陰陽師
「何を呆けているのですか。その時間があれば今できる事をしなさい。せっかく気持ちの悪い触手から解放してあげた事を無駄にするのですか?」
「あ、ああ。すまない」
俺の身体に巻き付いた触手、そして化け物本体も含めて辺り一面目に見える触手という触手が全て木っ端微塵に切り裂かれている光景に唖然としていると、この光景を作り出した、黒い仮面を被った声の主と、黒い狐の仮面を被ったその仲間と思われる二名の女性が目の前に現れ突っ立ってないで行動を起こせと言ってくる。
その言葉により辺りを見渡せば木端微塵に切り裂かれた触手の肉片が蠢いており、これを見た俺は地上に立っているのは危険と判断し即座に木の枝へと跳躍した。
「では、アリッサさん、キャシーさん、お願いします」
「は、はいっ!!………では、行きますっ!!呪術・悪鬼封印っ!!」
「封印完了確認っ!!呪術・五重結界っ!!」
「お二人ともお見事です。それではこのサンプルをローズ様へとお渡し致しましょう」
「いえ、ローズ様に教えて頂いた陰陽道のお陰ですっ!!」
「私たちそのものはレイス一匹ですら除霊できない呪術師でしたので、全てローズ様のお陰ですっ!!」
そして、木の枝へと避難したガイルとは対照的に件の女性達は今だ地上に立っていたのだが、次の瞬間見た事も無い異国風の服装をした女性二人によってものの見事に件の化け物は封印されてしまった。
そもそもフランはこの者達へ冗談半分でお札を魔方陣代わりに飛ばして攻撃するアニメから得た知識の陰陽師を面白おかしく奴隷の子供たちを中心にあくまでもフィクションとして物語を聴かせたのであるが、この話をフィクションであると思っているのはフランだけであり、更に奴隷たちのキラキラした眼差しに耐えきれず筆で書いたお札と記憶をかき集めて何とかそれっぽく作った衣装の陰陽師なりきりセットを漢字の意味と効果の説明をして配った物が、奴隷たちの努力により実際に効果をもたらすに至っている等とは露程も知らないのだが。
「では、帰りましょうか」
「「はいっ!!」」
「ま、待ってくれっ!!」
そしてこの一連の流れを見て驚きを隠せないガイルであったのだが、狼系の獣人であろう娘によりこの場を去ろうとしている事に気付き、気が付けばガイルは件の女性三名の前に降り立ち、引き留めていた。
「何でしょう?私たちには今すぐにでもこの化け物をとあるお方へと持って行かなければならない為、時間が無いのですか?」
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すみません、少なめです。




