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行灯の昼  作者: 蒲公英
今、手に入った
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4

明日も会社って晩に水元が来たのは、はじめてだ。

一枚だけ置いてある着替えは、カジュアルとビジネスの中間くらいだから、大丈夫らしい。

「今日、生田さんと戦ったんだって?」

風呂上りに髪を拭いていたら、興味津々の顔がこちらを向いていた。

「戦ったって程じゃないよ」

「結構な剣幕だったって聞いたよ?野口のこと、庇ったんだって?」

別に野口さんを庇ったわけじゃないんだ。


「まさか長谷部君が、つわりがどうのって戦うとは思わなかったわ」

つわりがどうの……確かに、はじめの話はそれだったけど、内容まで伝わるものなのか。

会社の中の情報は、異様に早い。

「野口の仕事は信用できるもんねえ。でも、そこまで買ってるとは思わなか……」

「水元だったらと思っちゃったんだ」

野口さんのために生田さんに言い返したわけじゃない。

水元もあんな風に評価されるのかと思ったら、我慢がならなかった、それだけだ。


「私?」

聞き返されて、言葉に詰まった。

言葉が上手く扱えない俺は、その時の感情の説明ができない。

「もしも水元が同じ状態になったら、今までの努力とか実績を認めないような」

一回切って次の言葉を探すのを、水元は黙って待っていた。

「そんなに肩凝って、派遣社員の分まで頭下げて、それなのに妊娠したら使えねえ、なんて」

ああ、ダメだ。こんなんじゃ意味が通じない。


水元が下を向いたので、ひどく驚いた。

「どうした?何か悪かった?」

そう言ったら、今度は腕がふわりと首に巻きついた。

「ばか」

その言葉の響きは、今までに聞いたどの「ばか」より、優しい。

「長谷部君は、そうやって守ってくれるんだね。すごくまだるっこしくて、わかりにくい」

巻きついた腕に、力が入った。

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