ウジウジ思うくらいならばぶっ壊せば良い
最早婚約するしない以前の問題である。
いっそのこと国外へ逃げて暮らしても良いように思えてくるのだがまずは何をするにも死亡フラグを全て折って叩き潰し粉々にした後の話であるし、その場合そもそもの死亡フラグという国外へ行く理由が無くなっている上に国外へ行ったとしても死亡フラグを残したままであれば結局不安は残る上にその死亡フラグがどの様に変化するのか最早わたくしの理解の範疇を超えてしまう可能性も高い為外国へ逃げるというのは無しである。
しかしながら外国へ逃げたいという誘惑は常にわたくしを付き纏うのだが、それと同時に神が敷いた運命という奴から逃げてしまうみたいで、神や運命もさる事ながらそんな弱い心を持つ自分自身も腹立たしく思ってしまう。
よし、決めましたわっ!
ウジウジ思うくらいならばぶっ壊せば良い。それが今世のわたくしの、現在の行動原理である。
ならば戦争を止める事は出来ずとも戦争にならない様に動く事は出来る筈である。
幸い我がドミナリア家の執事により魔族国のシケ栽培地域と騎士団の本部や王宮の位置、そしてそれら騎士団と王族の基本的な一日の生活リズムや行動パターンなど仕入れさせて貰っているのである。
初めは麻薬の繋がりだけを把握するために悩みに悩んだ末セバスを動かしたのだが、彼はわたくしの想像以上の成果を上げて命からがら帰って来たのである。
それを無駄にするなど余りにも勿体ない上にセバスにも申し訳がない。
そうと決まれば後は行動あるのみである。
そしてわたくしは戦争を止める為の作戦をノートへ書き綴って行くと共に三日からイレギュラーも視野して五日程家を開ける言い訳を考え始めるのであった。
◆
その日の深夜、わたくしは王国の地に立っていた。
長期休暇の言い訳としては冒険者登録をする為と学園にも親にも通してある。
理由としては一番無難ではあるのだがいかせんここぞという一回しか使えない為高等部に上がって直ぐに冒険者登録をすると言うのが一般的ではあるのだがそれを今まで登録せず残していたのである。
そして今回がここぞという時であるとわたくしは判断した。
わたくしは公爵家の娘である為万が一を想定して護衛を付けなければならないのだがそれはブラックローズの面々で押し通したし、押し通す為に余りやりたくなかったのだがジュレミアという虎の威も借りた。
目的遂行の為ならば使える物は使う。
しかし親、特にお母様は案の定反対も反対、大反対であったのだが「冒険者登録を許してくれるのでしたら先日お見合いした方ともう一度お会いしても良いですわ」というわたくしが提示した交換条件に物凄い勢いで食い付き見事にわたくしは今自由に動けるというものである。
そして、後は長期休暇と自由の身を手に入れたとしても帝国帝都から王国までは特急馬車でも片道一週間以上は掛かってしまう移動手段である。
そかし移動手段に関してはわたくしの前世の知識で既に解決済みである。
わたくしが思いついたのは最初は移動手段では無く避ける事が出来ない、動く事が出来ない状況で移動する手段である。
そこで思いついたのが真空状態を利用した移動手段である。
まず移動したい方向に空気を遮断する結界を進行方向へ横一直線二つ展開し、更にそれを進行方向とは逆方向に穴を開けた状態で結界で覆う。
そして移動したい方の先にある側の結界内部を真空にした後二つの結界を無くす事により空気は真空状態の箇所へダムが崩壊した水の如き勢いで移動する、その力を利用して空気と共に無理矢理わたくしの身体ごと動かすというものである。
勿論危機的な状況にいきなり一から全てを作って行くのは面倒臭い為にこの一式を一瞬で展開できるオリジナル魔術を作り上げた結果、この魔術を連鎖的に使用すれば高速で移動できるという事が分かったのである。
ちなみにこの移動手段は現在ブラックローズのメンバーに実習魔術の一つとして習得させているし、今後させて行くつもりである。
ちなみにこの魔術は作る切っ掛けとなった無理な体勢から避ける事に使う事に使う事よりも勿論高速的かつ人間には不可能なスピード及び起動で移動できる為今は主に移動手段と攻撃手段として使われており避ける事にも使えるよねっと言った物になっていた。
何故だろう、初めて魔術をお披露目した時の奴隷《仲間》達の、とてもキラキラした表情がほんのすこしだけ胸に刺さるのは。
ええ、そうです。わたくしは初めから避ける事よりも攻撃と移動手段に適している事を想定して作ったのですわ。間違いないです。
そしてこの移動手段を使えるのは今現在ブラックローズのみである。
それを意味する事、それはこの移動手段を使えば王宮へ簡単に侵入出来るのである。
何故ならば、この移動手段は空中を自由自在に移動出来る為である。
勿論、真空を作る規模と使用者の魔力量や技術にも左右されるのだが、今日連れてきた面々と魔族国のシケ栽培地域に派遣した面々は全員空を自在に移動できるだけの技術を有している。
ただ、手段が手段な為今現在では空中に停止する事は出来ないのだがそれは微々たる悩みであろう。




