聖衣と書いてクロスと読む
そしてわたくしは何故か真っ二つに折れた万年筆をゴミ箱へ捨てる。
そこには数え切れないほどの万年筆であった物が大量にあった。
しかし、功を急いで手から零れ落ちる等という目も当てられない結果を防ぐ為という事は分かっていても辛抱ならない物は辛抱ならない為どうしようもない。
とりあえず、このわたくしがいなくなった後のこれからについて考えられる全ての事を急ピッチで書き記していく。
こんな事ならば少しずつコツコツと記して行けばよかったと夏休み終わり間の宿題をやり忘れた学生の様な後悔がわたくしを襲ってくる。
しかしこのペースであれば後数日でこの、既に三十五冊を超えようとしている引継ぎノートも完成するだろう。
「もう少し、もう少し。あと少しで、例えこのわたくしが亡くなってしまった場合でも誰にも迷惑を駆けずに死ぬ事ができる………」
神の糞野郎といえど、腐っても神である。
いち人間であるわたくしではどう足掻いても勝てない可能性が非常に高い。
あの、神の糞野郎が作り出した化け物達を見れば見る程に、その非常識さが伺えて来ると言うものである。
いくら異世界で魔術という力を手に入れたわたくしでのDNAやらゲノムやらあーだこーだのすったもんだで人を人ならざる者へと改造する事など不可能である。
それこそ神の御業としか言いようがない。
しかし、それでも、その左頬を一発は殴る事は決定事項である。
ふんすふんすと鼻息荒く引継ぎノートへわたくしの知識全てを記していると、ノック音が聞こえてくる。
「勝手に入って構いませんわ。むしろ今は手が離せないので用があれば自ら入って来て下さいな」
「失礼致します、フランお嬢様」
そしてわたくしが入室するように促すとセバスが何やら布に包まれたランドセルより少し大きそうな四角い何かをメイド達複数人によって丁寧に持ってこさせる。
そして最後に元聖教皇とその従者も入室し、メイド達が全てわたくしの部屋から出て行った事を確認すると部屋の扉を閉じ、防音の魔術をセバスが施していく。
「フランお嬢様、何とかフランお嬢様が出て行かれる前にそろえる事ができました」
そしてセバスが巻かれた布を解くと、中から正方形の形をした石の箱の様な物が現れる。
それをわたくしの持つ知識で表すとするならば聖衣と書いてクロスと読む物が入っていそう感がビンビンと伝わってくる。
いやもうこれそういう事でしょう?そうですわよね?あれが入っているのですわよね?
これで滾らない三十代男性はいないっ!!
「君の小宇宙は燃えているかっ!?今こそ第七感を呼び覚ましっ、小宇宙を燃やし聖衣を纏いし時であるっ!!」
「は?」
「え?」
「お、お嬢様?」
「な、なんでも無くてよ(恥ずかしっっっっっっ!!)」
誤字脱字報告ありがとうございますっ!
ブックマークありがとうございますっ!
評価ありがとうございますっ!
昔ハマっていたという上司が三十代でしたので三十代にしました(*'▽')




