拾われる前は貴族の端くれでしたもの
「いるんだろ?これを我々の代わりにフラ………いや、ローズ様へ渡してはくれないか?封印こそできるのだが俺たちはこの化け物を滅する事ができない。不甲斐ないのは重々承知しているのだがどうか頼まれてはくれないだろうか?」
そして俺は聖教国との国境付近、その森林にてある種の確信をもってその木々の先の暗闇へと問いかける。
するとその暗闇の中からまるで出て来たかのように黒い仮面を被ったゴスロリ調のメイド服の様なものを着た女性と、軍服の様な、しかし我が国の軍服よりもスタイリッシュなものを着こんだ、同じく黒い仮面を被った────体系からして恐らく女性であろう────者が二人音も無く現れる。
「かしこまりましたわ。しかとローズ様へお渡しさせて頂きますのでご心配なく」
そしてゴスロリ調のメイド服を着た女性がこの化け物をフランへ持って行ってくれる事に安堵するのだが、次の言葉で背筋が一瞬にして凍る。
「しかしながら、あなた方の戦い方は、まるでわたくし達ブラックローズの新人部隊を見ている様でしたわね。そう、まるで今いる戦闘員、新人部隊の中にあなた方へ我らブラックローズ情報をリークしている方がいるように見えますわね」
「………………」
「そう警戒しなくても大丈夫ですわ。これでもわたくしもローズ様に拾われる前は貴族の端くれでしたもの。新人の中に本来であればあり得ない顔が一匹混じっている事も、そしてあなたが誰であるかも当然理解しておりましてよ。ただ、だからと言って全てが許される訳ではございませんわ。あくまでも今現在は問題なしと判断され見逃されているだけにすぎませんわ。もしあなた方が知りえた情報を外部に漏らす事があろうものならば、それが例えどんな些細な情報であろうともそれ相応の制裁は加えさせて頂きます。そう、例えこの国の王族であろうとも。一応警告は致しましたのでわたくしたちはこれで帰らせて頂きますわ」
そう言うと彼女たちは音一つ立てずにこの場から、まるで闇の中へと消えて行くように姿を消していった。
「ちっ、少しは強くなったと思っていたが、俺たち全員でかかってもあの仮面の女性一人相手取っても勝てる気が少しもしねぇ………」
「あの女性が言う様に今の我々は彼女達からすれば新人レベルなのであろうな………」
そして仮面の少女たちが消え、レオが悔しそうに呟く言葉を拾い、返す。
本来であればあのような圧倒的な差を見せつけられれば心が折れててしまうものなのだが、風嵐の誓い全員のその瞳には強さに対する貪欲さが今まで以上に見て取れるのであった。
◆
「ふーん、思ってた以上に帝国は粘っているみたいですね。せっかく作った神の使徒が早くも二匹も潰されましたか。で、君は現地でその光景を見ていながらのこのこと我が元へ帰って来たと?」
「も、申し訳ございませんっ!しかしながら情報をお伝えする事こそ最優先であると判断しクペっ?」
「言い訳何か聞きたくない。とりあえず死んで神である俺の糧となれ。神の糧となるのだ。さぞあの世では歓喜で感極まり咽び泣いてるやもしれぬな」
誤字脱字報告ありがとうございますっ!
ブックマークありがとうございますっ!
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気付いたら寝落ちしておりました(*'▽')




