第25話 各隊と予選・3日目、魔導師隊
第25話 各隊と予選・3日目、魔導師隊
・皇族専用観戦席
昼食を終えて、現在魔導師隊の試合を観戦中。
思ってた通り、魔法を使うときに発せられる光がすごいな。
「うわぁ! 魔導師って杖以外にも、色々なマジックアイテムを使っているのね! 凄いわね兄様!!」
「ああ、杖にも色々種類があるみたいだが、魔硝石が装飾されたアクセサリーなど色々あるな」
私の隣で兄妹の会話をする皇太子と姫様。
二人の会話で分かるように、魔導師の補助用マジックアイテムには種類がある。
杖は、自分の身長より長い物から、ペンほどの短い物。
また羽団扇だったり、ブレスレット、指輪、ネックレスなどがある。
それは人によって合う物が違うのが原因のようだ。
元々魔法は魔力のある者なら、補助用マジックアイテムを使わなくても、ある程度使える。
もっとも自分が持つ属性だけで、その他は属性専用の魔法陣が必要だ。
私も闇属性しか無いから、ほかの魔法は魔法陣を使う。
召喚魔法だけは、契約すると魂に魔法陣が刻まれるから、持ち歩く必要ないけど。
お風呂とかキッチンとか明かりとか部屋の鍵とかは絶対いる。
ちなみにこの魔法陣、商店街のマジックショップで安く売っている。
日々の生活用品として、一般的に重宝しているからだ。
それと同じく青い魔硝石も安く売っている。
魔法の補助に魔導師が買う以外にも、中には魔力が微弱だったり、全く無い人間が買い求める。
この世界、すべての人間が魔力を持って生まれる訳ではない。
寧ろ微弱や全くない人間の方が圧倒的に多い。
弓兵隊は全員魔法が使えるが、それはそれぞれに合った魔法属性を調べ、弓に魔硝石と魔法陣を組み込み、底上げしている。
魔導師隊なんて生まれつき魔力が多い人間の集まりで、軍の中でもかなり少数隊だ。
地方の村や町に派遣されている者も一人か二人。
一般人にも凄腕の魔導師がいたりするが、無理に軍に入れる訳にもいかないので、常に人手不足で困っている。
特に全属性使える魔導師なんて、山や森に籠もっていたりする人間嫌いが多い。
それらが、現在魔導師達の強化に専念する原因の一つだ。
一番の原因はエイミーや副隊長以外の魔導師達が、体力無さすぎるからなんだけどな!
………。
補助用マジックアイテムの話に戻ろう。
一見形はバラバラだが共通点がある。
それは属性を表す形に加工された魔硝石が埋め込まれている事だ。
地属性なら『ダイヤ』、水属性なら『ハート』、風属性なら『スペード』、火属性なら『クラブ』、光属性なら『太陽』、闇属性なら『月』。
もう一つ特別な加工があるが、だいたいこの六つだ。
弓兵隊の弓に埋め込まれている物も同じ加工がされている。
中には青長髪イケメンのように、珍しい属性がいて、その場合二つの魔硝石が埋め込まれている。
氷なら『ハート』と『スペード』。
無属性の治癒魔法や、召還魔法は加工されていない普通の魔硝石で問題ない。
あと、魔力が強い者は二つか三つ属性を持っているから、複数埋め込むか、それぞれの石が埋め込まれたアクセサリーを複数所有する。
だから、ジャラジャラしている奴もいる。
と言っても、あくまで魔硝石は魔力増幅補助だから、魔法陣さえあれば他の属性も難しく無い魔法は問題なく誰でも使えるんだけどね。
ここまで考えて、改めて私が異世界人だと実感した。
天照様からいただいた力だが、私の魔力はちょっと変わっている。
魔力量そのものは魔王同等だが、実は使うとき属性の相性があったんだ。
多分だけど私の属性は、陰陽が影響しているんじゃないかと思う。
確か陰は闇・水・地・植物・女性・冬・静・冷・月。
陽は光・火・天・動物・男性・夏・動・熱・太陽、それぞれを象徴していた。
ハハ、まさかこんなところでオタク知識が役立つとは…。
それは置いといて、とにかくこの考えなら納得いく。
もちろん使えない訳ではないけど、火・風・光属性は非常に弱い。
風の場合、陽の『天』に当てはまると考えよう。
火は料理するのには支障がない程度、風はそよ風程度、光なんて『ライトリー』だけで、しかもギリギリ本が読める程度。
本読みたいのに、目が悪くなりそう。
だからアーメットだけ出して、魔硝石越しで読んでる。
寝間着で頭だけアーメット姿なんか、誰にも見られたくない。
それに比べて闇以外にも、水と地属性の相性は良い。
闇属性のように自分で考えた魔法が作れる訳ではないけど、魔法陣さえあれば補助無しで上級魔法も使える。
そう考えると私、闇属性と言うより陰属性なのかも。
太陽神が作った体だから陽属性になってもおかしくないけど、女だからなのか、元々陰が強いのかその辺謎だ。
もう少しこの体について調べる必要がありそうだ。
でも陰陽の考え方って中国の考えで……いや日本人は元々大陸が繋がってた時に移住してきた民族だから可笑しくはないか。
陰陽師も日本だし…。
「チエどうした? なにやら考え込んでいるようだが?」
「!? あっいえ!」
考え黙り込んでいた私を気にして、皇太子が声をかけてきた。
陛下も后様も姫も心配している様子だ。
いかんいかん、今は護衛任務中。
「申し訳ございません、少々気になった事が」
「気になる事?」
「私自身の事ですので、皆様お気になさらず」
皇族一家や周りの使用人さん達も首をかしげた。
だめだだめだ、先刻まで考えていた内容はこの世界の人間に聞かせる訳にはいかない。
明らかに一般人と違いすぎる。
ここに宰相閣下がいなくて良かった。
さらに嫌われるに決まっている。
「ねぇ、チエの属性って何なの?」
姫のマイペースな性格に助けられた。
正直、こう言う時は話を変えるのが一番だ。
「私の属性は闇ですね」
「闇かぁ~、何だかチエにピッタリね!」
「そうですか?」
姫の言葉に少し驚いた。
「ええ、だってチエって鎧や剣も黒で、髪も瞳も真っ黒だし。それに加えて黒い一角獣を従えてる。闇って怖いと思ってたけど、チエだったら凄く格好いいもの!」
そこまで言って、ニッコリと笑う姫。
そんな事言われたの初めてで、照れてしまう。
姫みたいに、良くも悪くも素直な娘に言われたらなおさら。
「ああ確かに。冷静に物事を判断し、何をすれば良いのか分析する能力に長け、何事にも的確に対処するその姿は、力溢れる『光』より、静かな『闇』が似合うかもしれない」
姫の言葉に同意した皇太子も私の評価を言う。
コンラット達に散々言われた次の日に、上司にあたる皇族にこれでもかと言うぐらい褒められる。
あ、あれ顔が熱くなってきたぞ?
可笑しいな、鎧の中はどんな時でも快適なはずなのに。
この後、皇族一家からこれでもかと言う位、褒め言葉を貰ってますます顔が熱くなる私だった。
褒められすぎるのも考え物かもしれない。
**********
・魔導師隊決勝戦グラウンド
ようやく決勝戦。
私は人前に出るのが苦手。
でも現隊長として頑張らないと!
「アル…フォン……ス、手……加減…なし」
「分かってます」
そう言って細身で深緑色のローブ姿の男、現魔導師隊副隊長、アルフォンス・バルコンは右手を前に突き出す。
腕にブレスレット、中指に指輪が一つ。
ブレスレットには『クラブ』、指輪には『ダイヤ』の魔硝石。
彼は火属性と地属性の二つ属性を持っている。
副隊長というだけあって、他の魔導師と一味違う。
油断できない。
私は始まりの合図を待った。
六芒星の魔硝石が埋め込まれた杖を構えて。
「それでは、始め!!」
審判の合図後、同時に攻撃魔法を放つ。
「「フレイム!」」
――――バンッ!
互いが放った、火属性の魔法がぶつかり大きな音が響く。
先ずは詠唱のいらない初歩で、相手の動きを探りながら動く。
アルフォンスも同じ事を考えていた。
私は彼の右手に注意しながら、動き回る。
こんな何もない場所、隠れる所なんか無い。
弓兵隊のように自分で壁を作る事も出来るけど、維持しながら魔法を使ったら、直ぐに魔力疲労になってしまう。
一般より魔力が多いと言っても制限があるんだ。
「ストーンエッジ!」
アルフォンスの『ダイヤ』が輝き、石の鋭く尖った刃が飛んでくる。
私は杖を前に突き出し
「シルフシールド」
風のシールドを作り、全ての石を受け止める。
風のシールドを解くと
――――ゴロ!ゴロ!ゴロ!
と地面に落ちた。
プロテクトをかけているから、自動的に致命傷となるところは避けられるけど、当たれば当然怪我をする。
ここまでは一撃で相手を気絶させてこれたけど、アルフォンスだけは無理みたい。
さて、どの属性魔法を使おうか。
**********
・軍人関係者専用観客席
「今までの試合を見て分かった。黒騎士が何故、体力体力言ってたのか」
俺の言葉に頷くセレスティア。
ちなみにコンラットは、試合を一応見ているんだが、未だにどこか遠くを見つめているから暫くほっとく。
「ああ、特に今の決勝戦。これまでの試合以上に白熱した対決だ」
今俺達の目の前で行われている試合。
両者とも、的にならないように動き回り、互いに攻防を繰り広げられていた。
「だが、結果は明らかだろう? 何せエイミーは数少ない全属性持ちなのだから」
さも当然と言うようにアデルバートが言った。
その言葉に
「「はぁ~」」
思わず呆れてため息を吐く俺達。
「お、おい! 何だいっ! また君達はっ!!」
声を荒げるアデスバート。
いや呆れるっつうの。
「これだからアホ剣士なんだ」
頭を押さえながら言うセレスティア。
それには全面的に同意する。
「お前なぁ、黒騎士が考えた訓練方法だから、結果を認めたくないのは分かるが、一応仮にも剣士隊長なんだから、今現在のアルフォンスの実力ぐらい分かれよ…」
「グッ…」
押し黙るアホ。
つうか最近こんなやりとり増えたな。
以前からアデルバートは自意識過剰なところや、下を見て優越感に浸るところがあって、そのせいで相手の実力を計れていない。
初めて黒騎士に会ったときもそうだ。
俺達も頭に血が上って、アデルバートの事言えなかったけどよ。
あの時ほど、冷静に実力を計る必要があったと後悔したことは無い。
「いいか、何も全属性持ちだからだと言って、必ずしも勝てるとは限らないって事だ」
「はぁ?」
俺の言葉に変な顔をするアデルバート。
此奴本当に分かってないのかよ…。
「あのなアデル、どれだけ強力な技でも当たらなければ意味をなさないだろ?」
「そんな事は分かっているよ!!」
セレスティアの言葉に声を荒げる。
此奴、セレスティアより年上だよな?
精神年齢逆じゃね?
「だから、黒騎士殿は彼らに体力をつけろと言っていたんだ」
「だから、どうしてそうなるんだい!?」
おいおい、いい加減理解しねえと、俺も怒るぞ。
「要するに、回避するための身体能力向上だといい加減気づけ!!」
あまりの理解力の無さに、とうとう怒鳴ったセレスティア。
その怒鳴り声に驚いて目を見開くアデルバート。
「つまり! 黒騎士殿は魔導師隊の回避能力の低さを見て、今までしていなかった筋肉トレーニングを取り入れ、隊の強化につとめていたんだ! それに身体を鍛える事には他にもメリットがある。黒騎士殿も言っていただろう? 精神を鍛えるにはまず肉体からと。魔法は魔力だけでは無く、精神で技を具現化するのだとエイミーから聞いた。だから、黒騎士殿の訓練内容はとても効率がよい訓練だと分かる」
セレスティアの言うとおり、魔法は魔力と属性、この二つがそろっていれば使える。
しかし難易度の高い魔法は精神力の高さも求められる。
詠唱はその精神力を高める役割を担っている。
魔力や属性はマジックアイテムで補えるが、精神は鍛えなければどうしようもない。
思い返してみれば、彼奴の訓練方法は間違いなく正しいだろうな。
・ある日の魔導師隊(鬼ごっこ)
『ハハハ!! オレオレ、しっかり動かんかい!!』
――――ギャァァァァァァァァア!!
………。
うん、色んな意味で鍛えられるな。
いやホント、あの真っ黒な鎧で剣もって追いかけられたら、俺でも精神的に何かくる。
それに訓練中の黒騎士、すげぇ楽しそうに笑ってんだよな。
時々彼奴が邪悪に見える。
何で一角獣に選ばれたんだよ。
方や放心状態のコンラット、方やアデルバートに説教するセレスティアに挟まれつつ、決勝戦を見ながら俺は不思議に思った。
**********
・決勝戦グラウンド
なんだか、軍の観客席が騒がしいみたいだけど、今はアルフォンスに集中。
徐々に魔法の威力を上げて放っているけど、動き回るアルフォンスには中々当たらない。
他の魔導師と違って、回避力が高いアルフォンス。
彼は元々田舎の農民出身だ。
魔導師としては珍しく、一般平民の出身で他とは圧倒的に体力に差があった。
他の魔導師が黒騎士さんの訓練に倒れる中、私をのぞいて唯一ついて行っている魔導師だ。
私は、隊長になる前から友達のセレスと一緒に訓練をしていて、体力に自信がある。
でも、四年前の予選試合で、彼にはかなり苦戦した。
当時、前隊長・副隊長が引退し、新たな隊長・副隊長を決める試合。
全ての軍を含めた観客達は、アルフォンスが次期隊長と思っていたに違いない。
実際私とアルフォンスは、たいして力に差がなかった。
むしろ経験上アルフォンスに分があった。
それでも勝てたのは、セレスとの訓練のおかげ。
少し回避能力が高かった事が私を勝利に導いてくれた。
もし、あの時セレスと訓練していなかったら、今の私はいない。
そして今日、さらに力を付けたアルフォンスと対峙している。
黒騎士さんとの訓練で動きが捕らえにくい。
でも、それは相手も同じように思っている筈。
私だって、日々訓練を欠かさないんだから。
「『絡み付け! シルフバインド!!』」
風をアルフォンスの周りに回転させながら動きを封じる。
無属性のバインドだと、魔力の高い魔導師には直ぐに解かれてしまう。
地属性のバインドは、地面から木の根が生えてきて相手にからみついて離さないけど、動きが速いアルフォンスには直ぐに回避される。
火や水、光や闇の属性は、攻撃には向いているけど拘束には向いていない。
彼の場合直ぐに捕らえられる、風のバインドが一番捕まえやすいと判断した。
それに風とは即ち大気。
目に見えないが世界にあふれる力。
肌で感じることが出来、イメージしやすい。
だから、相手を捕らえるバインドをいくらでも強化出来る!
必死にバインドから逃れよう、ともがくアルフォンス。
でも
「逃が…さない!」
私は、この隙を逃すまいと詠唱する。
「『世界を流れる風よ、我に仇なす、かの者を切り裂け! シルフソニック!!』」
私は中級魔法『シルフソニック』で風の刃を作りアルフォンスにぶつける。
「ガッ!」
プロテクトのおかげで殺傷能力は無いが、相手を吹き飛ばすには十分な威力。
アルフォンスは壁まで飛ばされて、背中からぶつかり気を失った。
「勝者、エイミー・アーノルド! よって魔導師戦優勝はエイミー・アーノルド!!」
――――ワァァァァァァァア!
審判の判定に会場が歓声に包まれる。
私はアルフォンスの元まで歩く。
気絶してるみたいだけど、怪我はなさそうだ。
「あ…あの、彼…怪我…は無……いと…思い……ますけど、担架…を…お願……いします」
審判に言うと直ぐに手配してくれた。
うう、詠唱の時は、はっきりしゃべる事が出来るけど、人と話す時はやっぱり途切れちゃうよ……。
それに人前ってやっぱり苦手、早く退場したいけどアルフォンスを放っておけない。
担架早く来てぇ!!
**********
・とあるスラム街
――――ガキッン!
「チッ」
「………」
チエに頼まれ、調査している最中に、不覚にも襲撃され交戦中。
アサシンみたいだが、見たこと無い相手だ。
身軽そうな、アサシンが好む袖無しの服に手っ甲。
色は俺と同じ黒で、目以外布で隠している。
俺よりも高身長で細身だが、しっかり筋肉があるところを見ると男だろう。
武器は俺と同じダガーにダート。
アサシンだったら殆ど軽さ重視でこれを使う。
しかし、此奴相当腕がたつな。
裏社会だったら、知られていてもおかしくないが、生憎此奴に心辺りがない。
こういう奴は厄介だ。
ダガーで打ち合いながら、何とか隙を探る。
一端距離を取りダートを投げるが、全てダガーで防御された。
正直早く終わらせるか、撤退したい。
ダートも残り少なくなってきた。
「…貴様、何処の手の者だ?」
不意にアサシンが話しかけてきた。
アサシンの質問に俺は黙り込む。
俺がチエ…黒騎士の部下であることは、世間一般には知られていない。
『帝国・隠密捜査官』は名前の通り隠密専門の為、知っているのはチエ・陛下・コンラットさん・アリスだけだ。
だから、任務中一言も話さない。
それは仕事だけでなく、親友を護る為でもあるからだ。
「成る程、中々優秀なアサシンのようだ」
アサシンと言う発言に、ムッとした。
チエと出会ってから、俺は一度も暗殺はしていないからだ。
主な任務は調査と、チエと一緒に行う討伐任務だ。
以前はアサシンだったが、今の仕事は全然違うと思っているから、アサシンと一緒にされたくない。
「誰の差し金か拷問して調べようと思ったが、お前は死んでも口を割らないだろう」
そう言ってダガーを構えるアサシン。
俺は残り少ないダートを三本握る。
「仕方がない、恨みは無いが死んでもらうぞ」
そう言った途端、一瞬で距離を詰められた。
しまったと思った時には、ダガーが俺の顔めがけてふるわれていた。
この距離では避けられない。
咄嗟にダートを持った右腕を顔の前に持って行く。
この状態ではこれが精一杯だ。
ダガーの衝撃に身構えた、その時だった。
――――バシッ!
何かが男の手に当たり、持っていたダガーが転がり落ちた。
何があったか分からない俺達。
「『シャドースモック!』」
そんな俺達を余所に、上から声が聞こえ、周りが見えなくなるほどの真っ黒い煙に包まれた。
――――トッ!
「こっち」
俺の後ろに着地した音がすると、その人物は俺の左手を握り駆けだした。
っておいこの声!!
「おっおまっ! 何で!?」
「シッ! とりあえず走れ!」
煙から抜け出してようやく姿が見えた。
全身が隠れるローブに黒い皮の手袋。
だが声には聞き覚えがある。
そりゃもう、聞き間違える筈が無いほどに。
暫く走って、商店街の裏までたどり着いて、ようやく止まった。
「ここまでくれば大丈夫だな、追ってくる気配もないし」
「お、お前なぁ…」
俺は少し焦っていた。
何で此奴鎧着てないんだ!!
「早く鎧着ろ! お前姿見られたらやばいだろう!?」
俺はローブの人物、チエに向かって声を抑えながら言った。
用心のため名前は呼ばない。
「大丈夫だよ。声は元の声だし、肌も見えないように大きめのローブと手袋してっから」
「確かにそうだけどよう…」
「それに前にアリスが言ってただろ? 偶にこの格好で外出てるって。正直ずっと鎧着てたら疲れるんだよ」
そこまで言われて、俺はため息と共に力を抜く。
「はぁ、まあいい。それより何でお前が彼処に?」
俺は疑問を投げかける。
明日は予選最終日だから、早めに寝るって聞いてたからだ。
「ああ~、なんか変な気配と嫌な予感がしてな、流石に鎧姿だと目立つから、下にローブ着て、城の門を出てから鎧解除してお前を捜してたんだ。見つけたと思ったら、お前が切られそうになってるし、咄嗟に石拾ってジャンプして、相手の手めがけて石投げたんだよ。後は目くらましの魔法使って、今に至るわけ」
「相変わらずめちゃくちゃだなお前」
苦笑を浮かべながら肩をすくめる。
「だけど、サンキュ助かった」
「……」
俺の礼に口角を上げるチエ。
にしても。
「変な気配がしたって言ってたけど」
「ああ、お前が相手してたアサシン、彼奴なんか持ってるみたいだった」
「彼奴が? いったい何を?」
聞くとチエは首を左右に振った。
「分からない、お前を優先してたから、そこまでは」
「そうか」
「でも一つだけ分かったことがある」
「ああ、俺もだ」
俺達は互いに頷き合う。
どうやらあのアサシン、俺達が調べている事に絡んでいるようだ。
To be continued
あとがき
第25話をお送りしました。
思ったよりに早く更新出来ました。
今回は魔導師隊の話しと言うことで、魔法に関する説明の話しも兼ねさせていただきました。
さて、長かった予選もあと五試合。
三話ぐらいで終わりそうです。
なるべく早く終わらせて、大会本番に入りたいです!
次回もどうかよろしくお願いいたします!




