肉の味
ああそうだ。
そうであった。
私は人間を襲わなければならない。
自称神であるとぬかす人間の言いなりになるのは癪だが、どうせ従わなければ奴隷契約による代償により死んでしまう身であろう。
であるのならば本来の目的である人間の抹殺という私の野望と一致している命令であるのならば喜んで引き受けようでは無いか。
しかし、目が覚めてからというのも、私の身体の変化もそうであるのだが体に保有する魔力量も桁違いに跳ね上がっている事が理解できる。
これならば人間の国の一つや二つなど簡単に滅ぼすことが出来るであろう。
「何だお前?まだ出て行ってなかったのか。全く使えぬ」
そんな事を思っていた時、部屋の扉が開き自称神と名乗る人間が入ってくる。
そしてこの身体になった今だからこそ理解してしまう。
目の前の人間は自らを神と名乗れるだけの力が備わっているという事を。
今の自分でさえも彼からすれば塵芥にしかすぎぬであろう。
「おぉ、神よ………」
その言葉は私の口から自然と出ていた。
それだけでは無く私は感動で涙を流し、そして満たされる心に最高の幸せを感じていた。
「ふむ、なるほどなるほど。面白い結果ではないか。我が液体をかけた者は自我を残し、さらにそれだけでは無く強さも桁違いに強く進化していると見える。エルフの搾りかすにしては上出来では無いか」
「そう、我が神から仰って頂くだけで、有難き幸せでございます」
あぁ、あぁ、なんと幸せな事か。
あの神が私の事を見てくださっているでは無いか。
「排泄物の体液でこれであるのならば我の血液を与えればどうなる?我が体の肉は………?ふむ、今度は搾りかすではなくちゃんとした個体で確かめてみる必要がありそうだな。あぁ、お前まだいたのか。そうやって我を崇めるのも良いが本来の目的をさっさと遂行しろこのゴミが」
「かしこまりましたっ!!」
私は神の御使いとして、神から直接命令を下されるという、天にも昇るのではないかという幸福とそれによる興奮を何とか表に出さぬよう感情を抑え、姿を消し王都へ向かうと、透明な姿を生かして王都に住む害獣という名の人間共を私の糧として消費していく。
そして私は産まれてきて初めて、人間という害獣である生き物の肉がこれ程までに美味であるという事に気付く。
それも、恐怖に怯えれば怯える程、絶望を感じれば感じる程美味しくなるその肉の味に、エルフであった時は食に関してだけは妥協を許さなかった私にとって、その肉の美味しさに感動すら覚えるのであった。
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