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回避特化のメイン盾  作者: Bさん
6章 防衛戦
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28話

 何か後頭部に柔らかいものを感じる。何だろうか。俺は目を開けるとそこにはサーシャの顔があった。どうやら俺はサーシャに膝枕をされているようだ。胸が小さいから顔までちゃんと見える。本人の前では言えないが。


「戦況は?」


 俺は起き上がらずこの太ももの感触を楽しむ。起き上がりたくないでござる。


「今、攻略組がドラゴンと交戦中だよ。もう大分減らしたみたいだけど、結構余裕があるみたい。多分油断が無ければ倒せるんじゃないかな」


 グレッグが答える。周囲を見渡すと仲間達が全員いた。そりゃ俺が一番最後なのだから全員居るわな。


「そうか。俺はもうしばらくこうしているから、後は頼む」


 それを聞くとグレッグは呆れたような顔をして離れていく。邪魔をしたくなかったのだろう。


「無事で良かった」


 俺はサーシャを見ながら言う。泣きそうだ。


「サーシャが倒れている姿を見て凄く怖くなった」


 俺はそう言って、サーシャの腹の辺りに顔を埋める。そして息を大きく吸う。変態だと言われても一向に構わん。


「私の気持ち解かった?いつもこんな心配しているんだよ」


 サーシャがそう言ってくる。確かに俺は何度も倒された。その間サーシャはこんなに心配していたのだろうか。


「すまん……」


 俺はそう言うと上半身を起こし、サーシャを抱きしめる。途端に周囲から舌打ちが飛ぶ。そういえば人が一杯居る広場だった。


*防衛戦が終了しました。勝利は防衛側になります。おめでとうございました。尚、参加者全員に更なるランクアップがなされます。未だ初期職の方は次のランクアップと同時に3つ目の職業まで飛ばされます*


 どうやら報酬はランクアップらしい。これで参加者と参加せずに逃げた人と大きな差が付いたのかも知れない。


「さて、帰ろうか」


 俺は立ち上がりサーシャに手を伸ばす。


「うん」


 サーシャは俺の手を取り歩き出す。仲間達と合流し、我が家への帰還だ。




「帰ってイチャイチャする予定だったのにこれかよ!!」


 俺はまだ戦場にいる。そう、調理場という戦場だ。


「おい、フィルム!!次はこれを頼む!!」


 そう言われて渡されたのはじゃがいもだ。早い話が皮むき。終わらない皮むき。正直泣きたい。


 あの後、意気揚々とゲートをくぐった先にいたのは、攻略組のメンツだった。かなり疲れたようで、皆地面に座っていた。疲労はなくとも精神的な疲労はある。あのドラゴンの攻撃を受けるだけでも相当辛い上に回避不可の全体ブレスだ。気が滅入る。


 俺たちは攻略組の本部に行って労いの言葉を1つでもかけようとした。これが失敗だった。その途中で料理を取った同士と遭遇した。その同士は俺を見た途端にニヤァと顔を歪めた。とても逃げたかった。だが逃げ切れなかった。俺はそのまま調理場へと連行され現在に至る。


「芋の皮剥きくらい誰にでも出来るんじゃないですかねぇ?」


「いや、スキル持ちとないのでは全然違う。だから諦めろ」


 俺のささやかな抵抗はあっさりと吹き飛ばされた。黙々と皮を剥く。心配した仲間達が個人チャットで現状を伝えてくれる。グレッグとエイミーは事後処理の為に建物の被害状況を調べているらしい。サーシャは殆どのメンバーがポーションを使い切ってしまったからその調合をしている。アドンとアシュリーはその素材探しだ。皆結局のんびり出来なかったらしい。


「やっと終わった……」


 俺は芋の皮剥きを終えるとそこから逃げようとする。しかし首を捕まれた。回避ステが効果ない……だと……。


「よし、次はここに書いてあるリストの物を作っていけ。時間はないから急いでな」


 そういうと紙に書かれたリストが押し付けられる。どうみても数時間以上掛かりそうだ。サーシャも調合中だから声を掛けられない。一瞬のミスで品質が変わるから邪魔をする事になる。


 そして俺は黙々と料理を作っていく。どうしてこんな時に限ってHQ品が一杯出来るんだよ、……畜生……。





「俺たちの勝利を祝して!乾杯!!」


 ローブ姿の男、クラークが音頭を取る。皆それに合わせ杯を掲げる。今は広場の祝賀会場に居る。被害状況は南門の一部家屋と門が破壊された程度らしい。警備団の人たちが少し面倒になる程度で済んだとか。被害が多いと店を使えなくなる可能性がある事を考えればそれで済んで良かったと思う。


「やっと開放された……」


 あの料理人たちは未だに飲み物の配布などをしている。奴らは化け物か。俺はサーシャを探して歩く。パーティの位置確認があるから迷う事は無い。サーシャの姿を見つけると俺は走り、人を全力の回避で避けて通る。


「サーシャ、調合は大丈夫か?」


 今までの焦りなど無かった様に平然と話し掛ける。男とは格好を付けたがる生物である。


「うん、無事終わったよ」


 そう言うと俺に抱きついてくる。どうやらサーシャも寂しかったのかも知れない。もう1日でも離れているのが辛くなっている。バカップルと呼んで貰っても構わない。俺はサーシャの頭を撫で、ついでに尻尾にも触れようとする。


「それは駄目」


 サーシャに拒否されて手を叩かれる。残念だ。


「折角の料理だけど、帰ろう?」


 サーシャが料理に飛びつかないとは珍しい。どうやらそれよりも俺との時間を優先したいようだ。グレッグに先に帰ることを個人チャットで告げると、2人で手を繋ぎゆっくりと自宅へと帰った。その後何があったかは言うまでも無い。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆


防衛戦 part20


555 名無しの神剣士さん

防衛戦成功お疲れさん


556 名無しの護衛士さん

お疲れさん

双剣士、お前の職業が変な事になっているぞ


557 名無しの神剣士さん

うおってお前もか

ああ、そういえばランクアップがあったな


558 名無しの剣豪さん

そういえば忘れてたな

祝賀会とか被害状況調べるのが大変だったし


559 名無しの司教さん

これで二次職の人が殆ど居なくなるんですね

攻略が楽になると良いんですが・・・


560 名無しの神剣士さん

無理だろ

どうせこの先は三次前提だろうしな


561 名無しの偉大な魔術師さん

ああ、まずは職業の戦い方に慣れないといけないな

明日から狩りに行って調整するぞ


562 名無しの神騎士さん

おいおい、数日休みくらい与えないのか?

いくらなんでも耐えられんぞ


563 名無しの偉大な魔術師さん

む、そうか

なら明日から1週間の休暇としよう

好きな様に過ごしてくれ


564 名無しの神剣士さん

ひゃっほい

といってもどこに行くかな

海が安全になったんだっけ?


565 名無しの護衛士さん

海底神殿をクリアしたら安全になったな

今なら海水浴もできるんじゃないか?


566 名無しの破壊者さん

なら海にいくかー


567 名無しの神騎士さん

それよりお前の職は随分と物騒な名前だな


568 名無しの破壊者さん

うお、マジか

スキルもやべぇ・・・攻撃ばっか


569 名無しの神剣士さん

それは使い難そうだな

ある程度の数あれば大体どうにでもなるしなぁ・・・


570 名無しの護衛士さん

確かにな

明日海に行くなら俺も行こう


571 名無しの神剣士さん

そうだなー

じゃ、攻略組の中で募集とって皆でいくか


572 名無しの神騎士さん

そして男しか集まらないオチになったりしてな


573 名無しの神剣士さん

おい、止めてくれ

マジでそうなりそうなんだから


574 名無しの神騎士さん

そういえば攻略組って男ばかりだよな

正直すまんかった・・・


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