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前略、親友殿~いつまでも、かわらずに~  作者: 藤原 高彬
第二章:転入生と留学生
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第37話 おとり捜査(修正版)

第06節 泣いている少女〔6/8〕

◇◆◇ 翔 ◆◇◆


 10月3日水曜日。


「エリス、協力してくれ」

「なにをすればいーの?」


 俺はエリスに、協力を求めた。


(おとり)になってほしい。具体的には、こーちゃんの彼氏の誘いに乗ってほしい」


 こーちゃんの彼氏(田口やすしという名らしい)が、〝組織〟の顧客なら。そこに、何らかの手掛かりがあるはずだ。

 普通に考えて、小学生女児を囮に使うなど、複数の意味でアウトだろう。けど、エリスはそのどれにも当たらない。今回の事件の、当事者の一人だし、それどころか逆の意味での黒幕だ。今回に限り、エリスの身柄を使うことに、良心は(とが)めない。


「美奈。GPS発信機(トレーサー)と〔泡〕を使って、エリスの行動の追跡。ソニアはボレアスの視界を使って上空監視。柏木は、随時美奈からの連絡を受けて、距離を置いての尾行」


 とはいえ、全く無防備にエリスを使う気はない。万に一つの危険もないのは間違いない。どっちかっていうと、「田口やすしという男」がこの世から痕跡さえ残さず(俺たちの記憶にも残らず)消滅する危険を考慮すべきだろう。だけど、エリスの裸を余所(よそ)の男が見る。場合によっては汚い手で触る。そんなことになったら、それを想像するだけで、俺はこの男を切り刻まずにいられないだろうから。


 ちなみに、武田と松村さんは。エリスたちの担任教師が、女子トイレ(洋式)のウォッシュレットの位置に仕掛けられていたカメラを回収しに来たのを確認したという。保健室の先生と協力して、次にカメラを回収するタイミングで、現行犯逮捕しようということになっているのだとか。

 教師が田口と〝同じ穴の(むじな)フレンド〟なら、そっちから〝組織〟に繋がる糸を見出せるかもしれない。だから、二正面作戦という訳だ。

 ソニアとボレアスの捜査の方は、対象が漠然とし過ぎている為今一つ進展がない。ナンパに(いそ)しむ野郎どもと援助交際(パパかつ)するJC・JKの確認。そうやってデータを蓄積していくことで、こっちの捜査で浮上した容疑者の裏を取る訳だ。


 さすがに、俺たちは捜査の素人で、地道な聞き込みに限界を覚えている。なら、多少の無茶をやってでも(やぶ)(つつ)き、蛇を呼び出すしかないだろう。それが子蛇か大蛇か毒蛇かは、出て来てからのお楽しみ、ということで。


◇◆◇ ◆◇◆


「う、うれしいかな。ボクの誘いを受けてくれるなんて」

「こーちゃんがあんなにひたむきに好き好き大好きって言っちゃう、おにーさんのことにちょっと興味が出てきたの」


 うちの近所で。エリスが田口に捕まった。取り敢えず庭先に隠れて様子を見ていたら。


 ……視界が、ぼやけた。ちがう、二重写しのように、別の情景が視界を埋めつつあるんだ。


「ショウ、くん?」

「これは、〔千里眼(クレアボイアンス)〕だ。おそらく、エリスの側から強制的に」


 こんな、魔法を逆用して自身の視界を強制的に相手に突きつけるなんて、エリス以外に出来るはずもない。しかも、耳もだんだん遠くなっている。否、エリスの聴覚に支配されているんだ。


「美奈、俺の身体を任せる。もうすぐ耳も聞こえなくなる。だから」

「うん、わかったよ。ショウくんの身体とエリスのトレース、両方任せて」

「……悪戯(いたずら)するなよ?」

「……ちっちゃいままのショウくんのアソコに興味があったんだけど」

「駄目だ」

「はぁい。」


 全く、油断も隙もない。

 ともかく、俺の視覚と聴覚は、エリスのそれに支配された。触覚は、俺の肉体の方に依存しているようだ。つまり、俺を抱き支える美奈の胸の柔らかさは感じられても、この小太りの男に触られた嫌悪感はない。それを有り難く思うべきか、エリスひとりに押し付けていることに罪悪感を覚えるべきか。それを言ったら、嗅覚もだ。さぞ、この男の体臭は(くさ)い事だろう(偏見)。


◇◆◇ ◆◇◆


 そして、エリス(オレ)が連れられた先。そこは、田口の住む、アパート。

 散らかっており、足の踏み場もない。


「ご、ごめんね。ちょっと散らかっているよね」

「うん、おにーさんがここで暮らしているってことが、よくわかるんだよ?」


 エリスも、好き勝手なことを言う。けど、点在している洗濯物の中に、明らかに女性用の(それも性的アピールを考えない、女児用の、けれど男の体液で汚された)下着がある時点で、もしかしたら状況証拠として充分かもしれない。


「あ、パソコンだ。(いじ)っていーい?」


 それはエリスの好奇心か、それとも俺に向けた情報提供のつもりなのか。

 田口の部屋にあったノートPC(ライブカメラ付き)を見て、エリスが。


「使い方、わかるのかい?」

「うん、授業で習ったよ」


 それを開いてみたら。隠しフォルダの設定さえしていないどころか、壁紙設定されていたのは。

 こーちゃんが、全裸で笑顔で破廉恥(はれんち)な格好をしている画像だった。

 知り合いのそんな映像を目の当たりにするのは、結構衝撃的だ。何より、被写体であるこーちゃんは笑っている。自分が、「性的虐待(ぎゃくたい)」被害を受けていることを、自覚していないということだ。


「あれ? これ、こーちゃん?」

「うん、こーちゃんの、一番綺麗な姿を壁紙にしているんだよ」


 正直、俺にとってはもうお腹いっぱい。この壁紙だけで、この男を警察に突き出す充分な証拠になる。しかも、このPCを解析すれば、余罪がいくらでも出てくるだろう。それ以上に、この部屋を捜査するだけで、どれだけの事実が判明するか。

 だけどエリスの好奇心は止まらない。基本的に隠していないけれど、それでもやっぱりヤバいフォルダは、微妙に探しづらい場所に設定されていた。けど、エリスは的確にそれを見つけ出して。

 そこにあったのは、おそらく歴代彼女の裸体及び行為画像。

 或いは、中学生くらいの少女が複数の男に凌辱(りょうじょく)された画像や動画。しかもその凌辱画像・動画に主演している〝少女〟たち(・・)は、〝歴代彼女〟の成長した姿と思えた。つまり、ネットで拾ってきたデータじゃないってことだ。


 うん、この男が女児に対して行った行為の証拠としては、充分。それを殊更(ことさら)探り出すのは、エリスの悪巫山戯(わるふざけ)と考えるべきだろう。幼女性愛の趣味を持たないにもかかわらず、知人である女児の性器の奥の奥まで見せつけられるのは、やっぱりどうかと思う。


 はっきり言って、もう充分。この男に、社会生活させること自体害悪だと言えるほどの異常者だということは、わかった。(エリス)の友人が、この男に汚されて、けれどその意味を理解していないということも。

 常識的にはあり得ないけど、幼女と大人の純粋な恋愛、というのも無い訳じゃないだろう。体裁を整え両親の許諾の(もと)、責任を持って行われる幼女と成人男性の真剣な恋愛が、ないとは言えない。けど。

 この男とこーちゃんの関係は。そういったものじゃない。エリスが確認した画像や動画から判断したら、単にこの男は、成熟した女性は趣味じゃない、というだけのことだから。この男は、こーちゃんが好きなんじゃなく、ただ未熟な美女児に興奮していただけなんだから。だからこーちゃんでなくエリスであっても構わないんだから。


 もう充分。だから、この部屋からすぐにでも逃げ出せ。

 そうエリスに伝えたい。伝わるかどうかもわからないけど。


 そんなタイミングで。


「え、えりすちゃん。えりすちゃんの綺麗なところ、見せてほしいかな?」


 田口が、エリスに迫ってきた。

(2,902文字:2019/11/12初稿 2020/08/31投稿予約 2020/10/16 03:00掲載 2020/11/18運営の指摘に伴い修正)

・ 「ちっちゃいままのショウくんのアソコに興味があった」。美奈さんが、翔くんの〝それ〟を見る時は、最近はいつも屹立していました。うん、そういうシチュエーションだったんです。

・ 「触覚は、俺の肉体の方に依存しているようだ」。つまり、美奈さんが翔くんのズボンを脱がして悪戯しているその感触を(以下略)

・ エリスの視界がこーちゃんの{ピー}画像を捉えた時、翔くんの下半身がどうなっていたのでしょうか。どうにかなっていたのなら、それは視覚の刺激的画像が原因か、それとも触覚刺激が原因か?

・ こーちゃんの受けた性的虐待の描写が生々し過ぎたと、運営の指導が入りました。この描写に「性的刺激を喚起する」と感じるのは、小学生女児に欲情する性的異常者だけだと思われますが、どうやら性的異常者の視点で興奮する内容は、運営的にアウトなようです。

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