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勇者より最強な黒騎士  作者: 暁 桃香
皇太子巡礼編
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第41話 最初の町と最初の夜

第41話 最初の町と最初の夜





・とある町の防壁門前


「どうぞお通りください! 殿下!」


「バカ!」


 門番の男に私は叩きながら、罵倒する。


「何の為にこんな全身が隠れるマントを着ていると思っている! こんなところで『殿下』と堂々と言うな!」


「す、すみません団長」


「『団長』も却下!」


 周囲に聞こえないように、小声で会話をする。


「えっと、ぞれじゃ何と呼べば…」


「ただの『騎士』とか、貴族の『坊ちゃん』」


 この町につくまでに、決めた呼び名で呼ぶように言う。


 殿下は坊ちゃん、私の事はクロードが黒騎士状態の私を呼ぶときに使う『クロ』。


 ただし、周囲にはただの騎士として振舞うため、『騎士』と名乗る事にした。


 時期皇帝である殿下は勿論、帝国軍団長が長旅をするのだ、正体を隠して旅をするのは当然。


 それを察してくれ。


「分かりました! 坊ちゃん、騎士殿!」


「坊ちゃんはともかく、私にまで敬意を払う必要はない。怪しまれるだろう」


 一応今はただの騎士だ。


 帝国の兵士が、ただの騎士に敬意を払うのはどう見てもおかしい。


「いいか、他の兵士達にも言っとけ」


「了解です!」


 本当に大丈夫かな。


「クロお疲れ」


 門番とのやり取りで疲れた私に、声をかけてくるクロード。


 振り向くと苦笑を浮かべる三人の姿が目に入る。


「なんで休む為に立ち寄った町で、逆に疲れなければならないんだ」


「諦めろ、多分帝国内の町や村では同じ事になると思うぜ」


 クロードの言葉に「マジか」と頭を抱える。


「クロ様、とにかく宿へ参りましょう」


 頭を抱えている私に、アリスが言った。


 多分これ以上私が疲れないように、この話を切り上げる為だ。


 兄妹そろって気づかい上手だな。


「そうだな。すみません坊ちゃん、無様な姿をさらしてしまい」


 殿下に自信の失態を謝罪する。


 彼の前でする行動ではなかったからな。


「いや、普段見ることのできない其方の一面を見れたと思うと、悪い気はせぬ」


「寛大なお言葉、感謝いたします」


 殿下からの言葉を聞いて、私達は宿探しを始めた。





・とある宿屋


「二泊で四人」


「あいよ、四人部屋と二人部屋、それとも共同部屋、どれがいい」


「四人部屋」


「いいのかい? 見たところ女の子も居るみたいだが」


 私の隣に立つアリスを見ながら、この宿屋の店主が問う。


「構わない」


 宿屋の店主が「そうかよ」と言い、鍵を渡してくれた。


 宿探しを初めて、すぐにとある宿屋を見つけた私達。


 代表で私とアリスが宿に入り、殿下とクロードには馬達とハヤテを見てもらっている。


そしてさっき、受付の店主に声をかけ、部屋の鍵を受け取ったところだ。


「二階に上がって、一番右奥の部屋だ」


「ありがとう」


 部屋の場所を教えてもらい、礼を言ってから一度宿の外に出る。


「四人部屋が取れました。宿の馬小屋にハヤテ達を入れて、部屋に荷物を置きましょう」


 私の言葉に三人が頷き、馬小屋へ向かう。


 馬小屋について、荷物を降ろしてから、私はハヤテの頭をなでる。


「お疲れハヤテ。ゆっくり休め」


 私が言うと、嬉しそうに私にすり寄ってくるハヤテ。


 もう可愛いなこいつ。


 しばらくして私達は荷物を持ち、指定された部屋へと向かう。


 内装はベッドが左右に二つずつ置かれたベッドに、正面の窓際に置かれた机と椅子が一つと質素な部屋だ。


 その部屋を珍しそうに見る殿下。


 殿下にとって初めて入る一般的な宿屋だ、私達からしたら普通だけど、殿下にとっては普通ではない。


 そんな殿下の様子を微笑みながら見て、荷物を置く。


「さて、食料などの補給は明日にして、今日はどうしますか坊ちゃん」


 今はまだ昼前、時間は沢山ある。


 この時間は殿下が訪れた町や村を見て回る時間だ。


 先ずは殿下の意見を聞かなければならない。


「う~ん、そうだな…。町の様子を見る為に先ずは散策をしようと思う」


 少し考えた後、殿下が言った。


 まぁ、無難に考えたら散策だよな。


「分かりました、となれば昼食は外で取りましょう。この宿屋は食堂も兼ねている様ですが、外に出るのであれば、外食の方が都合もいいですし」


 私が提案すると、目を輝かせながら頷く殿下。


 そうだ、殿下高級料理しか食べたことないんだ。


 殿下の様子からして、凄く楽しみにしているみたいだけど、口に合うかな?


 美味しいもの探さなきゃと思っていたところで、


「あの、クロ」


 と、殿下が控えめに私を呼んだ。


「何ですか坊ちゃん?」


 首をかしげながら問う。


「その、だな。実は、食べ歩きという物をしてみたいのだ」


 殿下の言葉に私達三人は目をパチパチさせた。


 そんな私達の様子を見て、恥ずかしそうに続きを言う殿下。


「以前、馬車で移動中に外を見たとき、私と同じぐらいの少年達が、何かを食べながら楽しそうに歩いているのを見た事があってな、それがとても印象に残っているのだ。それで、一度でもいいから、してみないなと…ダメか?」


「分かりました食べ歩きですね。この旅の間、沢山食べ歩きをしましょう」


 不安そうに聞いた殿下に、即答で了解した。


 だって、普段我儘を言わない殿下が、ささやかではあるが我儘を言ったのだ!


 それも自分と同じ位の少年達と同じ事をしたいという、何とも可愛らしい我儘。


 これはもう聞きますよ。


 叶えて上げますよその我儘。


「本当に良いのか!」


 嬉しそうに、目を輝かせる殿下。


「ええ、構いませんとも。早速行きましょう」


 私が改めて頷くと、喜ぶ殿下。


 その様子に二人も微笑ましく見ていて、さっそく四人で出かける準備をし、宿を出た。


 それから始まった食べ歩きは、楽しい時間だった。


 串にささった肉にかぶりつくのも、果物を切らずにそのまま食べるのも、手掴みで食べる菓子も、何もかもがはじめてな殿下。


 何もかも目を輝かせる殿下と私達も一緒に楽しむ。


 よくよく考えれば、何かと制限がかかっている普段の生活。


 何処へ行くにも護衛が付き、我儘も言えない生活だ。


 なら、せめてこの旅の間は、危険な行為以外は聞こうじゃないか。


 私達三人は楽しむ殿下を眺めながら、密かに決めた。


 遠くから私達の事を見ている視線を気にしながら。





 食べ歩きから戻った私達は、部屋に戻り、夕食の時間まで雑談をして過ごした。


 そして現在、私達は宿の食堂の席についている。


 この時間は酒場も兼ねているようで、町の男達や、ギルドの傭兵達が酒を楽しんでいた。


 流石に任務中である為、クロードは酒を頼まなかった。


 ギルドの傭兵達は、私達と同じようにこの宿を利用しているらしく、明日の予定などを話しているのが聞こえた。


 私達は運ばれてきた料理を、雑談しながら食べる。


 殿下は私達が食べるのを見て、マネをする。


 周りに溶け込む為に、私達のマネそして食べるように言っておいたからだ。


 それさえ楽しいらしく、喜んで言う事を聞いてくれた。


 もっとも、アリスは女の子として抵抗があるらしく、ある程度気にして食べている。


 夕食も楽しい時間が過ごせ、そろそろ部屋に戻ろうと席を立とうとした時だった。


「イヤッ! お客さん困ります!!」


「別にいいじゃねえか!」


 ウェイトレスの若い女性が一組の男達に絡まれていた。


 何だこのお決まりのパターン。


 見たところギルドの傭兵達で、すっかり酒に飲まれている様だった。


 人数は四人。


 その様子を他の客達は見て見ぬふり。


 他にも傭兵らしい奴らも居るが、目を背けている。


 その様子からして、腕の立つ傭兵達なのだと推測できる。


 でも、人に迷惑をかけるのはいただけない。


 酒を飲むんだったら飲まれないように気をつけろ。


 この宿の店主は、今は厨房に居る。


 仕方がない、仕事柄見過ごす訳にもいかないな。


今にも飛び出しそうな殿下をアリスに任せ、私とクロードは騒ぎの中心の元に行く。


「おい、いい加減にしろ」


 ウェイトレスの腕を掴んでいた男の腕を掴み、彼女から引き離し、私達の後ろに隠す。


「何だガキ共! 邪魔すんじゃねえ!」


 止めに入った私達を罵倒する男達。


 近くにいるだけで酒の匂いがプンプンする。


 一体どれだけの量を飲んだのだろうか。


 そんな彼らに呆れながら私達は、彼らに言う。


「邪魔をしているのはそちらだろう。彼女は今勤務中であって、あんた達の相手をする時間も無いし、相手をする必要もない」


「それにどう見ても、この人嫌がってるだろう。ここはそういう(・・・・)店じゃねぇよ。女の相手をしたいんだったら、そっちに行け」


 後ろの女性を気にしながら、私達は男達の相手をする。


 ウェイトレスはやはり怯えていた。


 そんな彼女の様子も、私達の言葉も知った事かという態度で、聞くに堪えない文句を言う傭兵の男達。


 仕方がない。


「アリス、すまないが坊ちゃんを頼む」


「畏まりました」


 殿下を押さえながら様子を伺っていたアリスに、殿下の事を頼み、私とクロードは二人ずつ腕を捻り、捕まえる。


 思わぬ握力に驚いて抵抗するが、ビクともしない。


 当然だ、仕事柄こう言った場面で容疑者を捕まえる事が多い為、どうすれば相手の自由を奪えるかなんて熟知している。


 罵声を上げる彼らの腕を掴みながら宿を出て、軍の役所へと連行する。


 突然私が現れた事に驚いた兵士達だったが、私とクロードが捕まえている酔っぱらい四人を見て状況を理解した。


 事の詳細を報告し、彼らが所属するギルドを調べ、後日抗議文を送る事になり、私とクロードは宿へと戻った。


 帰る際、やっぱり私に敬意を払う彼らに、やめろと言ったが、この様子だと無理だと諦めた。


 まぁどうせ明後日ここを発つのだ、その期間にバレることは無いだろう。


 それは良いとして。


「昼間も思ったけど、つけられてるな」


 隣のクロードが小声で言う。


 殿下の希望で食べ歩きをして、途中から感じた視線。


 うまく周囲に溶け込んでいるが、こうジロジロ見られたら一般人ならともかく、それなりの実力者ならすぐにわかる。


 この町に着くまでの道中には感じなかったから、この町に入ってからと言うのは分かるが、なぜ私達をつけているのかわからない。


 もしかしたら私達の中の誰かに対してか。


 それが殿下であったならすぐに捕まえるつもりだったが、どうやら違うようだ。


 明らかにこっち(・・・)を見ている気がする。


 すると必然的にこの場に居ないアリスも除外。


 残るは私とクロード。


 すっぽり被っているマントのお陰で、私が黒騎士である事はバレていないし、もしバレていたとしても、帝国軍団長に単独で尾行するのは命取りであると、この二年でその手の連中の間では有名になっているとクロードが言っていた。


と言う事は、


「クロードが狙いか?」


「多分な、正直なんか覚えがあるは、この視線」


 私の言葉に肯定するクロード。


 やっぱりか。


 足を洗ったと言っても、二年前まで裏の世界でアサシンをしていたクロード。


 彼が所属していたギルドは摘発し、もう存在しないが、捕まえ損ねたメンバーもいる。


 あらかたクロード自身が始末をつけたが、残りの三人が行方不明のままだ。


 おそらくその内の一人だ。


「悪いクロ、大事な任務の最中に面倒事引き寄せちまった」


「いや、私こそすまん。お前に対しての配慮が足りていなかった」


 正直殿下に内緒で方をつけるのは造作もない。


 問題なのは、クロードが責任を感じてしまっている事だ。


「クロードの過去に何があって、なぜアサシンをしていたのか知らないが、どうしようもない理由があるのは分かっている。お前を勧誘した手前、私はお前を上司として守る義務がある。だから心配するな」


 そういってクロードの肩に手を乗せる。


 その行動に「ありがとう」と返ってきた。


「それで、そうする? どこかで始末するか」


 クロードがどうするかを聞いてくる。


 彼が所属していた闇ギルドにはメンバーの抹殺命令が下りている。


 それはクロードを勧誘する前から出されていた命令で、本来私は彼を殺さなければならなかった。


 しかし、私は出来なかった。


 ゴブリンに包囲された時、彼は私に攻撃せず、私達は互いに背中を預け合った。


 だから、私は彼を殺せなかったし、殺したくなくて、帝国軍に勧誘した。


 帝国内でも存在を内密にする役職ではあるが、表の世界で堂々と生きていけるように。


 闇ギルドに戻ればお咎めがあると笑って言った姿は、とても寂しそうで、どうしても放っておけなかった。


 あっという間に意気投合して、親友になっても、時折怯えた表情をすることがある。


 もしかしたらこの生活が無くなってしまうのではないかと、怖くてたまらないと酒を飲みながら言っていた。


 ならば何があっても、守ってやる。


 この二年で人の命を奪う事なんていっぱいあった。


 今更迷いなんてない。


 こいつが過去、闇ギルドに所属していた事を知るのは私一人。


 なら、こいつの不安を取り除く手助けを出来るのは私だけだ。


 いつかはコンラットとアリスに打ち明けると言っていたが、今しばらくは私が彼を守らなくてはならない。


 上司としても親友としても。


 でも、今は


「明日の夜まで泳がせよう。以前クロードが言ってたじゃないか。残りの三人はチームを組んでいたと。なら必然的に残りの二人も居るという事だ。相手が動きだすのを待って、坊ちゃんに気が付かれないよう隠密に対処するぞ」


 隣を歩くクロードが私の言葉に頷く。


 とりあえず今日は気が付かないフリを決め込んで、宿に戻ろう。


「念のため二時間交代で外の様子を監視する。絶対一人で行動するなよ」


「分かってるよ」


 やれやれ、今夜はゆっくり眠れると思ったのに。


 だが仕方がないか。


 寧ろ相手が自分から私達の前に現れてくれたのだ、探す手間が省けたと思っておこう。


 クロードと敵の対処について話し合いながら歩いていると、気づけば宿についていた。


 宿に入ると、一番最初にウェイトレスの女性が駆け寄ってきて、私達に礼を言い、次に店主の男が頭を下げ、それを私達は「どうって事無いです」と言い、頭を上げさせようと必死になった。


 そんな私達に感極まった店主は、何かお礼をしたいと言い出し、しかし仕事柄当たり前の事をしただけなので、丁重にお断りした。


 納得できない店主に困ったが、クロードが朝食を楽しみにしていると言い、それを聞いた店主が「任せとけ!」と張り切ったので、何とか収まった。


 店主から解放され部屋に戻ったら、今度は殿下が心配そうに駆け寄ってきた。


 無事な私達を見て安心した殿下に、


「あんな連中と遭遇する事があるかもしれません。絶対私達の誰かとは一緒に居てください」


 と殿下に注意をした。


 実際目の前で起きた事だからか、この忠告も素直に頷く。


 こうして、私達の旅で最初の町で最初の一日は幕を下ろす。


 と言っても私とクロードは、殿下とアリスに気が付かれないように、交代で見張りをしていたので、終わった気が全くしなかった。


 さて、どう始末を付けてやろうか。






To be continued


今回遅くなり誠に申し訳ございません。

第41話いかがでしたでしょうか。

今回は短めになりましたが、楽しんでいただけたでしょうか。

今回も書き終えてすぐ投稿したため誤字や変な文章になっていると思いますが、後日修正をさせていただきます。

次回もお楽しみに!

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[良い点] Ha pasado mucho tiempo y aún no me olvido de esta obra, Saitou Chie es una chica muy interesan…
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