金輪際
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こうなってくれば避けるのも容易く、相手の攻撃を見切り避けると一気に懐まで潜り化け物の身体を愛刀で真横に一線する。
そして俺の斬撃によりいとも簡単に身体が二つに分かれた化け物に違和感を感じ、後ろに跳躍して一気に化け物から距離を取る。
その違和感は正しかったらしく先ほどまで俺がいた場所の石畳から真上に水が噴き出し、その水に触れた全ての物が白い煙を出しながら溶け出して行く。
「なんだ、避けたのか、つまらん。しかし見ての通り我には斬撃はもとより打撃も効かぬ。なんせ水の身体だからな。何ならこんなことだってできる」
罠をしかけ、その罠を避けられた化け物は少し苛立たし気に切られた個所など分からない程元に戻った姿を現すと、次の瞬間にはその元に戻った身体を溶かして地面へと溶け出していく。
「なるほど、こんなに探しても今まで見つからない訳だ」
「感心している場合ですかっ!団長!」
その姿に思わず関心しているとヒルデガルドが俺の頭を叩き現実へと引き戻してくれる。
まったく、出来た娘であると同時に将来俺は彼女の尻に敷かれるのであろう未来が見えた気がした。
しかし、そうこう言いながらも地面にある水たまりや染みを土魔術で針を下から突き出し攻撃し続けているのだが効いている様な気配は一向に感じ取れない。
「っ!?」
その時、真下から微かな殺気を感じ取り即座に真横へ避けると針の様に細い水の柱が俺が立っていた場所に下から上へと突き出していた。
「やばいっ!!一旦距離を取るぞヒルデガルドッ!!」
そして次の瞬間訪れる隠しすらしていない強烈な殺気を感じ、ヒルデガルドと共に一気に跳躍してその場から離れると、先ほどまでいた場所にまるで雨の様に水が降り出して来る。
どうやら針状の水は絶えず下から上へと噴き出しており、それが雨の様に振りだしたみたいである。
「化け物の癖に無駄に知恵が回る」
「餌の癖に無駄に殺気を感じ取る」
そして降り出した水しぶきにより溶け出した石畳から化け物が出てくると互いに軽く罵り合う。
まだ化け物は何かを隠している様であるのだが、それでいい。
俺を弱者であると見下して全力を出さずに遊んでくれているのならばそこに付け入る隙が生れるというものである。
「なあ、化け物よ」
「何だ?家畜」
俺はニヒルな笑みを浮かべて化け物へ問いかける。
「ここはどこで俺はどの国の騎士団だ?」
「何だそんな事か。ここは王国で────」
そして俺は化け物が言い切る前に爆発的に増えた魔力と体力により目の前の化け物へ一気に近づき右拳を化け物の中へ突き刺すとその拳から膨れ上がった魔力を一気に放出し、更にその放出された魔力を炎魔術で一気に前方向へ爆発させる。
「そうだ。ここは王国で俺は王国の騎士団、それも団長である。そしてこの国はそれ自体が魔方陣の役割をしており騎士団本部内部とまではいかずとも身体能力を爆発的に向上させることができる………ち、逃げたか」
そして俺は煙草を口に咥えて火をつけ────
「煙草は健康に良くないですし、もし妊娠した場合はお腹の子にも良くないから金輪際止めるって言いませんでしたっけ?」
────ずに地面へ捨て、くしゃりと踏み潰すのであった。
◆
まさか、たかが人間ごときにこれ程のダメージを負わされるなどとは思ってもみなかった。
舐めて掛かった結果だと言われればそれまでなのだが、まさか王国そのものが魔方陣であったとは寝耳に水である。
そして王国という名の魔方陣を使用して放たれた魔術の威力はすさまじく、俺の身体の四分の一がその威力の衝撃で持って行かれ、身体の右側がごっそりと抉られていた。
しかし、それでも我は不死身故にここからいくらでも回復の仕様はあるのだ。
相手の奥の手が見れただけでも御の字としようじゃぁないか。
これで対策出来るというものである。
だからこそ、奥の手と言うのは使ったからには必ず相手を仕留め切らなければならない。
「クソッ!!次あった時は絶対ぶっ殺してやる」
しかし、いくら回復できるからと言って俺の身体はただの肉の塊の様な他の同士である化け物に成り下がった者達とは違い、より高次元の身体へと進化している為、直ぐに回復できるような身体ではない為泥水を啜る思いで一旦撤退する事にする。
逃げる訳ではない、戦略的撤退であると自分に言い聞かせながら。
「あら、どこへ行こうというのかしら?」




