かしら?イデアーレ様も?」

「は、はい。あの。僭越ながら、グリッタ様はお時間大丈夫ですか?」


確かに。あと30分くらいで大会が始まる。


「ご心配ありがとうございます。受付は済ませましたし、大丈夫ですわ。せっかくなので未来の王太子妃であろうグローリア様のお迎えに上がりましたの。お顔も見たいので」

「まあ、エレナ。まだ王太子妃は決まってはいませんわ」

「ほぼほぼ確定でございましょう。グローリア様が一番相応しいですから」

「まあ、エレナったら」


何だこの三文芝居。

イデアーレとそっと遠くを見る。

エレナさん、とっても儚そうな美人なのに、なあ。


「王太子妃と言えば、サバンズ様たちはあまり似ていらっしゃらないのですね?あのもう一人の王太子妃候補のお姉様と」

「!グ、グリッタ様!失礼です!」

「あら?似ていないご兄弟なんて、たくさんいらしてよ?そんなに失礼かしら?」

「で、でも」


エレナの歯に衣着せぬような言葉に、イデアーレが咄嗟に反論してくれたけれど、余裕のエレナにクスクスと流される。


事実、確かに私とマリーアは似ていない。

マリーアは本物の正統派ヒロインのビジュで、輝く金髪とどこまでも透き通った海のような、晴れ渡る青空のような、これまた輝くサファイア碧眼だ。最近しゃべるとアレだけど、目鼻立ちもお人形のように完璧に整っており、優しさ溢れた聖女様仕様だ。

対する私は、今は道から外した!とはいえ、悪役令嬢ビジュだし。目の色はエメラルドだけど、きゅっとツリ目だし、髪は青銀髪だから黙っていると冷たい印象を与えるし。


お互いの母似なんだよねぇ。


しかし!私は今の自分のビジュアルが大好きだ。十分すぎるほどかわいい!何より、大好きなお母様に似ているのだから、嬉しくないはずがない。姉さまだって、きっとそう。


そして、私たちはそんなことをひとつも気にしないくらいの仲良しだ。


「そうなんですよね。姉さまみたいに優しいお顔も憧れなんですけど、わたくしは仔猫みたいにかわいいって姉さまが褒めてくれる、自分の顔が大好きです!」


完璧な、子どもの純粋仕様でお返ししますわ!

弾けた笑顔とともにねっ。


「そ、そう…」

「おや、グローリア。エレナ嬢。まだこんな所にいて間に合うのかい?魔法トーナメントの方が先に開始だぞ?」


エレナがまた何かを言おうとしたところで、サーフィスが声を掛けてきた。もちろん、後ろにはいつもの三人がいる。


「フィ」

「フィス様!ええ、そろそろ向かいますわ。大会前にまたお会いできて良かったです。頑張ってくださいませ」


反応早いなー。グローリア。


「グローリア。従兄弟の応援はナシか?」

「そんなことはございませんわ。ヒンターお兄様も、応援しております。マークス様とテンダー様も」


ヒンターのツッコミに、グローリアもご機嫌に答える。そうだよねー、美形な従兄弟は自慢だよねー。分かる分かる。


「エレナ嬢も。始まってしまうぞ?」

「は、はい、殿下。ありがとうございます。もう参ります」


エレナは少し頬を染めて、慌てたようにお辞儀をした。


「ではフィス様。ともに参りませんこと?」

「いや。リリーとイデアもいたのだな。学園に不慣れな二人が迷わぬように、ご両親の元へ送ってくるよ。…大事な妹分たちで、愛し子仲間だからね」

「そうですわね!大事な妹御ですものね!さすがお優しいフィス様ですわ」

「はは。では、エレナ嬢も健闘を祈るよ」


エレナはまた深くお辞儀をし、サーフィスは笑顔でこちらに向かってきた。それと、テンダー。

ヒンターとマークスは、あちらをエスコートのように送って行くようだ。この気遣い、すごいな。


「大会前に会えて嬉しいが、大丈夫だったか?二人とも」


歩き出しながら、サーフィスがそっと聞いてくる。


「ありがとう。そんなに何も言われてないよ。大丈夫」

「ちょっと…失礼でしたけど。リリーとマリー

は似てるもの」

「ふふっ、うれしい。イデア、ありがとう」

「…何を言われた?」


剣呑な雰囲気に、私が「いやいや」と誤魔化そうとしたら、違うでしょ!とイデアーレが全部話してしまった。


「へぇ……」

「フィス、気持ちは分かるが、怖いぞ。それに俺もリリーとマリーは似てると思うよ。なっ」

「……そうだな。醸し出す雰囲気も似ているよ。俺はリリーのがかわいいけどね」

「フィ、また、そゆこと言わないで!聞かれたらどうするのよ」

「グローリアたちとは離れてるし、大丈夫だろ。聞かれても、妹だって言う」


サーフィスは開き直ったように悪びれずに宣う。「きゃ、わた、鈍いけど、やっぱりフィス様…?そうよね。やだ、わたし、どっちを応援したら」と、ぶつぶつ言い出したイデアーレにも完全にバレた模様。


「もう!」

「いいじゃん、リリー。大会前に好きな子に会えたらそりゃ嬉しいよ。フィスも浮かれるよ」

「テンダー!ストレートは止めて!」

「リリー真っ赤。めっちゃかわいい」

「だから!」


そう叫んだところで、イデアーレから貰った腕輪がピリッと反応し、四人で顔を見合わせる。


それぞれ慌てて周りを見渡すが、パッと見怪しい動きをしている人はいない。


「気のせい、かもです」

「いや、四人同時だ。きっと一瞬何かがあったと思う」


イデアーレの謙遜に、サーフィスがきっぱりと答える。


「でも、今はないな」

「……そうだな。なにか小さい悪意にでも触れたか。仕方ない。時間も迫ってるし、会場に急ごう。このまま終わるといいが、二人とも気をつけて」

「「はい」」


私たちは、遠くからエレナがこちらを切なそうに見ていることに、全く気付かなかったんだ。

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