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転生悪役令嬢は闇の秘密結社を作る  作者: Crosis


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最後の思い出

何を言ってくるかと思えば言うに事欠得いてわたくしの背負っている物を理解もせず、理解しようともせず頼っても良いなどと目の前の男は真剣な表情で言ってくる為思わず反射的に断ってしまった。


言ってから事の重大さ、何も考えず反射的にわたくしの運命を握っているとも言えるメインキャラクターであるノア様に対して剣呑な態度で返事をしてしまった事を反省するのだが断った事に関しては悪いとも思っていない。


思うはずもない。


むしろ手が出なかっただけありがたく思って欲しいものだ。


なんならあの状況で手を出さなかったわたくしを褒めてあげたいくらいである。


そしてわたくしの感情は怒りと侮蔑、そして『お前が言うな』という思考で一杯になるのだが、いくら死亡フラグ製造会社筆頭エースであるノア様であろうとも現状何も知らない訳で、そんな人相手に怒っても仕方のない事であるしみっともないと自分を落ち着かせる。


「一体どうしたんだフラン。ここ最近のお前はなんか生き急いでいる感じがして、俺はお前の事が心配でたまらないんだよ。少しくらいお前の手助けをする事ですら俺は許されないと言うのか?」

「これはわたくしに売られた喧嘩であってその喧嘩をわたくしが買ったのですわ。他人の手助けなどわたくしのプライドが許しませんわ。それにノア様はこの国の第二王子であるお方。ノア様の身に何かあった時は勿論の事その行動、その発言それらすべてがあらゆる場所、あらゆる人々を巻き込んでしまいます。わたくしは関係ない人々をわたくしの単なる我儘で巻き込むことをわたくし自身が許しません。ノア様のお気持ちは嬉しいのですけれども今回はその気持ちだけお受けいたしますわ。わたくしの為に言って下さった言葉、とても嬉しかったですわ」


そう、結局のところこれはわたくしと神との喧嘩であり、神から売られた喧嘩をわたくしが買い取ったに過ぎないのである。


それこそ命が惜しければ三年逃げに逃げればいいのである。


その場合起こりうる死亡フラグがどのようにわたくしの身に降りかかるか見当もつかないという事もあるのだが、それでも真っ向から立ち向かいフラグを片っ端から折っていくよりかは安全であると言えよう。


結局のところわたくしがなんだかんだと言い訳をして逃げておらずこうして真っ向から立ち向かっているのは神に売られた喧嘩を買ったからに他ならないのである。


そんな自分勝手な事柄にただでさえ関係ないブラックローズの面々を巻き込んでしまっており、申し訳なく思っているのだ。


ブラックローズのメンバーを増やすのならばまだしも、そこから何故全く関係のない者たちを巻き込まなければならないのか。


この件に関してはノア様どうこう関係なく断るという選択肢一択である。


「そうか、そうか。それは残念だな。でも、フランがどうしても折れそうなとき、負けそうなときはいつでも俺を頼ってもらって構わない。それはフランを手伝うなどではなく、愚痴を聞く等でも構わない。とにかくフランが潰れてしまいそうな、折れてしまいそうなときは俺の事を頼っても良いと、俺がフランの心の拠り所なれば良いなと思っているという事を心の片隅にでも留めてもらえたら、今はそれで我慢しよう」


ノア様のその言葉に、わたくしの心の拠り所になりたいと言うその思いにわたくしは思わずうなずきそうになるもぐっと堪える。


弱っている時の甘い言葉は総じて罠であると、わたくしは思っている。


弱っているからこそ余裕が無く、思考もおぼつかず、目の前に差し出された甘い言葉に何も考えず身を任せたくなる。


これはある種の拷問により有力な情報を聞き出す為の常套手段である。


だからこそここでわたくしはノア様の甘い言葉に惑わされてはいけないのである。


以前のわたくしであればそれでも良いだろうし、この甘い言葉が罠であろうが真実であったのであろうがその責任を負うのはわたくし一人でよかった。


しかし今のわたくしには、自身の行動による結果は良くも悪くも秘密結社ブラックローズのメンバーでもある奴隷娘達にも降りかかるのである。


その事を考えれば今この時期にノア様からの甘い言葉はどう考えても罠の可能性が高い為、ノア様に助けてと叫び伝えてしまいたいというわたくしの中の弱い心を見て見ぬふりをして強引に封じ込める。


「分かりましたわ。ノア様の申し出、心の片隅にでも仕舞っておきましょう」

「あぁ、今はそれで良い。俺も今のフランを見るのは辛いが我慢しよう」

「しかしノア様、いつまで至近距離でわたくしを見つめ、そして頭を撫でておいでで御座いますの?こんな所を誰かに見られでもすれば一応王族であられますノア様、変な噂が瞬く間の広がってしまいますわ」

「知っている。むしろそれ込みでやってるフシはある。それに嫌ならば俺のこの手を振りほどき、ここから去れば良いだけであろう?」

「成る程、それもそうですわね。それでは御機嫌よう、ノア様」


そしてわたくしは今世の女性の感性によりもっと撫でて貰いたいという感情を無理矢理思考の外へと追いやると断腸の想いでノア様の掌を振りほどき去って行く。


もう訪れる事が無いであろうノア様による夢のようなひと時は今世のわたくしのノア様にときめいた最後の思い出として大切に、大切に胸の中へと仕舞うのと同時に、もうこの様な失態はしまいという決意の表れでもあった。

誤字脱字報告ありがとうございます!^^

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