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幻想のグリモアール  作者: ふたばみつき
第6話 魔術学園~witchcraft academy~
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第六十八頁 アイラVS魔力防壁

 剣が凄まじい勢いで飛んで行く。

 オーク先生を目掛けて。


「なっ!!」


 オーク先生が驚愕の表情を浮かべると僅かに後方に後ずさった。


 しかし、その程度の移動でどうにかなる物ではなく。凄まじい勢いで飛んで行く剣はあっという間に彼の“魔力防壁”の領域に差し掛かった。

 そして、剣は何事もなかったかの様に彼の“魔力防壁”を越えて行った。


 よし、やっぱり。あの防壁は魔力で出来た物ははね除けるけど、実体が有る物には作用しないらしい。

 となると、後は慣性の法則に乗っ取ってそのまますっ飛んで行くハズだ……


 見ると、やはり呆気なく防壁を越えみせた。

 これで試験は合格だろう。 


 しかし、次の瞬間、俺はあることに気が付いた。


 あれ? これって不味くね。

 このままだと、オーク先生死んじゃうかも……


 いや、そんなはずないよね。

 先生だもん、これくらいの事態は対処出来るでしょう……


 と、思っていたのも束の間。彼の表情を見て血の気が引いてしまった。


 完全に動転している。その瞬間、彼の張った防壁も雲散するようにして消滅してしまった。不味い、自分の魔力のコントロールが出来ない程に動転してしまっている。


 これでは対処も糞もない。

 不味い、先生を殺っちまった!!


 その瞬間、目の前が真っ白になった。


 いや、これは比喩表現ではなく、実際に目の前が白銀の氷結世界になっていたのだ。


 演習場の床一面に氷が張っており、天井に向かって伸びる大きな氷柱が何本もはえている。

 そして、一際大きい氷柱。それが今しがたまでオーク先生に向かって飛んでいっていた剣を飲み込む形ではえていた。


 そのお陰でオーク先生は今もご存命であった。


 どうやら、剣が刺さる前に氷柱が剣を止めてくれたようだ……

 よかったぁ、人殺しにならなくて…


「見事、合格です」


 その声がした方向を見るとグレイス先生がいた。どうや、彼がこの氷結世界を造り出したらしい。よく見てみると、彼を中心として氷結世界が広がっている。

 

 恐らく、これが彼の力なのだろう。


「……す、すごい」


 思わず声を漏らしてしまう。

 なんて凄まじい魔力。そして、それを操る技術。それに、なんと言っても。なんの前触れもなく、これ程の規模のことをやってのける神業……


 少し魔術が出来るようになった程度の俺でもわかる。

 この男、かなりデキるぞ……


「く、くそ!! 認めんぞ!! こやつは剣を使ったではないか!! 我々は魔術師なのだぞ!! こんな野蛮な者を学園に招き入れるなぞ、認めてなるものかッ!!」


 見ると、そこには無様に尻餅を着いたオーク先生がいた。


 どうや、俺の合格判定が気に入らないらしい。顔を真っ赤にし俺とグレイス先生を交互に睨み付けている。尻餅を着いてはいるが、その剣幕は今にもこちらに向かって飛び掛かってきそうな剣幕だ……


 その剣幕に押されて、思わず声が漏れてしまう。


「えっと…… その…… も、申し訳ありません……」


 ま、まあ、野蛮なのは認めます……

 それに、後先考えてなかったのも悪いし……

 結構な割合で俺に責任があるかもです……


 俺がどうしようかとあたふたしていると、グレイス先生が俺を庇う様に間に割って入って来てくれた。


「学園の教授である貴方がそれでいいのですか? 今のは間違いなく、魔術の応用のひとつ。それに第三者の介入が必要な程に防壁を乱されておきながら、彼女の魔術師としての才覚を認めないのですか?」

「なっ!! グレイスッ!! 貴様、たかが講師が口答えするのかッ!!」


 見ると、オーク先生が更に顔を真っ赤にしグレイス先生を指差している。


 うぅ、ど、どうしよう……

 俺のせいで、何やら面倒なことになってしまった……


「口答えも何も、結果は明白。火を見るより明らかです。私はそれに従った判断をしたまでです」

「グレイスッ!! 貴様には学園の規範と言うものがわからんのかッ!!」


 物凄い剣幕で捲し立てるオーク先生に対し、グレイス先生は眉をひとつも動かすことなく、冷静に対処している。見ると、グレイス先生は冷酷と言ってもいい程の冷たい視線をオーク先生に向けている。


 怖い、二人とも怖いよぉ……

 どうしよう、泣きそう……

 それに、テンパり過ぎて頭もくらくらしてきた……

 呼吸もしずらい……


 そんな俺を他所に二人は激しい舌戦を繰り広げている。


「少なくとも、オークレイ教授。貴方に最終的な合否を決定する権利はありません。最終的な判断は学長に判断して貰います」

「くッ…… グレイス…… 貴様、覚えておけ……」


 彼のその言葉を聞くとグレイス先生は一瞥すると、演習場から立ち去ってしまった。


 そして、グレイス先生はと言うと……

 こちらに向き直ると、先程までの冷酷な表情とは裏腹にこちらに向かって優しく微笑みかけてくれた。


 その微笑みを見て、思わず緊張の糸が切れる。


 それと同時に視界が真っ白になった。

 これは実際に白くなった訳でなく。比喩表現的な意味で視界が真っ白になった……


 うん、なんとなくわかる。

 魔力うんぬん、とかではなく。これは普通に気絶した……

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