胸に深く突き刺さった
「痛いっ!痛いっ!頼むっ、もう辞めてくれっ!!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ!!なぁ、頼むよぉっ!頼むから辞めくれよっ!痛いんだよっ!死んじまうよぉっ!死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくないっ!」
「あーはいはい。俺を誰だと思っているんだよ。ちゃんと死んだ方がマシだと心から思えるくらいには生かしておいてやるよ」
痛い痛い痛い痛すぎるっ!こんな思いをするくらいならばあの時の逃げずに捕まっておけば良かったっ!ならばまだ殴る蹴るで終わっていたのではないか?腹を裂かれずに済んだのではないか?
痛みと共にそんなありもしない『もしも』を想像してしまう。
そもそも神によって選ばれた俺様はこの世界で一番偉いのではないのか?にも関わらず何故今この様に腹を裂かれて臓器を弄られているのか。
何故今こんな状況になっても神はこの俺様を、神の奇跡とやらで助けくれないのか。
「あー、臓器は至って普通なのな。つまらない男だ、全く。神の祝福を受けたなどと言われようとも結界魔術を扱えようとも腹を裂けば結局同じじゃないか。とんだ手間かけさせやがって。ショック死で死なない様に調整して状態異常の軽い麻痺をかけるの地味に大変だと言うのに」
そう言うと件の彼は俺をまるで不良品でも見るような目付きで見つめると、徐に俺の裂かれ風穴が空いている腹へと手を突っ込みとそのまま臓器を掴み取り体外へと腹わたをブチまける。
そして一拍おいて水を浸した雑巾が落ちる様な音が部屋の中で響き渡る。
それは俺がよく聞く音であったが、聞きたくない音でもあった。
「ぐふぅっ!?あぁぁああぁ……っ、俺の臓器っ!?戻してくれっ!返してくれっ!俺の臓器っ!!」
「臓器なんて脳味噌だけあれば十分だろ。俺は何百何千と人体実験して脳に決められた栄養を送れば生き長らえる事を知ってんだよ。無駄に私利私欲で快感やストレス発散に人間を殺して来たお前と一緒にしないでくれたまえ。ああ、君の場合魔術の研究もするから心臓と、栄養を加えた液体に空気を溶かすのが面倒だから肺の二つは残しといてやるよ」
そう言うと彼は俺の顔まで一気に自分の顔を近づけると囁くように喋り出す。
「それと、騒いだらこのお目々から脳まで突き刺して殺すって言ったよなぁ、俺。次騒いだらこの長いピックで目からぶっ刺して脳をかき混ぜるからな」
「うぅうぅ……す、すみませんすみませんすみませんすみません」
「まあ、良いだろう。今回だけは許してやるよ。なんてったってお前と違って優しいからな、俺は」
彼のその言葉は俺の胸に深く突き刺さった。
俺と違って?
そうだ。
俺は今まで冤罪であるにも関わらず拷問の末その罪を自分が犯人であると言った者に対して、目の前で妻と娘を犯した末更に拷問をかけてじっくりと殺す事が好きだった。
全てが嘘であったと、そして最後は罪人として人生が終わると知った時のあの様々な感情が混じった表情と絶叫が堪らなく好きだった。
あぁ、そうだ。
そうなのだ。
コイツは俺だ。
そして俺は助かるという希望は捨てた。
「しかしまぁ、王国の国王が真面目一辺倒に成り下がりやがった上に王国騎士団長が暗殺されたせいで取り締まりが強化され王国では活動し難くなるしよ。その点聖教国はお前含めて上の者達が王国以上に腐っていて過ごしやすい国にしてくれた点だけは褒めてやるよ………ん?何もう全てを諦めた様な顔してんだよ。つまんない奴だな、お前は。本来ならここで目の前で妻や娘でも犯してやるところなのだが、あいにくお前にそんな大切な存在など居ないしな。この時点で殺してやるところなのだが、良かったなぁ。お前は結界魔術が扱えて。お陰でもう少し生き長らえれる事が出来るぞ。ただし、人間としてとは言わないがな」
そう言うと彼は俺の目の前で何がそんなに嬉しいのか笑い叫ぶ。
いや、俺だって逆の立場であるならば笑い転げていたところであろう。
ただ、奴と俺が違うところは純粋なる力があるか無いかでしかない。
たったこれだけの違いで立場がここまで違う事に呪わずにはいられない。
結局コイツの言う通り権力とは外部の力であり俺そのものの力ではない事を、この時始めて俺は知った。
◆
「ではこれより林間学校の班決めをしたいと思います」
ノア様が教壇でそう言うと、教室前方左側端っこにある教師用の椅子に座り机に肘をつき顔を支え、顎髭をジョリジョリと摩りながら覇気のない声で「班決めだぞー、お前らぁー」とまるで野次の様に合いの手を入れてくる担任の姿が見える。
現王国騎士団長であるアレックスが来た時のあの担任は一体どこへ行ったのか。
この帝国マルギス学園なのだが一年で林間学校という一泊二日のイベント、二年で合宿という二泊三日のイベント、三年で修学旅行という一週間もの宿泊イベントがある。
その一泊二日という林間学校でもう既に仮病でも何でもして休みたいと思ってしまうのに修学旅行など、今からその事を想像しても胃に穴が開きそうである。
本来であればミシェル様とリリア様とで楽しい思い出を作れるとウキウキするイベントであるにも関わらずはっきり言って嫌な予感しかしないし、大抵の場合この様な予感は当たるものである。
誤字脱字報告ありがとうございますっ!!
カラオケで曲入れると曲のタイトルで周りがウケて、アニメ映像で「あぁー、これかぁ」ってなる現象をピングドラム象と名付けます^^
そして曲名見て魂のルフランを入れてくれる現象を我に帰れ現象と名付けます^^




