50.おじいさまとおばあさま 1
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翌々日。
予定にはなかったが前日に先触れがあり、急遽母方の祖父母であるエール前伯爵夫妻が訪れて来ることになった。
エールのおじいさまたちは、もうすっかり悠々自適で旅行三昧で過ごしている。しばらく隣国へ行かれていたそうだが、やはり孫の顔が見たいとギリギリ夏休み前に帰国し、王都観光も兼ねて顔を出してきたらしい。羨ましすぎる老後だ。私もせっかくのこの生まれ、そこを目指していくぞ!と再度心に誓う。
そしてその急な訪問に、お父様とマリーアは緊張を隠せずにいたのだけれど……
「貴女がマリーアね?初めまして、貴女のお祖母様のアンリエッタよ。会えてとっても嬉しいわ!アンおばあ様って呼んでちょうだい!」
家族全員でエントランスで出迎えていたところ、マリーアを見たアンおばあ様が輝く笑顔で駆け寄り、ぎゅっと抱きしめた。
マリーアは抱きしめられたまま、迷っていた手をおばあ様の背中に回して「あ、アンおばあ様……?」と、きゅっと抱き締め返した。
「ええ、ええ、マリーア!わたくしもマリーでよろしくて?」
嬉しそうに返事をするおばあ様の腕の中で、マリーアは何度も頷く。
「こら、アン!抜け駆けとはずるいぞ!マリーや、わたしはジョージだ。ジョーじい様で良いからな。リリーも変わらず可愛いな、元気だったか?」
その様子を見て、おじい様も慌てて駆け寄り、お母様がそんな二人を笑って諫める。
「お父様、お母様、少しはしたなくてよ」
「ジョゼ!いいだろう、少しくらい!久しぶりなんだから!」
「そうよねぇ、本当に二人とも可愛いわ!お土産たくさんありますからね!」
「邪魔するよ~」と、二人はどこ吹く風で、私とマリーアの手を引いてズンズンと勝手知ったるティールームに向かって歩き出した。お母様も「もう、きちんとお手本になってくださいな!」と、窘めながらも、お父様と一緒に幸せ苦笑な顔でついてくる。
マリーアを見つめるおじい様とおばあ様の瞳は、本当に優しくて。それは私をいつも見つめてくれる瞳と、まったく同じで。
私も、自分の肩の力が抜けるのを感じた。大丈夫だろうとは思っていたけれど、やっぱり少し緊張していたみたいだ。そりゃ、マリーアはもっと緊張するわよね。
なんて、ちょっとしんみりとした私はさておいて、ティールームは最早お祭り騒ぎだ。二人は本当にたくさんのお土産を買ってきてくれたらしい。お父様もベビーグッズをかなり買い集めているのに、更に増えた。どうするんだ、あれ。
「リリー!何をぼんやりしているの?ほらこれ、マリーとお揃いで買ったのよ!今、着て見せてちょうだい、ほらほら、マリーも早く!」
「ええっ、今ですか?」
「そうだぞ。じじばば孝行だな!スザンヌ、アイリ、頼んだ」
「「賜りました」」
そして、私たちのものも大量にあって。つい、後退りするほどだけど。
ニコニコ笑顔に囲まれて、二人で衝立ての裏に強制移動だ。お母様も楽しそうに付いてきた。しかし、今日はドレス選びの予定でもないのに、しっかりと衝立てまで準備してある辺りがさすがというか何というか。
まあ、楽しいからいっか。贅沢をしみじみと噛み締めよう。うん、これからも頑張ります。
「……義父上、義母上、この度はわたしの不徳のいたすところで、申し訳ございませんでした」
「何を謝る。可愛い孫が増えた。それ以上でもそれ以下でもないだろう。なあ?アンリエッタ」
「そうですよ」
「しかし、あの、ジョセフィーヌには長く、いろいろと不甲斐なく……」
「あの子は幸せだと、ずっと申しておりましたよ。それが今、更に楽しそうで幸せになっただけよ」
「ジョセフィーヌが……」
「これからも、しっかり守ってやってくれ、それで充分だ」
「は……誓って。ありがとう、ございます」
私たちがきゃっきゃ着替えている頃に、父とじいばあでのそんな会話もあったようで。
そんなことはつゆ知らず、また夏休みの楽しい思い出が増えるかな~、なんて、ほのぼのとマリーアとお揃いのサマードレスに着替え終えた頃。
「旦那様、ご歓談中に失礼致します」
「どうした?」
セバスチャンが少し慌てた様子で入室し、お父様に報告をする。
「先ほど、前侯爵御夫妻から先触れがございまして。あと半刻ほどでこちらにいらっしゃると」
「は?半刻だと?父上は……いや、母上も何を考えているんだ?!」
その場にいる全員で驚いた顔を隠せない。
確かに身内だけれど、さすがに少し非常識だ。貴族的なルールにうるさい二人にしては、珍しいけれど。だからこそ、嫌な感じがする。
「エール前伯爵もいらっしゃるのに……何を」
「アルバート。わたしたちは構わん。返信も間に合わぬだろうし、気にするな」
「は……すみません、義父上、義母上」
何事もありませんように。




