お嬢様に恋心を抱いている
そんな事を思いながら例え噂が広まっていたとしても現段階では都市伝説レベルだしまぁいっかと、とりあえず一旦は棚に上げておく事にする。
そしてそれとは別に変わった事と言えば奴隷達の事である。
と言っても具体的には奴隷達の戦闘方法についてなのだが。
変えた部分というかルールを設けた訳なのだが、そのルールという物が戦闘時真空を使った移動方法を禁止したというものである。
しかしながら相手の力量に合わせて第一段階は横移動のみ解放、ついでに第二段階で上下空中移動解放とし発動条件はわたくしが持たせた結界魔術の術式を組み込んだ指輪が発動した場合は第一段階解放、指輪が破壊された場合は第二段階解放し退散という流れである。
第二段階後退散するのは命第一だからである。
そして何故この様な面倒くさい事をしたのかと言うと単純にカッコイイからである。
いつの時代も力の解放シーンはワクワクするし興奮する設定であるとわたくしは思っている。
因みに奴隷達にはいざという時真空移動が使えなくなった場合を想定して地に足を付けた状態での足捌きを覚えておくという事と、指輪に施した術式に解放する時にブラックローズ本部にその情報が伝達される術式を組み込んだ為応援部隊の速やかな派遣が可能となる為である。
というそれっぽい言い訳を並べながらそれっぽく説明した為奴隷達は案外すんなりとこの仕組みを受け入れてくれた。
因みにこれはまだ実験段階である為今後少しずつ改善していき一番カッコ良く魅せる事が出来るようにするつもりである。
その頃には奴隷達も今より更に大きな力を扱える様になっていると思う為力の解放シーンの格好良さも跳ね上がっているであろう。
その事を考えるだけでもう楽しくて仕方がない。
あとはそう、衣装もといブラックローズの制服ですわね。
いかせん秘密結社ブラックローズのメンバーはリカルドとジュレミア以外全員女性である為カッコ可愛い、かつ美しさも兼ね揃えたデザインも同時に考えていたりする。
もうこれら諸々が楽しい。
因みに奴隷達に男性がいない理由として単純にジュレミアが経営していた奴隷専門店が女性だけを扱う店であったというなんの面白みもない理由の為である。
みんないい娘達ばかりである為可愛いものである。
しかしながら何故かリカルドがわたくしに近付こうとすると奴隷娘達がバリケードを作り始め、リカルドとも情報伝達や共有をし難い為少しだけそのバリケードを緩めて頂ければ有り難いと思う。
まあリカルドには申し訳ないのだが奴隷娘達のそんな反応もまた可愛いので許しちゃうのだが。
「ねぇメイさん、何故最近奴隷娘達はリカルドがわたくしに近付くとバリケードを作り始めるか分かるかしら?」
しかし、それはそれこれはこれで気になるものは気になるという事で本日の側仕え当番であるメイに聞いてみる事にした。
因みに今現在は登校中の馬車の中であり、その馬車の中はわたくしとメイのみである。
「みんなフランお嬢様もといローズ様の事が大好きなので御座います」
「あら、それは嬉しい事を聞きましたわ。しかし、リカルドも同じ仲間でしてよ?」
「ええ、リカルドさんはブラックローズのメンバーとしても優秀ですし元貴族故のその有する情報も大変頼もしく思っております。しかしそれはそれこれはこれで御座います」
あら、実はハブられているのでは無いか?と思ったりもしたのだがなんだかんだでみんなから仲間だと思われている事に少しホッとするのもつかの間、メイは「しかしながら」と言葉を続け出す。
「リカルドさんは更に眉目秀麗な男性でありフランお嬢様は女性で御座います」
「えぇ、まぁそれは見ての通りリカルドは男性でわたくしは女性ですわね」
それの何がいけないのかいまいちピンと来ない為わたくしはメイの続きの言葉を待つ。
「万が一リカルドさんとフランお嬢様が男女の関係になってしまえば今現在みんなのフランお嬢様がリカルドに取られてしまうのではないかと危惧しているが故のバリケードでございます。それに、最近のリカルドさんはフランお嬢様の事をいやらしい目付きで見ておりますっ!下心が見え見えで御座いますっ!あわよくばフランお嬢様と、と思っているに違いありませんっ!てかそもそもリカルドはフランお嬢様に恋心を抱いている事などお見通しですっ!」
そしてメイはだんだんと発する声が大きくなっていくのだが、あのリカルドがわたくしに恋心を抱き、それにより下心を持っているという。
「あのリカルドがねぇ……無いわね。無い無い。そもそもリカルドの好みはわたくしと真逆の女性ですわ。わたくしの事を好きになるなどあり得ませんわ。考えすぎですわね」
その光景を少しだけ想像してみて、その余りにもあり得ない光景に否定しながらも思わず笑ってしまう。
事前世では恋愛相談のプロと言われていたわたくしである。
そのわたくしがいくら自身の事とはいえ恋愛事を間違える訳が無いのだ。
でもまあ、そう思ってしまう程までに奴隷娘達がわたくしに心を開いてくれ懐いているという事を知れただけでも有意義ではあり、そして同時に嬉しくも思ってしまう。




