第7話 服屋と情報収集
第7話 服屋と情報収集
・都街
一夜を城の寝室兼仕事部屋で明かし朝食を済ませた私は、鎧を装着して、アリスと城を出た。
この都は城を中心にして街が広がっている。
東西南北にそれぞれ地区が分かれていて、東が貴族街、西が平民街、南が商店街、北が学園街、となっている。
名前の通り、貴族街は貴族が住む場所、平民街は平民が住む場所、商店街は色々な種類の店が在り、学園街は色々な学校の密集地である。
その中の南地区、商店街へ来ていた。
此処は都唯一の出入り口、城壁門があり、私が初めて入った都街だ。
旅人が宿泊する宿や、ギルドもこの南地区にある。
食料品や衣類はもちろん、武器・防具を取り扱う武器屋、マジックアイテムや日用品・家具を取り扱う雑貨屋が数多くあり、他にも他国から来た商人の店も出ていて、都で最も賑っている地区だ。
「凄い賑いだね」
私は辺りを見渡しながら言う。
「そうですね、ここで賑っていない日はほとんどありません」
右隣りを侍女の服を着て歩くアリスが言った。
現在の時刻は午前10時。
皇太子は学園街にある中学に行っている。
この世界でも、小、中、高、大と学校が分かれていて、一週間の内の5日は学校に通っている。
一週間は、光の日・火の日・水の日・風の日・土の日・闇の日・無の日7日だ。
その中の光から土の日が学校に行く日だ。
1年間は地球と同じで365日あり、1月から12月まである。
この辺りは地球と全く変わらない事に正直驚いた。
どうやらこの世界は地球と同じ時間で動いているようだ。
ここでちょっと分かった事がある。
天照様が言っていた事と、今現在の都の治安状況の事だ。
あの時、天照様は勇介が召喚される4年前に私を送ると言っていた。
つまり、天照様が知っている時点での都の状態では、治安が良くなっていると言う事。
ちょっと考えれば分かる通り、私は異世界に飛ばされると同時にタイムスリップもしてしまったと言う事だ。
と言う事は、今の地球には13歳の私と勇介が存在している。
4年前に送られるれると言われた時に、気が付くべきだった。
どうして、魔王と互角に渡り合える力を与えられている私が存在しているのに、勇者召喚が行われたのか。
自分を過信している訳ではないが、そこが気になった。
もしかしたら勇介、碌でもない国の思惑で召喚されたんじゃ…。
勇介なら騙されそう。
とまぁ、そこまで考えたら色々な事が分かった。
ようするに、あの時勇介に巻き込まれる事は、すでに決まっていた事だったのだ。
4年前にはすでに、17歳の私がエルドアに来ていて、黒騎士をやっていたのだから。
つまり今の私だ。
そして、4年後には都の治安状況は解消されている。
なんか、凄く複雑な気分。
治安が解消されるのは嬉しいが、何処までも勇介に巻き込まれるのね私。
「はぁ~」
「ん? どうかいたしましたか? 黒騎士様」
思わず溜息をついてしまった私にアリスが聞く。
駄目だ、今はアリスと行動しているんだった。
「いや、何でもない」
「そうですか?」
首をかしげながらアリスが言った。
「うん。それよりさ、私服を買おうと思ってるんだけど、良い店知ってる?」
私は話をそらすために聞く。
今日は、服と出来るだけの情報収集を目的で街に出たのだ。
時間が惜しい。
アリスは首を傾げるが、気にする事を止めて服屋へ案内してくれた。
・とある服屋
アリスに案内されて服屋に着くいた私達。
さっそく中に入ったのは良いのだが…。
「…なんかじろじろ見られてるんだけど…と言うか、恐れられてるような…」
「まぁ、マントの色のせいでしょうね」
アリスは私のマントを見ながら苦笑する。
確かに、この服屋は一般の平民や旅人が利用する服屋。
こんな所に、皇族や皇族に近い人間が羽織る真っ赤なマントを着けている人間が居たら、珍しいだろうし、怖いだろうな。
それに日用品買う、全身真っ黒な鎧の人間…。
怪しすぎる。
「いやでもさ、私的には高価な服とか興味無いし、普段はずっと鎧着けてるから、楽な服と寝巻とローブが欲しいだけなんだけど」
出来れば、今鎧の下に着ている服とズボンみたいな服が良いな。
因みに、鎧装着時はブーツその物が鎧に変化しています。
「でも、黒騎士様も偶にはお洒落しないと」
アリスは私の性別知ってるから、気遣ってくれる。
でも申し訳ないが、私はドレスに興味が全くない。
家でも殆どジャージなどの楽な服を身に着けていて、お洒落とは無縁の生活していた。
そのせいで、家族全員に泣かれたけど。
でも、お小遣いで服買うより、ゲームや漫画や模造刀買った方が私は良いと考えている。
兄さんに無駄遣いって言われたけど、兄さんだけには言われたくなかったな。
忍者グッズで部屋埋もれてたし。
まぁ、それは置いといて。
「アリス、私は性別隠している訳であって、お洒落する様な状況じゃないし、外に出る時でも鎧着けて出かけるから」
「……そうですね」
アリスは納得してくれたようだけど、同時に残念といった感じに肩を落とす。
これはアレか?
よく小説や漫画に出てくるメイドさん達と同じで、相手を着せ替えして楽しみたいと言うアレなのか?
なら悪いけど、私はそれをされるのは御免だ。
私は男物の服が置かれている棚の方へ行く。
性別隠しているのに、女物の服を選んだらおかしいと思うから。
色は、黒や茶色と言った地味な色を選ぶ。
後ろからはアリスの不満に満ちた視線が刺さるが、気にしない。
私服を4着、黒い寝巻を2着選んで次はローブだ。
ローブは念のため、黒騎士のままだと動きづらい所で仕事する時に顔を隠すために買う。
やっぱり目立たないように地味な色が良いな。
後動きやすくて、軽いやつ。
「すいません」
「は、はい!」
私は、どれが一番いいのかを聞くために近くに居た店員さんを呼ぶ。
返事をしたのは店員の20代前半の赤いロングストレートヘアーの女の人。
その人は慌てて私の所に来た。
そんなにビクつかなくても…。
「あっあの! 何かございましたか!?」
店員さんは声を震わせながら聞く。
なんかごめんなさい店員さん。
「あの、ローブを探していて、出来れば動きやすくて丈夫なやつを」
私がそう聞くと店員さんは引きつりながら選んでくれた。
「こっこれなど如何でしょう!? グリフォンの羽で編まれたローブです! 魔法の抵抗力もありますしっ、軽く丈夫でございますっ!」
ビクビクしながら出された焦げ茶色のローブ。
受け取ってみると、確かに軽く、丈夫そうだ。
「ありがとうございます。じゃぁ、これを」
「かしこまりました!!」
そう言って、私が持っていた服を持ってレジに向かう店員さん。
しかし
「きゃぁっ!」
――――ズテッン!
つまずいて転げる店員さん。
服やローブは下に落ちる。
その光景を見て、周りの人達は青ざめている。
いや、そんな青ざめなくても…。
私とアリスは転んだ店員さんの所へ行く。
「あの、だいじょ「もっ申し訳ございません!!」……」
完全に震えている店員さん。
そんな店員さんに右手を差し出す。
「怪我はありませんか?」
「へ?」
怒られると思っていたのだろう、店員さんはキョトンとした顔で私を見上げる。
私は、優しく話しかける。
「そんなに怖がらなくても、大丈夫ですよ?」
「は、はい……」
恐る恐る差しのべた私に手を取り、立ち上がる店員さん。
その間にアリスが床に散らばった服を集め、レジへと持っていく。
「あっ! 別の物をお持ちします!」
レジへ持って行かれた服を慌てた様子で取り替えようとする店員さん。
「いえ、別にかまいませんよ」
「よ、宜しいのでしょうか?」
不安そうな表情で聞いてくる店員さん。
「はい、服が破けている訳でもないですし。元はと言えば、私が原因のようですし」
その言葉に店員さんが慌てる。
「そっそんな事」
「いえ、私のせいですよ」
店員さんを落ち着かせるようになだめる私。
すると店の奥から
「ガハハハハハッ! お前さん、なかなか見どころあるな!!」
豪快な笑い声と共に一人の男が出て行きた。
赤い寝ぐせっでグチャグチャの短髪に赤いちょび髭、眉間に皺を寄せて目付きが悪いが極悪人の様な顔ではない。
体系は体操選手顔負けの筋肉体質、身長は190クアメイト位で年齢は50代位のおじさんだ。
「こんにちはバイロンさん」
「おお、アリスちゃんか」
アリスはこのおじさんと親しいようだ。
「黒騎士様紹介いたします。此方はバイロン・オーズリーさん、この店の店長さんです。バイロンさん、この方は私が仕える事になった黒騎士様です」
アリスがオーズリーさんの紹介をした後に、私の紹介をした。
「どうも、俺の事は気楽にバイロンで良いぜ」
ニカっと白い歯を見せ笑いながら、バイロンさんは右手を差し出す。
「はじめましてバイロンさん。事情があって本名を名のれ無い事をお詫びします」
私はガントレットを外して握手をする。
別に私の手だったら性別がばれる事は無い。
話方も敬語だから大丈夫だよね。
すると、バイロンさんは何かに驚いた表情をする。
周りを見ると、店内に居た他のお客さんや店員さん、店の外の人達も似た表情だった。
私何かしたかな?
不安でアリスを見るとニコニコしながらこっちを見ている。
私が疑問に思っていると、
「ガハハハハハッ! 気に入ったぜ黒の旦那!」
――――バシンッ! バシンッ!
バイロンさんが左手で私の肩を叩きながら、またも豪快に笑う。
私何かした?
「お前さんが黒い一角獣に跨ってやってきた時は夢かと思ったぜ! しかも今日行き成り真っ赤なマントを着けて店にやってきた時はおったまげたぜ。問題でも起こされるんじゃねぇかと思ったが、逆に店の店員の不始末を許して気遣いまでしてくれた。しかも、身分の低い俺の握手にわざわざ素手で答えてくれた! さすが、伝説の一角獣に選ばれたお方だ! 器がデカイぜ」
「いや、普通だと思いますが?」
バイロンさんの何故か感動したと言う雰囲気に押されながら、私はそう返す。
しかし、またも何を思ったのか、バイロンさんは私を後ろを向かせ両肩を掴むと、野次馬に向かって言った。
「おい皆! これが伝説に選ばれた騎士様だ! 見たか旦那の器のデカさを! コンラットもそうだが、本当にデカイ人間って言うのは自分を過大評価しねぇんだ!」
「「「「「「「「「おおぉ!」」」」」」」」」
叫びながら言ったバイロンさんの言葉に、野次馬が感心の声を漏らす。
何故こんな事に?
「まぁ、バイロンさん分っていらっしゃる。なんてったって黒騎士様は兄上とカイル様、直々に指名された帝国騎士隊長で、皇帝一家たっての希望で皇族専属騎士になられたお方。私もこの方にお仕え出来る事は名誉の事です」
ちょっと!
アリス今この場でそんな事言ったら!
「皆聞いたか!? 帝国最強の騎士と騎士副隊長、皇族にも認められて騎士がわざわざ俺の店で服を買いに来たぞ!!」
バイロンさんのその一言で
「黒の旦那! 今度ぜひ俺の店にも来てくれ!!」
「旦那、私の八百屋にも来ておくれよ」
「家の武器屋にも来てくれ! 良い武器仕入れてるからよ!!」
次々と他の店の人達に言われた。
そしてそれを期に、私は西の平民街と南の商店街で『黒の旦那』と呼ばれるようになった。
私女なんだけど…。
まぁ良いか、旦那で。
数分後、ようやく騒ぎが収まり、レジで会計をしている。
「合計で銀板1枚と銀5枚だな」
この世界のお金は銅、銅板、銀、銀板、金、金板だ。
価値は銅が十円、銅板が百円、銀が千円、銀板が一万円、金が十万円、金板が百万円だ。
形は、銅・銀・金が十円玉と同じ大きさと形、板は五百円玉ぐらいの大きさで長方形の板。
円に治すと一万五千円になる。
私は天照様にもらった、茶色い袋から銀板二枚を出す。
重いと思ったら銀板がぎっしり入っていた。
昨日寝る前に数えたら百枚入っていた。
今思えば金と金板じゃなくって良かったよ。
お店の人絶対困ったと思うし。
「バイロンさん、最近の都の状況で変わった事とかありませんか?」
私はお釣りの銀五枚を受け取りながら聞いた。
バイロンさんはこの商店街の中で人望があり信頼されている人だそうだ。
当然この商店街の事も詳しい。
「そうだな…」
バイロンさんは腕を組んで考える。
「これは都だけじゃねぇ話なんだがな、若い人間が行方不明になるってことが結構多いな」
「若い人? 年齢は何歳ぐらいの人がですか?」
「十歳になったばかりの子供も居れば、二十後半位人間だな」
「それは男女問わず?」
「ああ。大方奴隷商人に雇われた、盗賊や闇ギルドの奴らだろうぜ」
奴隷商人?
「奴隷って……確か帝国では百年以上も前から、廃止されているんじゃ」
聖国や王国では当たり前のようにいるらしいが、帝国では廃止されている。
理由は皇族が差別を嫌っているからだ。
貴族と平民と言った身分の差はあるが、皇族と貴族は国を守護し、平民は国の為に働くと言う持ちつ持たれつの関係を保っている。
中には平民を見下すような貴族が居たり、貴族を嫌う平民も居たりするがそれはごく一部だ。
そんな国だからこそ、奴隷は必要ないという考えがある訳だ。
それなのになぜ奴隷商人が?
「確かに帝国では奴隷が禁止されている。だが、三年前位からか?都の何処かでオークションが開かれているって噂が流れてんだよ」
「オークション!?」
何その胸糞悪い情報。
「それについては兄上達、帝国軍でも調べています。しかし、なかなか尻尾がつかめなくて」
「場所は裏町だろうぜ」
裏町とは、商店街のに存在する、柄の悪い店や人間が多い場所だ。
闇ギルドも此処に存在する。
「だとすると、腕のいい魔導師が居る可能性があるな。強力な結界を張るのは魔導師の十八番だ。それに貴族の中に内通者もいるだろう。それもかなり発言力を持つ。」
「ん?なんでそう思う。貴族何て誰でも政治に関われるんじゃねぇのか?よく知らねぇけどよ」
バイロンさんのセリフにアリスと首を振る。
「貴族だからと言って誰でも政治に関われると言う訳ではありません」
「そうなのか?」
アリスの答えにバイロンは目を見開いて言う。
平民は貴族の事良く知らない人が多いから仕方ないだろう。
アリスは説明を続ける。
「階級で言いますと、大公は皇帝・国王・聖王の弟君などの皇族・王族・聖族や、その分家の長の地位。公爵は皇族・王族・聖族に連なる者、またはそれに匹敵する大貴族です。黒騎士様はこの地位にいらっしゃいます」
「ほぉ! そりゃすげぇ!」
バイロンさんが私を見ながら言う。
私自身はかなり不満はあるのだが。
アリスは更に説明を続ける。
「伯爵は、領地を持った貴族。子爵は土地を持った貴族。男爵は上院議員になれる最下位の貴族。その他は下級貴族と呼ばれております。因みに兄上は男爵の地位です」
コンラット男爵なんだ。
「あの、坊主も出世したよな。昔はいたずら坊主で手を焼いたが、今じゃ俺達平民の一番の出世頭だぜ」
「いたずら坊主のコンラット?」
真面目に見えるあのコンラットが?
想像できない。
「ええ、あの不良が今じゃ男爵ですもの」
「不良!?」
妹にまで『不良』と言わるなんて、ますます想像できない!
これは興味深いぞ!
「アリス、今度また詳しく聞かせて」
「ええ、喜んで」
それはまた楽しみだ。
さて、話を戻そう。
「まぁ、階級の事はこんなところです。先ほど言った大公から男爵までの中から、最も優秀な人間を選び、政治議会が行われます。ですので、大貴族だからと言って必ずしも政治に介入できる訳ではないんです」
「へぇ、そうだったのか」
バイロンさんは感心しながら言った。
「先ほどの事を踏まえて考えると、強い発言力を持つ人間が内通して犯罪が行われるのは、実は珍しくないんですよ。と言うよりも、奴隷オークションなどの大掛かりな犯罪のバックに、誰かしら権力者が付いていると考えるのは当たり前ですね。そいつが黒幕ですから」
よくある事、テンプレだ。
「ここまで考えると、的は絞れてきたけどやっぱり証拠が無いな。一番の方法は、現場を押さえる事なんだけど」
私一人では限界あるし。
ここはコンラット達の手助けが必要だな。
「アリス、早急に城に戻ろう。戻ったらコンラットの所に連れて行ってくれない?」
「構いませんが、黒騎士様今日は休暇では?」
休まなくていいのかとアリスが聞く。
確かに休みをしっかり取るのは必要だけど、こんな現状だ。
ハッキリ言って三年も前から続いているのであれば、早急に対処したい。
「構わない、そんなことよりもこの状況は、見過ごす訳には行かないし、早めに対処する必要がある」
「畏まりました」
「俺達の方でも何かあったら城に連絡するぜ」
その申し出は正直助かる。
もしかしたら、軍の気付かない事も、平民なら知っている可能性もあるから。
「ありがとうございます。そうしてくれると助かります」
そう言って、私とアリスは荷物を持ち、急いで城に戻って行った。
To be continued
あとがき
第7話更新しました。
今回、街の人間との交流をメインにした話でした。
目標は智慧を街の人気者の騎士へ!
ちょこっと、コンラットの昔話が出てきました。
今後もコンラットの意外な昔の話も書いていこうと思います。
更新は遅かったり速かったりしますが今後もよろしくお願いします。




