苦言を申さないという事はそういう事
そして仮面の女性はこの我に対してまるで汚物を見るかの様な表情で見たあと、その足で思いっきり我を踏み潰すのであった。
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「我の弟シュバルツは、神などではない。昔の我と同じ自らの欲望に負けた愚か者だよ。神だなんだと言っているがその行動原理は実に人間らしいと思わないか?」
そう話すシューベルト元聖教皇はどこか自虐めいた表情でそう話しながら聖教国、とある辺境の教会の地下を歩いて行く。
まさかこの様な辺境にある教会にこんな場所があったとは思いもよらなかった。
「っと、ついたな。ここに聖剣カリバーンがある。何故こんな辺境の地にと思ったであろう?それはこの地は代々教皇から教皇へとしか伝わらないのだが、万が一身内に裏切られた場合中央に置いていたらいずれバレてしまうからな。そして我が実験台にされ命を失った段階でこの聖剣もこの世からその存在を知る者が消える運命であったのだが、なんの因果か我は生き残った。その意味を考えるとこの聖剣を使うべきであると、何度考えても本物の神にそう言われている気がしてならなくてな。さぁ、この扉を開けてくれ。元の身体に戻ったとはいえ身体に力を入れ辛くなってな、日常生活には支障はないのだがそれ相応の力が必要な行動は出来なくなってしまったんだ。すまないが頼んだぞ?リンドバル」
「かしこまりました。我が主人よ」
我が主人であるシューベルト元教皇は化け物の姿から元の人間の姿へ戻れた弊害として身体に力を入れ辛くなってしまった様である。
それならばと扉に近付いた瞬間、殺気を感じて避けようとするも何故か身体は言う事を聞かず指一本すら動かせなくなっていた。
そして次の瞬間、俺の胸へ一本の剣が背中から心臓を貫き生えているでは無いか。
一体何故と思おうとした瞬間、俺の口が勝手に開きしゃべり出す。
「お、お見事です。我が主人よ。これで心置きなく天国へと旅立てます」
「あぁ、先に行っていてくれ。俺も近いうちにそちらに向かうだろうからな」
「はは、その性格は治っても仕事嫌いまでは治りませんでしたか。ダメですよ我が主人。この戦争が終わった後誰が聖教国を導くのですか?天国へ行くのはやるべき事を果たしてからにしてください。我が主人よ」
「相変わらず手厳しいな。あぁ、それとリンドバルの身体を乗っ取っている者よ。リンドバルと言う本名を呼んだ時もし洗脳されていない場合は一言苦言を申すと言う流れになっておってな。残念だがリンドバルが俺に苦言を申さないという事はそういう事なんだよ」
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