013　ベトベトした液体ばかりなので全部売っちゃいます

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【Rare】 LR　【Name】 シャーリーレイド・オルタナティヴ（グラムハート）　【AB】　闇　【SL】 5/100

【AT】 全技能型（オールラウンダー）　【CH】 深淵にて覗き見る（ドラゴンスレイブ・）黒き龍（オルタナティヴ）

【ADT】 二刀魔神剣（ハーデスキラー）　【DDT】 暗黒魔装（ダークローブ）

【HP】 104/99999　【SP】 41/9999　【MP】 26/9999

【ATK】 36/9999　【DEF】 25/9999　【MAT】 19/9999　【MDE】 22/9999

【DEX】 10/999　【AGI】 11/999　【HIT】 10/999　【LUC】 9/999

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「ふいぃ……。ようやく熟練度が5かぁ」

　スライム狩りを始めてから早数時間。

　砂時計の砂も残り少なくなってきたので、そろそろタイムアップの時間です。

　三十路前の不摂生な生活が祟ったのか、だいぶバテてきた私はそのまま草原で寝ころびます。

『新婚二日目。私達の愛は順調に育まれておりますわ。この調子でいけばあと二日もすれば熟練度は10に到達するでしょう』

　脳内に響くシャーリーさんの心地良い声に包まれながら、私は目を閉じて草原の新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込みます。

　これだけオルビススライムを狩りまくったのに、コインが一枚も手に入らなかったのは悔やまれるけど、考えてみたら使い道が全くないからいらないよね、あれ。

「ええと……スライムの汚い液、じゃないや『ベトベトした液体』？　が、100個くらい集まったけど、これって売ったらいくらくらいになるの？」

　私は寝転がりながら行使者（アーマー）情報を空間に表示し、これまでの戦果を確認し、シャーリーさんに尋ねます。

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【討伐モンスター履歴/獲得アイテム数】

・オルビススライム（黄）　討伐数　40　ベトベトした液体　21　オルビススライムコイン　0

・オルビススライム（赤）　討伐数　35　ベトベトした液体　18　オルビススライムコイン　0

・オルビススライム（緑）　討伐数　23　ベトベトした液体　12　オルビススライムコイン　0

・オルビススライム（黒）　討伐数　36　ベトベトした液体　19　オルビススライムコイン　0

・オルビススライム（青）　討伐数　61　ベトベトした液体　28　オルビススライムコイン　0

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『オルビススライムの素材は最安値で取引されておりますから……。一つにつき1HDですね』

「うげぇ……。じゃあ100HDにしかならないのか……。やっぱちゃんと職業紹介所（ギルドマスター）でクエストを受注しないと駄目かぁ。自由探索（フリークエスト）で稼ぐのはほぼ無理だねこりゃ」

『ええ、そうなりますわね。中にはノーマルドロップアイテムでも高値で取引されているものもありますが、まだ私達が手が出せるレベルではありませんからね』

「……てことは、やっぱゲヘレス伯爵のところに行かなきゃ駄目か……。気が乗らない……というか正直逃げ出したい気分だけど、仕方ない……」

　そう言い深く溜息を吐いた私は身を起こします。

　ここで逃げたら女が廃る。

　齢三十手前、ユウリ・グラムハート。

　ここはいっちょう気合を入れて一世一代の罰ゲーム（コスプレ）を受けてやろうじゃないの！

『その調子です、ユウリ。では、村に到着するまでが自由探索（フリークエスト）ですから、気を引き締めて参りましょうか』

　――シャーリーさんの言葉通り、私はしっかりと周囲を警戒して村まで戻りました。

◇

「ああ、お帰り。時間通りだね」

　村に到着し、再び職業紹介所（ギルドマスター）の門を潜るとリーザさんが笑顔で出迎えてくれました。

　あ、ちなみにクエストを終了して村に戻ったら合体（メルト）は自動的に解かれる仕組みみたいです。

　まあ色々と初めてのことばかりだから慣れるまでが大変なんだけど、これも勉強と思うことにしましょう。

「馬車の準備は出来てるよ。それとこれがコンテストの参加証だ。まあ気が乗らないだろうが、こっちも仕事を紹介する手前しっかりとやってもらわないと困るからねぇ。気張って行きな！」

――バチン！

「あいた！？」

　リーザさんに思いっきり尻を叩かれた私はその場で飛び跳ねてしまいました。

　ていうかすんごい痛いんですけど！　力加減とか知らないんかなこの人は……！！

「すいません、ユウリ……。こういう人なので……」

「だ、ダイジョウブ……。ちょっとお尻が割れたくらいだから……」

「あっはっは！　まあシャーリーが一緒なら心配はいらないだろうね。向こうに到着したらまずゲヘレス伯爵の屋敷に向かい、この参加証を見せるんだよ。あとは伯爵の指示に従うだけ。簡単だろう？」

　そう言ったリーザさんは再び右手を上げたので、私は慌ててシャーリーさんの影に隠れました。

　もう早く出発しよう……。でないと私のお尻が破裂してしまう……。

　そそくさと職業紹介所（ギルドマスター）を後にした私達は、先ほど戻ってきた大門とは反対の方角に歩き始めます。

　ラロッカ村には二つの出入り口があって、目の前の大門は南門にあたります。

　ここを出るとレべリア共和国に渡るための港町まで行けるんだけど、今回の目的とは逆方向になりますね。

　私達が向かう先は隣町のハインドラル。結婚相談所の先にある北門まで戻って、そこに用意してもらった馬車に乗って北西へと向かう感じです。

「北門に向かう途中にある日用雑貨店（コンビニエンスギルド）でオルビススライムの素材を売ってしまいましょう。大したお金にはなりませんが、素材を売っておくことで武具工房店（アーマーウェポンギルド）や洋裁装飾店（アクセサリーギルド）、加工食肉店（ジャンクフードギルド）などの商品ラインナップが増えていきます。モンスター素材の流通が潤うということは、国内における安定した物流に繋がるということですね」

「へー、じゃあ皇国のためにもなるってことなんだね。まあ持っててもベトベトしてるだけだし、売った方が気持ち的にもいいから、ささっと売っちゃいましょうか」

「はい、そうしましょう」

　――その後、私達は雑貨屋で要らない素材を売り、いざ馬車に乗ってラロッカ村を出発したのでした。