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18、エルフの剣士

お久しぶりです。

あれから3か月が経ち、季節は冬となりました。


此方はあまり雪が降らないようですが一度20㎝ほど積もった時があり、マーチ君は炬燵(こたつ)(温める魔道具があったのでそれを使って作りました【暖房】の魔法があるのでそう寒くはないんですが…気分で)に潜り込み、キョロちゃんは大喜びで外を駆け回ってました。


マリキス商会の運営は順調です。

筆頭取締役にギルドを辞めたマロウさんが就任しました。

私は特別取締役ということに。

最初は私が代表とか言われたんですが。

マロウさん曰く『何を仕出かすか判らない危険極まりない爆弾娘に任せたら纏まるものも纏まらない。最悪、爆散するのがオチだ』そうです。

酷くない?

でも有能なマロウさんのおかげで運営が上手く行っているのは確かなので感謝してます。


まずマリキス商会がしたこと。

それは金利なしの貸付制度。

現在商売をしている人、またはこれから商売を始めたい人はそれを元手に新たな事業に挑戦するといい。

けれど貸し出す以上、その使い道は精査させてもらいます。

明らかに利が見込めない計画や無謀な策には1エルも貸しませんが、見通しが明るい事業には惜しみなく融資します。

そこの見極めは商業ギルドで百戦錬磨のマロウさんがしっかりやってくれてます。


私は(もっぱ)らサポート要員として、職人さんや店主さん達の相談に乗ったりアドバイスをしてます。


ロアさんを始めとした染物師さん達にろうけつ染めと絞り染めの方法をレクチャーし、後は皆さんの創意工夫をお願いしますと投げたら。

なんとガリ版印刷を参考にして型紙を使って細かな柄を染める方法を開発。

(江戸小紋などで使われる技法ですね)

おかげで単色染オンリーだった染色業界は一気にバラエティ豊かなものへと激変しました。


その縁で知り合った服飾業界の人達に自作の服を見せましたら思いきり食いつかれ、挙句に下着も見せろと迫られて身包み剥がれそうになったのは良い思い出です。


ホルンさん達には女性用にミュールとパンプス、ハイヒール、ニーハイブーツ。

男女兼用にスリッポン、ローファーにデッキシューズ、スニーカーなどを絵にして見せたら狂喜されまして、靴飾りと共に大々的に売り出すと息巻いてます。


ソフィアさん達にはバレッタ、バンスクリップ、コーム、Uピンなどを教え、各店が競うように様々なデザインを生み出しています。


月一でファッションショーを開き、皆さんの作品をお披露目しているのでそれが売り上げに貢献し、何より励みになっているようです。


ショーを応援しようと薬師ギルドでシャンプー、化粧水、乳液、口紅の作り方を特許登録したら、たちまちコスメブームが巻き起こりました。

美を追求する女性の欲望の凄さは此処でも健在でした。


余談ながら、化粧水は押し付けるようにして肌に含ませて下さいね。

擦り付けるとせっかくの成分が浸透しづらい上に、手で拭ってしまうことになるので効果が半減してしまいます。


そして食に関してですが…冒険者の町だったはずのトスカが、いつの間にか『美食の町』へと変貌してました。


私はただ冬場は寒くて客足が落ちるという話を聞いて、だったら屋台のコンテストはどうかとフードフェスの推奨をしただけです。

まあ、少しばかり地球産の料理(からあげ、お好み焼き、餃子、とんかつ、ラーメン、天ぷらうどん&蕎麦or天丼)のレシピを公開しましたが。

各店でいろいろとアレンジを加えてさらに美味しくしたおかげで近隣だけでなく、はるばる王都からもお客様が大挙して押し寄せたのは私の所為ではない…はず。


出来上がった商品は商会に優先的に卸してもらい(もちろんちゃんと適正価格で買い付けてますよ)それを王都や他国に売り、その利益をマロウさんを始めとするスタッフさんの労賃に充ててます。

私ですか?製薬で稼げているからいらないと言ったら、他が貰い辛いだろうがとマロウさんにメッチャ叱られ、皆さんと同じくらいはいただいてます。




『始めましょうかぃ、姐さん』

「はーい、よろしくお願いします」

 最近、マーチ君に頼んで格闘を教えてもらってます。


実は2度目に町に行った時、寝てたマーチ君を起こして市場や公園広場で遊んでから不足してた食材と作り置き料理用の木皿を買い、門を出てしばらくしたら人相の悪いオッサン&お兄さん達に囲まれました。


そしたらマーチ君が『てやんでぃべらぼうめ。姐さんには指一本触れさせねぇぜっ』

と威勢よく啖呵(たんか)を切って一団に突っ込み。

まず手前の男の腹に一発、衝撃で後に飛ばされたところに回し蹴り、浮いた身体に軽やかに飛び上がっての踵落としと流れるような素晴らしい連撃を披露。

他の男達もすぐに同じような目に遭い、あっという間に全員がノックダウン。


【スリープ保存】で眠らせれば簡単に片付いたけど、それは言わぬが花。

凄い凄いと手放しで誉め千切ったら、不思議な踊りを踊って喜んでくれました。

うん、可愛いは正義。


戦うマーチ君は文句なしに格好良かったし、商会の皆さんのおかげで自作しなくても良い物が増えて時間も出来ましたし。

何よりせっかくステータスに格闘があるのだしと練習を始めた次第です。

フードフェス前の試食会で食べ過ぎて体重が恐ろしいことになったからでは決してない。

ないったらない。


『違うぜ、姐さん。踏み込みはこうっ』

「こうだね」

 基本の動きを繰り返し、悪いところ指摘してもらいます。

これを続けることで無駄がなくなり、自然と最適な動きが出来るようになるそうです。


『あるじー、おきゃくさんー』

 ひと汗かいたところで散歩に出てたキョロちゃんが人影を伴って帰ってきました。

「お客さん?」

 死の森と呼ばれるデンジャラスゾーンに人が?

驚いて見返した相手は長身のエルフ、クールビューティーな美女さんでした。

肩のあたりで切り揃えられた金の髪に深緑の瞳、漆黒の甲冑を身に着け、腰には業物(わざもの)と判る長剣を(たずさ)えてます。

装備だけでなく(たたず)む雰囲気でも凄腕なのが伝わってきます。

でも悪い人ではないようです。

傍にいるキョロちゃんやマーチ君がまったく警戒してません。

2人とも私に対しての悪意には妙に敏感で、おかげで何度も助けられましたから。


「そなたは此処の住人か?ハルキスが死んだ後は無人と聞いたが」

 どうやら師匠の知り合いのようです。

「はい、今は私が受け継いでます。事後承諾ですけど」

「ふむ」

 何やら考え込んでからエルフさんはハルキスハウスを眺め、次いで私を見ます。

「入口の仕掛けを解いたのなら、そなたが主となってもおかしくはないな」

「認めていただけて嬉しいです。申し遅れました。私はトワリア、トアとお呼び下さい」

「丁重な報答、痛み入る。私はウェルティアナ。ウェルで良い」

 自己紹介が終わったところで、立ち話もなんですので家に招くことにします。

師匠のこともいろいろ聞きたいですしね。


けどその前に

「失礼して洗濯をさせてもらいますね。汗だくなので」

「洗濯?」 

 不思議そうなウェルさんの前で洗濯フルコース発動。

すぐにキョロちゃんとマーチ君もやって来て3人で身も心もリフレッシュ。

「何と面妖な。初めて見る魔法だな」

 でしょうね。なんせ神様の…以下略。


「良かったら体験してみます?」

「そうだな。頼もうか」

 と言う訳でウェルさんにも洗濯フルコース発動。

「何と心地良い。さっぱりとして身が引き締まるな」

 どうやら喜んでもらえたようです。



「女手が入るとこのように変わるのだな。前は随分と殺風景だったが」

 地下部屋に入るなり、ウェルさんは感心した様子で周囲を見回します。

「鎧を脱いで楽にして下さい。今お茶を淹れますね」

 物珍しげに炬燵を眺めるウェルさんに使い方をレクチャーしてから、買った茶葉にハーブをブレンドしたオリジナルティーと自作のパウンドケーキに生クリームを添えて出します。


「すまぬな。手数をかける」

「いえ、お口に合うと良いんですが」

 鎧を脱いだ下はカチッとした白シャツと濃紺のベストと同色のズボンでした。

なんだかもったいない、美人なので着飾らせたいです。


「こ、これは」

 ケーキを口にしたとたん、その深緑の瞳が真ん丸に見開かれます。

「このように美味なるものを食したことがない」

 言うなり物凄い勢いでケーキを完食、お皿に残った生クリームまで指で掬って食べ切りました。

でも無くなった瞬間、本当に顔が (´・ω・`) こうなったので、慌ててまだたくさんありますからと言ったら。

「そうなのかっ!」

 ぱぁぁっと花が咲いたような笑顔を見せてくれました。

冷徹な見掛けによらず可愛い人のようです。






評価をしていただきありがとうございます。

少しでも楽しんでいただけるよう頑張ります。


次回は『引き籠もりな師匠』を投稿予定です。

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