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転生悪役令嬢は闇の秘密結社を作る  作者: Crosis


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元帝国宮廷魔術師

「逃げろぉぉぉおおおっ!!」


男性がそう叫ぶと、男性が持っていた器が爆破を起こして周囲を爆風と熱風の暴力で破壊尽くしていく。


しかしその破壊の暴力も数秒で治るのだが、部屋の光景は一変していた。


それと同時に複数箇所から仲間であろう呻き声が聴こえて来る。


「な、何という事だ。………ここはもうダメだっ!!恐らくダニエルがこの場所に来た時点でここはバレてしまっているっ!!逃げるぞっ!!」


そう私は叫ぶと仲間の安否よりも先に今すぐここを離れるよう叫ぶ。


元帝国宮廷魔術師である仲間達全員がいるにも関わらず、私の頭の中はガンガンとけたたましく警報を鳴り響かせて来る。


ダニエルが命と引き換えに我々を死から助けてくれたのである。


もしあと一秒でも防御結界の使用が遅れてしまっていたらと思うと背筋が凍る。


そんなダニエルの死を無駄死にとしない、いや絶対にさせてなるものか。


「まさか、逃げるつもりではございませんよね?元帝国宮廷魔術師様達ともあろうお方が今現在四人も揃っていて、まさかねぇ」


それは他の仲間であるメンバーも同じであるらしくすぐ様この場所から逃げようとしたその時、部屋の出入り口からゴスロリ調のメイド服を来た少女が一人、我々を遮る様に立っているのが見えた。


その少女の姿は余りにも不気味すぎた。


一見してただの一般女性にしか見えない。


また魔力量の多い者が持つ様な周囲の魔力の乱れも感じられない。


普段であればこの程度の少女など警戒する必要などなく、ただ魔術で殺すかぶっ飛ばすまでである。


だと言うのに私の本能は未だにけたたましく逃げろと警報を鳴らし続けているのである。


経験から基づくこの女性のかけ離れた真逆の評価が実に気持ちの悪い感情となって私に襲いかかる。


こういう場合は、私はいつも本能に従って来た。


何故ならば私はまだ魔術を知り尽くしていないからである。


「どっからきたのか知らねーぇがよ、嬢ちゃん。その程度の、魔力による圧も感じ取れない様な小娘一人が俺ら元帝国宮廷魔術師様達をどうこう出来るとか、まさか思ってるんじゃぁないだろうなっ!?」

「辞めろっ!!ガランっ!!コイツは危険だっ!!」

「俺は昔からお前のそのリーダー気取りな態度が嫌いだったんだよっマグラス!何でこんな小娘一人にこの俺様が怯えなきゃならねぇーんだよっ。そんな事、この俺様がゆるさねぇんだよっごちゃごちゃ抜かしてんじゃねぇぞ臆病者っ!!まだあの過去引きずってんじゃねぇよっ!!」


しかし筋肉隆々とした身体を威嚇する様に、自身の強さを見せつける様にしながらガランが私の意見、ひいては私自身を真っ向から否定してくる。


「そうね、ガランのいう通りですね。例えマグラスの言う通りこの小娘が多少は出来るとしても、こんな小娘一人で私達全員を相手にしてどうこう出来るとは到底思えませんね」

「俺もー。ガラン、キャシーと同じ考えでーす」


そんなガランに触発されて残りのメンバーもこの、目の前の少女の違和感を無視して相対する事を告げる。


「お前達………私は逃げさせてもらう」

「おうおうっ、雑魚は尻尾巻いて逃げやがれっ!帰ってきた時はお前の席は無いものと思えよなぁっ!!」

「それは言い過ぎですよガラン。あんな者でも今まで私達と共に行動してきた元仲間ではございませんか。せめて補欠として入れさせてあげれば良いのではなくて?さっきの爆発で汚れてしまったこの現実を誰が責任取るのか考えていたのよねぇー」


ダメだ。


コイツらは自分の力を過信し過ぎており本来人間にも備わっている生き物としての危機察知能力が麻痺してしまっているのであろう。


付き合っていたら私まで巻き添えを喰い兼ねない。


こんな事で命を危険にさらすなど、馬鹿すぎる。


コイツらは我々と同じ元帝国宮廷魔術師の一人であるダニエルが先程どういう事になったのか早くも忘れてしまった様である。


強さと引き換えに失った物は余りにも大きすぎると言わざるを得ない。


だからこの者達は帝国宮廷魔術師の座をかけた戦いに、挑戦者として相対する者に足をすくわれて負けたのである。


にも関わらずあの時の敗戦を自分の糧にしようと考える者が一人も居ない事実を目の当たりにして私は深く溜め息を吐く。


しかしその現実を認めたくない、直視したくない、考えたくもないという彼らの気持ちも分からないでもないがそれではダメなのである。


その程度の者は裏の世界では生きていけない。


今まで通り何もかも力で解決してきたツケが今来たと言うのにこの者達は力で解決する方法しか知らないみたいである。


「………は?……窓が開かないだけでなくガラスが割れない……」


その摩訶不思議な現象をどう作り出したのかわからないのだが、この現象を作ったであろう者に私は心当たりがある。


その人物である少女に目線を向けると、あちらもそれに気付いたみたいで目線を合わせ、クスリと笑う姿が見えて来る。


それと同時に私は今まで感じたことの無い恐怖に襲われる。


この少女は我々を逃すつもりなど無い上に逃がさない自信があるのであろう。


だから一人で来たのである。

誤字脱字報告ありがとうございますっ!!

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