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幻想のグリモアール  作者: ふたばみつき
第2話 出会い~encounter~
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第二十四頁 ギルド『草原の狩人』

 それは、この街で一番大きな建物だった。大きく、分厚く、重く、そして鉄塊だった。

 

 嘘だ、普通の大きな建物だった。


「これがギルド!」

「ああ、ここがギルド『草原の狩人』だ……」


 ハーフティンバー様式と言うのだろうか。骨組みとなっている木々が表に出ており、それが壁の模様の様に整えられたファンタジーの世界にピッタリの造りをしている。

 それに、建物自体も大きく、二階建てになっているのか、上部にはテラス席の様な物も見える。そのテラスも木材で出来ており、素敵な雰囲気を醸し出している。


 のではないか、と思わされる。

 俺は、そこら辺のセンスが皆無だから、わからん。


「全く。それにしても、これでやっと休めるんですね……」


 正直なことを言うと、細かい話はどうでもいい。


 取り敢えず、休めるのならどこでもいい気分なんだ。

 まったく、本当に今日は疲れた。今までは精神的にアホみたいに疲れる日々が続いたが。今日はシンプルに肉体が疲れた。もう寝て休みたい。


 俺が大きな溜め息を吐くと、ザックさんが満面の笑みを浮かべながら口を開いた。


「さあ、アイラ! 休むと言っても、取り敢えずはギルドの一室を借りる訳だ! 馬鹿なお前さんでもギルドに加入する必要があるってのは何となくわかるよなぁ?」


 んあ? まあ、ギルドの設備を使う訳だからね。余所者には使わせないよね。となると、普通はギルドに加入する必要がある、と言う道理は納得できる、気もする。


 俺は納得したと、二人に向かって大きく頷いてみせる。


「ああ、こんなに物分かりが良いって事は、アイラは馬鹿じゃなかったみたいだな……」

「な、なんなんですか? ザックさん……」


 なんだか、ヤケにザックさんの口調や仕草が芝居がかっている。まるで先程の神父さんみたいだ。それに今のザックさんの顔はなにやら、悪いことを考えている顔だ。


 ただ、俺の勘だが。凄い姑息でしょうもない事を考えてそうな雰囲気がする。多分、どうでもいい事だと思う。


 なんだか、放っておいても大丈夫そうな気がする!


「さあ、アイラ! 早く、手続きを済ましちまおうぜ!! オラ、早く早く!!」


 そう言うと、ザックさんは俺の背中をバシバシと叩き、ギルドの方へと誘導した。


 まあ、大したことも無さそうだし、抵抗する理由もないので、取り敢えずは大人しく従って見ることにする。なんとなしにロランさんの方を見ると、彼は苦笑いの様な表情をこちらに向けていた。


 う~ん、よくわかんないけど。どうでもいいや。

 兎に角、俺は早く休みたいんじゃい。


「さあ、ようこそ。『草原の狩人』へ」


 相変わらず芝居がかった口調のザックさんが扉を開くと、俺は引っ張り込まれる様にしてギルドの中へと足を踏み入れた。


「ほぇ」


 見た感じとして、大きな大衆酒場と言った感じがする。


 木材の机と椅子が大量に並べられており、それを囲うように冒険者と思われる汗臭そうな男達が飯を食べたり酒を飲んだりと楽しそうにしている。


 ちらほらと、女性の姿も見えるが男性と比べると圧倒的に数は少ない。

 まあ、想像していたギルドと寸分違わずと言った感じだ……


「さあ、アイラ。こっちだよ。足元気を付けてね。たまに酔い潰れた奴が転がってたりするからね」


 この言葉を吐いたのはザックさんである。なんだか、芝居がかった口調がどんどん酷くなって来ている。


 なんなんだ、この人は……

 ロランさんを見ると、今度は明らかに呆れた様な表情を浮かべている。


「おい、そこの可愛いおべべを着たお嬢ちゃん!! 金やるから、パンツ見せくれよ!!」

 

 その時、不意にトンでもない言葉がどこかから飛んで来た。


 マジかよ、ここはそんなハレンチサービスもあるのかよ。可愛い受付嬢のパンチラサービスか? 

 なんてハレンチでけしからん事を、これがギルドと言うのか。まったく、けしからん、けしからんぞッ!! 

 一体、何処でそんなハレンチな事が行われているんだ!! 俺にも是非拝ませてはくれないかい!?


「ほら、可愛いお嬢ちゃん。こっちに来て一緒に飲もうや!」


 どこや、どこでパンチラ受付嬢が見れるんだ。可愛いお嬢ちゃんはどこだ!! クソ、ここからじゃ見えないのか!?


「お嬢ちゃん、こっち向いてくれよ!」


 だから、どこだよ、お嬢ちゃんて! パンツって何処さッ!! 俺にも見せておくれよ!!

 俺はパンツを求めてキョロキョロと辺りを見渡していると、不意に歓声の様な物が上がった。


「おお!! こりゃ、偉いべっぴんだ!」

「ザック。こんな可愛いお嬢ちゃん、どっから拐って来た!?」


 ん? もしかして可愛いお嬢ちゃんて俺の事ですか?


 見ると、ギルドにいる人達が皆して俺のことを見ていた。


 あ…… 俺だったんだ、可愛いお嬢ちゃん……

 そうだよね。そう言えば、今の俺はかなりの可愛いお嬢ちゃんだよね… 


 なんだか、ちょっとガックリ。

 それと同時にちょっぴり恥ずかしい。


 そう言うのいいからさ、早く休ませておくれよ。

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