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異世界転生を果たした、おば、コホン、お姉さまは、お嬢様生活のために悪役回避、頑張ります!  作者: 渡 幸美
第三章 建国祭と学園と

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52.おじいさまとおばあさま 3

「おばあ様、だったのですね」


マリーアの言葉に、その女性……マリーアのおばあ様は静かに頷いた。とても、哀しそうな微笑みで。


「マリー姉さま、お会いしたことがあるの?」

「ええ。母のお手伝いで町に買い物した時なんかによくお会いしてね。お手伝い偉いわね、って、いろいろ分けてくれていたの。お菓子もよく頂いていたわ」

「……そのくらいしかできなくて。ごめんなさいね、マリーア」


マリーアはゆるゆると首を横に振る。きっとマリーアのおばあ様は、こっそり二人を見守っていたのだろうな。自分のできる範囲でだけでも、少しでもと。


「リリー、いつまでも外にいても仕方ない。中へ入ろう。……ヘイゼル殿たちも、是非。セバス、皆を案内してくれ」

「畏まりました」


お父様が皆を見回して声をかける。

確かに、いつまでも門の内外で話していてもね。人も集まって来ちゃうし。


マリーアの祖父母は一瞬躊躇したものの、説明義務があるとジョーおじい様に促され、大人しく付いて来た。ヘイゼルは先ほどまでとはうって変わって、青い顔で俯いている。マルセールおじい様は無言だ。ひとまず二人はマリーアに謝って欲しいけど!


いつものティールームに案内されると、こんな最中(さなか)にも関わらずテーブルセッティングは済んでいた。さすが侯爵家の使用人さんだ。


私たち家族を中心に、左右にサバンズの祖父母、エールの祖父母が座り、私たちの正面にマリーアの祖父母が座る。全員が座ったのを確認して、お父様が口を開いた。


「まずはお二方、そもそもわたしに非があることは認めます。しかし、マリーアとシンシアへの暴言は認められない。どのようなおつもりか?」


おお、お父様がすごい迫力だ。普段がヘタレ過ぎていてすっかり忘れていたけれど、この人氷の宰相だった。

愛する家族に対してのあの言葉たちは、許せないのだろう。当然だ。だけど、気になることがある。


「あ、あの。お父様。ひとつだけ、よろしいでしょうか?」

「ん?何だい?リリー」


私に対しては、ふっ、と力を抜いて微笑むお父様。


「あの時……おじい様たちの周りに黒い霧のようなモヤモヤしたものが見えていて……お二人の言葉は、とってもとっても悲しくて、すごくすごく嫌でしたけれど、もしかしたらそのせいなのかなあって。わたくしがシルフ様のご加護をお借りして手をたたいたら消えて、お二人共に驚かれていたので……」


ご加護ではなく魔法の柏手だけど、ここはそういうことにしておく。


「……確かに、気になるね。もしかして、マリーにも見えていたのかい?」

「は、はい。おじい様たちの周りに。あれは……そう、そうなのね。気のせいではなかったのね……」


マリーアは俯きがちに応える。大丈夫かな、さっきの心ない言葉を思い出してしまったかな。


「マリー姉さま!だからね、おじい様たちは本心じゃなかったと思うの!」

「リリー……」

「皆様、発言をよろしいでしょうか」

「……どうぞ、シエナ殿」


「ありがとうございます」と、マリーアのおばあ様……シエナは前置きをし、語り始めた。


平民落ち直後の余裕のない時期にシンシアの妊娠が分かり、大喧嘩をしたこと。余裕のない自分たちからマリーアを守るために、シンシアが出奔したこと。そしてそれを後悔したこと。その後小さく始めた商会が軌道に乗り、マリーアの存在を認識したが、なかなか呼び戻す勇気がなかったこと。そんなことを悩んでいるうちにあの事故があってシンシアが亡くなり、マリーアが侯爵家に引き取られたこと。


「良かったと思う反面、自分たちを棚に上げて大事にしてもらえるかとの心配をして……。やはりこちらで引き取りたかったと、勝手な思いもありました。本当に勝手です。本当の意味で手が届かなくなってから、本当の後悔をしたのですから」


シエナは苦笑し、話を続ける。


「そして間が悪いことに、従業員の火の不始末で商会が火災を起こしてしまって。周りの住民にも迷惑をかけてしまって、補償ですとか諸々でまたゼロスタートになり……その頃から、主人がおかしな言動を始めて」


いなくなったシンシアや、まともに会ったことのないマリーアを呼んだりしていたらしい。


「マリーアはうちの聖女だ。マリーアを取られたから、うちの運がなくなったんだ、あいつらが悪いと……始めは疲れているだけだと思っていたのですが、日に日に悪化して、今日急に思い付いたようにサバンズ家に行くと駆け出して……まさか、こんなことをするなんて……お詫びしてもしきれません」


そう言って、シエナは深く頭を下げた。どこか呆然と話を聞いていたヘイゼルも、慌てて深く頭を下げる。


「申し訳ございませんでした。情けないことに、この数ヶ月の記憶が曖昧で……いや、でも、そもそもは自分の心の弱さです。本当に、本当に申し訳ございません!」

「記憶が曖昧……?それを信じろと?しかし、リリーたちの見た黒い霧を考えると……」


「その黒い霧、何かあるかもしれませんわ」


お父様たちが納得しきれずにいると、ずっと黙っていたサバンズのおばあ様……ヘレナおばあ様が口を開いた。


「マルセールも似たようなものなのよ。変な意地とプライドなのかしら、孫の顔が見たいくせに素直に言わなくて。今日になってわざわざ入れなくていい用事を入れて近くにまで来たものだから、マナー的にはよろしくないけれど、ギリギリに先触れを送ったのよ。いつまでもグズグズイライラされても、わたくしも疲れるもの。でもエール伯爵がいらしていることも知らず、そこはご迷惑をおかけしましたわ、申し訳ございません」

「あ、いえいえ、それは」


普段口数の少ないヘレナおばあ様の突然のダメ出しに、皆がちょっと唖然としている。私もびっくり。


「それで、着いたらあの体たらくでしょう?昔のことも謝りたいと言っていたくせに、何事かと」

「……すまん。自分の意思とは関係なく、口が動いているようだったんだ。……これも言い訳だな……。すまない……」


マルセールおじい様も、同じように?

何だかこれは嫌な感じだ。人の気持ちを操るような、暗い方へ引っ張るような()()がいるということ、と考えられるもん。そう、あの黒い霧だろう。

みんなも同じことを考えているのか、一様に難しい顔をしている。


ん?何かこれ、聞いたことあるな?


と、私が思ったところで、マリーアと視線が合う。彼女も気づいたようで、私に軽く頷いてみせる。


そうだ。ヒンターが話していた事件と似ているんだ。


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