自分自身に腹が立つ
あとはもう圧倒的としか言いようが無かった。
ノア様やレオ含めて数人並びにあの獣人ですら倒しきれなかったあの化け物に対してたった一人で、それも赤子の手を捻るがごとくいとも簡単に倒してしまったのである。
「理解できたか?アルビン」
何を、とは聞かない。
「俺にも、もっと強くなる方法を教えてくれ」
ノア様の問いに俺はそう答える。
フランは今、俺たちが想像できない様な強大な敵と戦っているという事が分かった今、強さを求めないという答えなど無い。
そんな俺の頭をレオが乱暴に、くしゃくしゃと撫でてくる。
「その為にお前を呼んだんだ」
「フンッ、当然だ」
口ではそっけない態度で返したのだが、この風嵐の誓いへ俺をメンバーとして加えてくれた事を深く感謝する。
もし、このままフランの裏側を知らないままのうのうと生きていっていたとすれば、真実を知った今の俺から見れば、その事を想像するだけでも耐えきれないものがあった。
むしろ、フランの裏側を知らずに今までのうのうと過ごし、そしてフランに対して攻撃的な態度を取ってしまっていたことに対して自分自身に腹が立つ。
「そう自分を責めるな。一番近くにいた俺たちもなかなか気づけなかったんだ。お前が今まで気づけなかったといって誰も攻めやしないし、仕方のない事だとも思う」
「し、しかしっ!………そうだな。過去を払拭する為にも今から強くなるよう頑張ってみるよ」
そしてそんな俺を見てノア様が声をかけてくれる。
そんなノア様に対して否定しようとしたのだが、否定したからと言って過去の俺の軽率な行動の数々が消えて無くなる訳ではないと思い直す。
「それでは、気持ちの面でも皆さま準備が整たようですので、これより何故ブラックローズがここまで強くなれたのかご説明させて頂き、その後にそれらを実践していこうかと思います」
そんな俺の気持ちの変化を感じ取ったのかオズウェルが口を開き、俺を含め風嵐の誓いのメンバー全員が真剣な表情でうなずく。
「しかしながら一点だけ注意事項がございます。無いとは思いますが今回の内容を第三者に伝える等、裏切りともとれる行為や行動を発見した場合、例えノア様とも言えど始末させて頂きますのでご注意いただければと思います」
「ああ、それで構わない。本来であれば俺たちに話すというだけでもブラックローズからすれば処罰対象であろうしな」
「ありがとうございます」
「え?オズウェルはまさかブラックローズの一員なのか?」
「厳密には違いますが、似たような者ですね。私は奴隷ではないので。しかしながらこの身と心はフランお嬢様へ騎士の誓いを立てさせていただきました」
オズウェルが帝国への忠誠を忘れたかの様な事を言い出す為まさかと思い聞いてみると意外な答え────とはいえ想像通りなのだが────が返ってきた。
「待てっ、それならばオズウェル様の家はどうなる?」
「優秀な弟がおりますので我が家は全て弟に託そうかと思っております。まだ親には騎士の誓いの事は話しておりませんが近いうちに何らかの方法で伝えるつもりではございます」
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