第05話 ペドフィリアと多くの問題
第01節 新学期〔5/8〕
◇◆◇ 翔 ◆◇◆
武田は生徒会に呼ばれたので、取り敢えず後程合流することに。
そして俺たちは、エリスが通う、ことになった小学校を目指した。
さすがに、今のエリスを俺一人で迎えに行くと、冗談抜きで通報される危惧がある。だから美奈について来てほしかったのだが、美奈だけじゃなく松村さんとソニアも同行してくれた。そして、柏木も。
ちなみに柏木は、ソニアの転入に際する宣言を受けて、ソニアのことを真剣に考えている模様。腕を組んでいる訳でも手を繋いでいる訳でもないけれど、自然に肩が触れ合う位置で、ソニアと並んで歩いている。それも、お互い選んでその位置を、だ。
柏木は普通に車道側を、ソニアは歩道側を歩いている。そして手を繋いでいる訳じゃないけれど、柏木の左手はソニアの背中を触れるか触れないか。これはソニアのお尻を触ろうとしているんじゃない。何かが起こったとき、すぐにソニアを抱き寄せて庇える体勢だ。ちなみにソニアもその事に気付いている。ソニアの能力なら、柏木に庇ってもらわなくてもある程度の危険からは自分の身を守ることが出来るだろう。だけど、柏木のその体勢から、守られる自分を嬉しく思っているようだ。
無防備に近く、けれど柏木に守られるに任せるのではなく自分もまた周囲を警戒し。むしろ通常の危険なら柏木が守ってくれるからと、それこそ前すら見ないレベルで無警戒に。その一方で生命の安全に危険が生じそうなリスクに対しての警戒レベルを一段階上げて。つまり「街を歩くのに双眼鏡を覗き込む」形で柏木に依存していた。
「エリス!」
「あ、ぱp……じゃなく、おにーちゃん♥」
エリスは、母さんから俺に対する呼び方を矯正されていた。けど、以前のエリスが口にした「ぱぱ♥」というのも威力があったけど、今のエリスが口にする、「おにーちゃん♥」という呼び方も、結構破壊力がある。
八歳女児に欲情するのは異常性愛者だけだが、エリスの場合実年齢は三歳。しかも、外見可変だから、その気になれば十八歳の外見にもなれる。その上人間じゃないから、初潮だの処女膜だの排卵日だのといった普通の女の子の問題もない。その上ショゴスの生殖の在り方を考えると、人間同士の交わり、のようなものは単なる嗜好に過ぎず、その気になれば目を合わせるだけで子供を妊娠出来るだろうから。もっとも、エリスの場合相手が女性だったとしても子供を懐妊することが出来るだろうし、逆に年齢性別問わず相手を妊娠させることだって出来るはずなのだから。
美奈は、少女性愛者だ、と非難するレベルで俺を睨むけど、エリスがその気になったら年齢も実際の性行為もまるで意味がなくなる。だから逆に、その辺りのことはその時その状況が来るまで、棚上げするつもりだ。
「おにーちゃん、どうしたの?」
「あぁ。やっぱりエリスのことが気になってな。だけど、取り越し苦労だったようだな。その子たちは、友達かい?」
「うん! さーちゃんとこーちゃん。初めて会ったその瞬間からだいしんゆーなの!」
どうやらエリスは、転入初日に親友を作ることが出来たようだ。
「えりすちゃん。その人が、えりすちゃんのおにーちゃん?」
「うん♥ となりにいるのが、おにーちゃんの将来のお嫁さんだよ?」
……最近の、小学生女児は。一体どんな話をしているんだか。
「そうしたら、エリスとお友達の邪魔しちゃ悪い、か」
「そんなこと無いもん。さーちゃん、こーちゃん。今日はここで、いい?」
「うん、いいよ? えりすちゃんも、最愛のおにーちゃんに甘えたいでしょうからね?」
「そうだね。あ~あ。私も〝彼〟に、可愛がってもらおっかな」
と、エリスは友人たちと別れて俺たちに合流することにしたようだ。
……けど、こーちゃん、って言ったか? その年で〝彼氏〟がいること自体ちょっと気になるけど、それ以上に『可愛がってもらう』って表現は、ちょっと不穏な想像をしてしまうんだが。
◇◆◇ ◆◇◆
エリスの友人問題はともかくとして。
この二学期は、俺たちにとってはイベントが立て続けに起こる。
9月の20日から23日は、修学旅行。愛媛・山口・佐賀、じゃなく、広島・山口・福岡の三泊四日。(どこから愛媛と佐賀が出てきたんだか)
10月6日は、体育祭。
12日から14日は、文化祭。
23日からは、中間試験。
11月3日は、音楽祭。
12日は、生徒会役員選挙。
そして12月11日から、期末試験。
それに、俺たち自身の予定が組み込まれると、ほぼ毎日何かがある、ってことになる。
直近の問題でも、明日(9月1日土曜日)には、バイクメーカーの人とバイク専門誌の編集長と打ち合わせがある。また、京都呉服店組合が美奈の仕入れ先に圧力をかけてきた問題でも打ち手を考えなければいけない。『みなミナ工房』だけが負けなければいいのならいくらでも手を打てるけど、その取引先の被害が最小になる形で組合に勝とうと思ったら、打ち手を考える必要が出て来るからだ。
そして、異世界問題。
具体的には、アドリーヌ姫の問題だ。
姫は、俺たちから学んだことで、逆にドレイク王国の教育制度に疑問を持ってしまった。勿論俺たちは、ドレイク王国の教育方針に従ってアドリーヌ姫を教導したけれど、俺たち自身は、ドレイク王国の教育知識の内容の一部が間違っていることを知っている。そのことが、姫を教育する際に透けて見えてしまったのかもしれない。
そうなると、姫に対する今後の教育方針は、二つに分かたれる。ひとつは、余計なことを考えずに教えられたことを素直に受け止めろ、と指導すること。
もうひとつは、思い切って姫に現代日本の知識を余さず与える事、だ。
だけど、どちらを選ぶにしても。ドレイク王国へ留学させたモビレア公、並びに姫の婚約者であるアマデオ王子の許可が必要だし、留学を受け入れたドレイク王国にも許可を得る必要がある。
そして、「現代日本の知識を余さず与える」、もっと簡単に言えば、「アドリーヌ姫を日本に留学させる」。そうなると、また戸籍や住民票に関して色々しなければならないし、受け入れ先になる家(さすがに飯塚家も水無月家も、これ以上は不可能)を探す必要も出てくる。更に、当然ながら留学前に最低限の知識と常識を与えなければならないんだ。
ソニアが言ったように、一朝一夕で解決出来る問題だけではないと考えると、また(事実上の観光で)向こうの世界に足を運ぶ必要がある。その時に会わなければならない相手に、アドルフ陛下が含まれていると考えると、『魔王戦争』の戦後処理を真正面から受け入れる必要も出てくるだろう。こっちはそもそも逃げ切れるとは思ってなかったけど、これで「逃げる」という選択肢もなくなる訳だ。
これからのことを改めて、色々考えないといけないな。
(2,724文字:2019/09/23初稿 2020/06/30投稿予約 2020/08/13 03:00掲載予定)
・ 担任教師「今学期から皆の友達になる、水無月えりすくんだ。仲良くしてほしい」
水無月えりす「水無月えりすです。将来の夢はおにーちゃんのお嫁さんになることです。宜しくお願いします」
担任「いや、水無月くん。お兄さんとは普通、結婚出来ないから」
えりす「大丈夫です。おにーちゃんとは戸籍の繋がりも血の繋がりもありませんから。
だけど、おにーちゃんには実は、将来を約束した恋人さんがいるんです。
だから、エリスの将来の第一志望はおにーちゃんのお嫁さんですけど、第二志望はおにーちゃんのお妾さんになることなんです。えっと、さんぴー、って言うんでしたっけ?」
担任(駄目だコイツ、早く何とかしないと。そうだ、俺の愛の力で!)
・ さーちゃんはロリ巨乳の兆候が既に。こーちゃんはまだつるぺた。
・ 日本では、法律用語と医学用語と一般用語が混乱しており、同じ言葉でも使用されるシーンで意味が異なる場合があります。医学用語では、「幼児性愛」、「児童性愛」、「未成年性愛」、という区分のようですが、最近は中学生以下に対し「性(犯罪)行為を伴う」=「ペド」、「性(犯罪)行為を伴わない」=「ロリ」、あたりで区分されているようです。イエスロリータ・ノータッチ。つまりア=エトはロリ(確定)。
法律用語としては、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)が定義する「児童」は18歳未満(既婚者は民法753条に基づき18歳未満であっても成人と看做される:擬制成人:但し2022年(令和4年)以降は、民法が定める成人年齢並びに女性の婚姻が可能年齢18歳となり、擬制成人という扱いは無くなる)、児童ポルノ禁止法(児ポ法:正式名称「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」(平成十一年法律第五十二号))が定義する「児童」は同じく18歳未満(既婚未婚、実在非実在を問わず)、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)が定義する「児童」は小学生。
問題1:リリスが12歳に擬態してAVに出演した場合、児ポ法の対象となるでしょうか?(答:実在非実在を問わずだから、12歳に擬態したらアウト。もっとも一般のAV女優なら、12歳に擬態しても痛々しいほど実年齢が見えてしまうからセーフ)
問題2:この10年後、エリス(実年齢13歳)がAVに出演した場合は?(答:戸籍年齢18歳で外見年齢もそのくらいならセーフ。但し現在と外見が変わらなければヤバイ)
・ 「どこから愛媛と佐賀が出てきたんだか」。どうやらドンブラー時空からの混線のようです。




