32.沈黙は肯定
『……リリアンナが失礼なことを考えている顔をしている』
「いやっ?してませんよ?!」
私はぶんぶんと首を横に振る。
あれからシルフ様は本当に読心を止めたっぽい。けど、結構な頻度でいろいろバレてる気がする。解せぬ。
「お嬢様は表情豊かですからな……」
「……」にこっ。
さらにセバスチャンがポソリと呟き、スザンヌは無言で笑顔だ。沈黙は肯定ってヤツですね。これほんと、不思議よね。否定できない時って、本当に黙っちゃうよね!
……いやいや、それはそうだけど、今はそこじゃないな。
「コホン。えっと、ご一緒するのはやぶさかではないのですが、シルフ様は、その、そのままでですか?」
『ああ、そこか。それはホレ』
そう言って、シルフ様は私と同じくらいの人間の男の子になった。かなり美少年だけど。
「おお!魔法ですか?」
『左様。時々人に混じる時に使う。この状態なら、普通に人にも姿が見えるようにもなるな。せっかく忍ぶなら、人にも関わりたい』
「へ~!さすがですね!ちっちゃいシルフ様、新鮮です!ふふっ、目線も一緒ですよ?」
同じくらいの背格好になったシルフ様が可愛らしすぎて思わず顔を覗き込むと、『う……そうだな』と、顔を背けられた。子ども扱いが気に触ったかしら。
「では、お嬢様。シルフ様もご同行と殿下にお返事を書かれては?」
いいタイミングで、スザンヌが声をかけてくれた。すでに机にペンと便箋もスタンバイされている。さすがだ。
「うん、そうね。そうするわ」
『リリアンナと王子だけか?』
「ううん、マリー姉さまとヒンター様とマークス様もご一緒よ?いつも、婚約者ではないから気を遣ってくれてるみたい」
『なるほど』
マリーアには、殿下絡みなら必ず同行するからと、事前に言われている。姉さまにも予定があるのでは?とも言ったのだけれど、私が最優先事項らしい。嬉しいような、申し訳ないような、だけれど、殿下×マリーアの道もまだ閉ざされてないかもだし、お言葉に甘えている。
まあそれに、二人きりとかお父様が許さないだろうしね。そして殿下もその辺は分かっていそうな気がする。
『王子と頻繁に会っていると妖精たちに聞いたので来てみたが……。共に、まだまだこれからというところか。ふむ、先は長いな、焦らずに参ろうか』
シルフ様が一人言のように呟いたので、全部を聞き取れなかった私は聞き返した。
「はい?何の先ですか?建国祭は5日後ですよ?わりとすぐです」
『ああ、そうでは……まあ、うん、了解した。では当日、また来る』
私の頭をぽんぽんして優しい微笑みを残して、シルフ様は文字通り風となって消えた。相変わらず自由だなあ。
「もう、いつも自由よね」
「ふふっ。お嬢様はたくさん愛されてますね」
「え?うん。愛し子的な扱いだからね。ありがたいよね~。あの愛情表現は恥ずかしいけど、わたくしが子どもだからよね」
「……なるほど。確かに先が長いお話ですな」
「ん?セバスチャンまで、何?」
「いえ、普段は大人びたお嬢様も、まだまだ10歳だなと安心したと申しますか」
「まあ、10歳だけど……あ、人生これからってこと?」
「ふふ、それも含めまして」とやんわり笑顔で躱し、書き上がった返事を持ってしれっと部屋を出て行くセバスチャン。はて?
「何の先だろうね?スザンヌ」
「……」にこっ。
何だかデジャヴだけど。ま、いっか。




