補足話2 登場人物のその後(リリセリア側)
ショウ・イイヅカ=マキア王:
マキア本土の復興は、もう異世界知識・技術に頼る必要はなく。時間はかかるけど自力で復興出来る状況になったので、あとは官僚たちに任せて。
一方外交的には、ローズヴェルト王国の崩壊までのタイムカウントが進んでいることがわかっているので、その影響に巻き込まれないように国内を整える必要もあって。
更には海運。ジブラルタル(仮名)並びにケープタウン(仮名)の開発と、スエズ地峡(仮名)を越える交易路の開発。東部との海上交易を成立させる為に、天竺の帝国との間に遠征戦争を起こしました。兵站が乏しいこの遠征戦争でマキアはかなり苦戦しましたが、東部南方に興った新帝国が陸上(越南方面)から援軍として進軍してくれ。戦争の結果としては停戦講和。マキア側の商船は(高額な関税を課せられたものの)燃料や水・食糧等の補給は認められ、東部諸国との海上交易を成立させることが出来ました。しかし天竺帝国はこの交易の価値を見誤り。高額な関税を課したつもりの入港料も、この東西交易の利益から逆算するとかなり安いものでしかなかったので、最終的にこの東西交易に参加することを求めたのでした。
ユウ=ジ・アークウィザード=ザ・グランドマスター:
爵位は無し。「爵位よりも大魔導師、大軍師の二つ名の方が重いだろう」とは、マキア王国宰相たるハンコック侯爵の弁。
マキア軍師としてのユウは、その後南方戦線を専任し、海外都市(ジブラルタル、ケープタウン、スエズ)の開発と対天竺帝国戦争の最前線で采配を振るい。チートを封印したことが理由のひとつであるにしても、「対天竺帝国戦争は大軍師が勝てなかった唯一の戦争」と後世の史書に記録される結果となりました。もっとも本人に言わせれば、「勝てばより一層泥沼に嵌った」と。それが事実なのか負け惜しみだったのかは、後世の学者の評価によって変わるようですが。
ヒロ・ウィルマー東方伯=〝白玉の仙人〟=西部尚書:
西部に於いての拠点は、ドレイク王国コンロン市に置き。貴族姓としては「ウィルマー」を名乗ることになりました。対東方交易・交渉に関しては適当に選任した官僚に任せ。無難な立場を維持していた模様。もっとも、交渉相手である「シング帝国西部尚書」も自分なのですから、いくらでも調整の余地があり。
東部ではナーシュ・チェン・チャンの三拠点を自在に往来して交易と情報交換。〝アスラン〟こと宇泽皇子が選んだ伴侶の弟に、中原南方で「ミンユー帝国」を建国させ。ちなみに〝ミンユー〟(名付けは某大軍師)は中国語で「百越」を意味し、地球では漢民族とは別の、長江流域に栄えた古代文明(黄河文明とは別の、長江文明として近年知られつつある)を築いた民族を祖とした春秋時代の中国の王朝(当時中国南部を楚・呉と三分し、現代の越南の源流ともされる)の名前を借用しています。何気に日本の縄文文明との交流(稲作は長江文明からもたらされた、長江文明は縄文文明人が移住して定住した、そして寿司の元祖である馴れ鮨を生み出した、等)も噂されていますけど。
一方本拠のひとつ、ナーシュを含む高原地方でも、民族統合の動きがあり、ナーシュもその戦乱に巻き込まれることになります。ただナーシュは、須弥山を越えた先の山岳民族と既に交流があった為、防衛戦力は他の諸部族とは比較にならず。高原地方統一に際しても、かなり優位に交渉展開出来るようになりました。
みなミナ・チャクラム・リングダッド王女=マキア王妃:
輿入れは、無事済んだ模様。但しその少し後に行われた、マキア王女アドリーヌの、スイザリア=サウスベルナンド辺境伯への輿入れに比べて規模が小さかったのがご不満? 「オスプレイで迎えに行った方が好かったかな?」「でもそれだと一瞬で終わっちゃうから、演出としては足りないよ」
輿入れ一年後(本人の主観時間では、七年後)に第一王子(主観的には第三子。異世界に兄姉がいます)を出産。国を挙げてのお祝いを。この子はどんな人生を歩むのでしょうか?
ともかくマキアでは、彼女は特にしなければいけないことはないので、のんきに桑畑を育てて養蚕業と織物業を振興させて、ついでに養蜂業にも力を入れて。気儘に楽しく過ごしています。
シズ・ハンコック:
爵位綬爵は拒絶。貴族夫人の立場も拒否。気儘な一平民として、国王の執務室や国軍の戦略研究室にも無条件で立ち入れる立場を満喫して。だから貴族姓として「ハンコック男爵家」の名を借りるものの彼女を「男爵夫人」と呼ぶ者はおらず。
そしてマキアでも松村道場を開設し、国軍兵たちが揃って参加。剣聖侍女は変わらず健在でした。
ちなみに、彼女はリリセリアでは子供を産まず。リリセリア側の血統はハンコック家に統一すべき、と考えたようです。
ソニア・ウィルマー東方伯妃=西部尚書令夫人:
東部でも西部でも、ウィルマー伯家の社交担当。戦闘からは遠ざかり。でもさすがに貴婦人相手の「おほほウフフ」には耐えられず、西部では迷宮に、東部では山林に憂さ晴らしに行くこともしばしば。なお社交に際しては拳銃を常時携帯。心の中で相手をハチの巣にしている模様。
エリス・ドレイク・ショゴス王女=マキア王妃:
マキアでは、無事王妃の座に就くことが出来た模様。但し子作りしているかは不明。実は官僚たちも国民たちも、ドレイク王国とマキア王国の繋がりを強化する為の「白い結婚」だと認識しています。輿入れ前からマキア王並びに王妃ミナとも仲睦まじいので、情無き政略結婚だとは誰も思っていませんが。なお本人曰く、「時が来れば、産みます」とのこと。まだまだ長期戦を想定しているみたいで。
リコリス=ドーニャ・リンクス・バハムート公女=ウィルマー伯妃:
ウィルマー伯家の元気担当。西部では公女(王の娘)の立場を活かして色々なところに首を突っ込み。東部では裏で「暗殺公主」などと呼ばれるほどに喧嘩上等で。
ちなみに東部では「尚書夫人」の立場はとらず、最後まで「尚書令嬢」として扱われていました。
フレデリカ・ハンコック男爵夫人:
爵位(立場)としては男爵夫人ですが、正しくは「侯爵令嬢にして次期男爵の令母」。夫であるユウが綬爵しなかったので、実父並びに息子の爵位を借用する形になっています。勿論「大軍師令夫人」の立場の方が強いのですが。ハンコック男爵家の家政担当。
測量を学び、その知識を広める為に算術学校を開校。建築から開拓まで、幅広く活用出来また即座に応用出来る知識の為、貧困から脱出する最短ルートとして多くの生徒が学びに来ました。
アドリーヌ・マキア王女=サウスベルナンド辺境伯妃:
輿入れ後、真っ先に着手したのは北方国境の防備強化とその為のオールドハティス市の復興。ローズヴェルト王国崩壊までのカウントダウンが進んでいることは明らかだったので、それに巻き込まれないようにする為にもオールドハティス市の要塞化が必須でした。
メロディ・スー=マキア王女:
リリセリアに来た彼女は、マキア王の養女として王女籍を得ます。多芸な彼女が最初に活躍したのは、対ローズヴェルト戦争。内乱に先立ち近隣諸国との国境紛争が生じ、それにマキアも巻き込まれました。が、自重を知らないメロディ王女が暴れた自覚もなくそれを鎮圧。誰かにそれを突っ込まれることさえなかったので「私、何かやっちゃいました?」以前の話だった模様。その後に正式な宣戦布告を経て開戦したのですが、激おこぷんぷん王女が突撃してローズヴェルト軍の本隊を撃破してしまいました。「もう王女ひとりで良いんじゃね?」とは、この戦争の為に派遣された兵士の言葉。同行したマキア軍の副官は、部下たちから「軍曹可哀曹」と慰められたとか?
(3,119文字:2024/07/08初稿 2024/07/09投稿予約 2024/07/15 09:00掲載予定)




