陽と陰
そして魔族国、その中でも私の父である者の出身国ケルニア国こそがシケの最大輸出国であり、父がここ帝国への販路を築いたのである。
そして父は母と出会い私が産まれたのだが、それが今より百年前。
既に先の戦争によりケルニア国は帝国に討ち滅ぼされた筈であり現在シケの飼育及び販売、そして使用は人間国魔族国共に固く禁じられている筈である。
にも関わらずシケを原材料とした麻薬がここ数年の間で帝都に広まっているという事を私は見て見ぬ振りをしていた。
どうせ、常に側にいたにも関わらずフランお嬢様の苦しみすら分からなかった私なんか。
どうせ人族と魔族の混血種である半端者の私なんか。
そんな者がたった一人で何が出来る。
私は誰か知らない者よりもフランお嬢様の方が大切なのである。
そう思っていた。
そう思う事で目を背けて見えない振りを、気付かない振りをしていた。
「はい。知っております」
「そう」
まるでフランお嬢様の声音は全てを見通しているかの様で私は罪悪感とフランお嬢様に見限られるのではないかという恐怖に襲われる。
恐らくこれはフランお嬢様により下さった最初で最後のチャンスであろう。
この機会を逃せば私はフランお嬢様を表立って手伝う事が出来なくなるかもしれないのだ。
しかしそんな私の考えなど杞憂に終わりお嬢様は私に麻薬の出所を調べ、教える様に任務を与えて下さった。
このドミナリア家には私が混血種である事を隠していたのだが、今回私が選ばれた事、そしてお嬢様のまるで私が麻薬の出所を知っているかのような口振りから私が魔族と人間との混血種である事はバレているとみて良いだろう。
さすが、叡智と慈悲のお方である。
そして私はフランお嬢様より命令を聞き入れ部屋を後にしようとしたその時、フランお嬢様に止められる。
「そう言えばセバス、今日は貴方の100歳の誕生日でしたわよね?急ごしらえですから余り見栄えは良く無いのは勘弁してちょうだいね。これはわたくしからの誕生日プレゼントですわ」
そう言いながらフランお嬢様は私の首に白と黒の絵が描かれたペンダントをかけてくれる。
「それは太極図というものよ。それが表す意味を詳しく語れば長くなってしまいますので簡単に説明させていただきますわね。白が陽であり黒が陰を表しており天地万物あらゆるものは陰と陽のバランスによって成り立っているという意味を持っているわ。陽が欠けても、陰が欠けても世界は成り立たない。どちらも同じくらい必要って事ですわ。今の自分に自信を持ちなさい。そして必ず生きて帰ってくるのです。貴方はこのドミナリア家の所有物ですから勝手に死んでは、高い給金も支払っておりますし困りますの。故に一に自分の命、二にわたくしの命令という優先順位で行動なさい。それでは、最悪の報告を聞かない様に祈っておりますわ」
フランお嬢様の部屋を後にした後、私は遂に堪える事が出来ずに泣き崩れてしまった。
それを見た他の使用人達から心配のお声がけを頂きましたが、そうでは無いのです。
私は今非常に嬉しくて、嬉し過ぎてどうしようもないのです。
この喜びを貴女達にお伝えする事が出来ないという事がここまで歯痒いとは。
しかし、我がお嬢様の邪魔になってしまう可能性が高い為私は使用人達に「私の事は大丈夫ですから、心配せずに持ち場へ戻って下さい」と返事をする。
そして一人になった所でフランお嬢様に掛けて頂いたペンダントを宝物のように大切に取り出すと今一度、お嬢様の説明を思い出しながら眺める。
『陽が欠けても、陰が欠けても世界は成り立たない。どちらも同じくらい必要って事ですわ』
今思い出しても感動で胸が震える。
この世に私が生きても良いと肯定してくれた。
それが、たったそれだけの事が物凄く嬉しい。
魔族である事も誇って良いのだと、胸を張って生きなさいと言われているみたいで……。
あの瞬間、灰色の世界は色付き新しい私が確かに産まれた。
私は百年間、誰かに言って欲しかったのだ。
私という存在を肯定して欲しかったのだ。
私はペンダントを強く握ると共に決意する。
我が仕えるはドミナリア家ではなくフランお嬢様であると。
これからは私もまたドミナリア家では仮面を被り生きて行くと。
そしてやはり、フランお嬢様には私が混血種である事がバレていたみたいである。
それだけではなく誕生日に年齢まで。
「本当に、大したお方だ、我が主人様は」
その夜、一人の執事は確固たる決意と共に闇夜に消えて行くのであった。
◆
ペンダントの件はやり過ぎたのではないか?保身に走り過ぎて逆効果だったのではないか?
そんな事が頭を過る。
セバスはゲームで麻薬を手に出来ていたという事は少なからず過去に裏の世界にいたのではないか?という推測の元太極図をプレゼントしたのだがもしわたくしの考えが外れていたと思うと物凄く恥ずかしい。
何ドヤ顔で語ってんだ?このバカは?などと思われているかもしれない。
ちなみ年齢と誕生日はゲームで得た知識である。
多分何らかのスキルか魔術によりアンチエイジングしているのであろう。
「あーっ!!やってしまったかしらっ!?アンナっ!!」
「今日も完璧でしたよ、フランお嬢様。叡智に溢れたフランお嬢様に間違いなどあろう筈が御座いません」
この作品を書く時や物語を考えている時にいつも聴いているのは
Aimerさんの黒猫のアルバム
リンキン・パークさんのアルバム、ア・サウザンド・サンズ
youtubeにてVtuber燦鳥ノムさんの再生リスト、お歌
を聴いておりますので、もしかしたらこれらを聴きながら読むと………どうなっちゃうんでしょう(^ ^)
私は著者さんが執筆中とかに聞いているBGMを聴きながらその作品を読んでみたいなぁーと思っておりますので文庫本とかでしたらあとがきとかに一筆書いてほしいなと思っております^ - ^w
また、ここまで読んで下さった皆様、評価、感想、ブックマークして下さった皆様、大変ありがとうございます!!
嬉しいのと同時に、勝手ながら執筆の糧にさせて頂いておりますっ!!^ - ^
本日、評価もブックマークも、アクセス数もいっぱい伸びておりましたので、朝起きて確認した時からテンションが上がり休日という事もあり三回も更新させて頂きました!!^ - ^
編集報告
三話天敵にて記載させて頂きましたが、皇帝の息子であるノアは皇太弟である所を王子と表記しておりました事に気付いたのですが皇太弟というニュアンスよりも第二王子という方がキラキラしておりますので以降そのまま王子と表記させて頂きます^ - ^すみません




