あり得ない事
我々は一体何を相手にしているのか、その底知れぬ何かに思わず恐怖を覚え身震いする。
例え、神でも勝てないのではないか?というあり得ない事を想像してしまうくらいには。
「まぁ、とりあえず安全面を確保する為にも拘束させて頂きますわね」
そして彼女がそう言いながら指を鳴らすと、俺は見えない何かに拘束されていた。
避ける事も、防ぐ事も出来ず、まるでまだ歩けない子供を捕まえるかのごとく容易く拘束された俺は納得する。
コレを相手にしたら勝てなくて当たり前であると。
我々は神の力を分けて貰い強くなったと思っていたのだが、そんな我々を子供扱いするこの者達のは抵抗しても無駄であると判断した俺は素直に爆姫の言葉に従うのであった。
◆
「こ、コレは………我らが神がコイツらを作ったと言うのか?」
そして爆姫、名前をカミーラと名乗る女性に連れて行かれた場所、そこにある豪邸の地下室へと入って行くと目を背けたくなる様な光景が広がっていた。
「この者達はあなた方の言う神の力を強く与えられたのか解呪の魔術を施しても人間の姿へ戻らなくなっておりましたわ。フランお嬢様曰くディーエヌエーそのものを作り替えられたのではないか?とはおっしゃっておりましたが………」
「この者達が、元はエルフだと………にわかには信じられぬ」
「本当である」
俺の呟きにカミーラではなく、聞き覚えのある者の声が答える。
その声に俺はあり得ないと思いつつ高鳴る鼓動を抑える事が出来ない。
そして、そこにはあり得ないと思い、それでも居て欲しいと思っていた人物がいた。
「きょ、教皇様………っ!生きてっ、生きてらっしゃったのですかっ!?」
身体は歓喜に震え上がり、涙が溢れ顔をくしゃくしゃにしながらも身体はそうするのが当たり前であるかの様にスムーズに膝をつき頭を垂れ、敬意を示す。
「良い良い、俺はもう教皇ではないのだ。そんな畏れる様な人物でもあるまい」
「しかしっ───」
「良いのだ。それに、例え教皇であったとしてもあの時の俺が畏れる様な人物では無い事は確かであるしな。過去を見れば後悔しか浮かばぬ」
そう言いながら元教皇であるシューベルト様は悲しげな表情をする。
その表情を見て、立派になられたと感慨しく思う反面、ゾクリと背中から冷や汗が出る。
ここの化け物を作り出せる様な力が有る者は誰か?
シューベルト元教皇が居なくなれば誰が一番得をするのか?
「残念ながら貴方が今思っている奴が犯人で間違いない。俺を暗殺するだけではなく化け物へと変えるモルモットにしたのは俺の弟である現教皇である」
誤字脱字報告ありがとうございますっ!
ブックマークありがとうございますっ!
評価ありがとうございますっ!
今回睡魔が、やばかったです。




