国家機密
ノア様からの手紙に書かれていた事は三点。
●風嵐の誓いメンバーへの加入
●オズウェルが得たブラックローズ並びにフランの強さの秘密、その情報のやり取り
●その情報をもとに戦力強化合宿
大まかに纏めるとこの三点となるのだが俺には疑問に思う事があったので、せっかく筋肉ゴリラだけではなくノア様も居るので一つ一つ聞いていく事にする。
「ノア様、俺を呼ぶのは良いけどさ、まず風嵐の誓いってなんだ?」
「フランは今強大な敵と戦っている。その戦いに参加できる程の実力を身に付け、フランと共に戦えるまでになる事を目標とした組織だ」
「………は?」
俺の問いにノア様は普段見せない様な真面目な表情で話し始める為思わず身構えてしまったのだが、その内容を聞いても俺はノア様が仰った言葉の意味を理解する事が出来なかった。
そんな時レオが俺の頭を片手で掴むとぐるぐると円を描きながら回し出す。
「だからフランは今強大な敵と戦っているんだよ。脳みそ詰まってんのか?」
脳みそが筋肉でできているレオにだけは言われたくないと思うのだが、ここで反論しても話が進まない為グッと堪える。
俺はレオと違って脳みそがしっかりと、ぎっしりと詰まっているからな。
「しかし、あのフランが強いとも思えないのだが。なんなら俺よりも弱いんじゃないのか?」
「まぁ、普通に考えれば上級貴族の娘って時点で争いごとは苦手と思ってしまうのも無理ないのだが、間違いなくここにいるメンバー全員で戦っても十秒と持たずして負けてしまう位にはフランは強い」
開いた口が塞がらないとはこの事か。
ノア様の仰った事は俺からすれば正に青天の霹靂。
信じるよりも否定した方が精神的にもよっぽど楽であると言えよう。
「まだ信じれない顔をしているな、だがこれは風嵐の誓いに所属したお前には後でフランの戦闘を記録した映像石があるのでそれを観せよう。ちなみにこの映像は国家機密だからな」
そんな俺の感情を感じ取ったノア様は微笑みながら、フランの戦闘シーンを観せてくれると言うではないか。
しかもたかが貴族の娘の戦闘シーンの映像が国家機密という事にも驚きを隠せない。
「あ、ああ。その映像でもってフランの強さは判断させてもらう。それと、ブラックローズとは何だ?」
「ブラックローズはフランが作ったとされる、フランの奴隷でできた裏の組織だ」
「は?」
「それだけではなく、ブラックローズの戦闘員達は全員、フラン程では無いがここにいる俺たちよりも間違いなく強い」
「………はぁっ?」
またもや開いた口が塞がらない。
それどころか顎までもが外れそうである。
「ここ二年連続で武闘大会団体の部で優勝した『黒い花達』というパーティーがあるのは知っているか」
「知っているも何も他者を寄せ付けない圧倒的強さで今帝都ではファンクラブまでできる程の人気じゃねぇか」
「あの者達もブラックローズの一員だ。しかもあの者達よりも強いメンバーがブラックローズにはいる。むしろブラックローズの戦闘部隊はあのレベルが平均値だ」
もうここまでくると驚きを通り越して呆れてしまう。
「そ、そんな組織を作ってフランは何と戦おうとしているんだよ。国か?」
「それも含めてフランの戦闘の映像を観てもらった方が早いだろう」
そういうや否やノア様は部屋の明かりを消し厚いカーテンで外からの光を遮断すると映像石を取り出してフランの戦闘シーンを再生しだす。
そこには初め見た事も無い巨大な化け物と、それと戦うノア様達が映っていた。
ノア様と他の者達は宮廷魔術師や帝国騎士団団長よりも強いと思える程の連係と攻撃を繰り出して行くのだが、化け物はその猛攻を物ともせず反撃しているのが観える。
そしてこんな化け物をどうやって倒したのか、またフランの戦闘シーンではないのかと思い始めた時、狼の獣人であろう黒い仮面を被った一人の娘が空からノア様の前で降り立つと、次の瞬間には彼女の姿が消え、件の化け物が空中に浮いていた。
そこからは一方的な戦いとなったのだが、件の化け物は再生能力も化け物じみており獣人の娘の攻撃を全て驚異的なスピードで回復して行っているのが分かる。
化け物じみた強さをもってしていても倒せない。
そう思った次の瞬間、黒い仮面を被った、金色に輝く二本の見事なドリルを携えた女性、いや、どう見てもフランであろう女性が空から降って来たのだ。
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