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勇者より最強な黒騎士  作者: 暁 桃香
三国武道大会編
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第19話 各隊と予選・1日目、騎士隊(前編)

第19話 各隊と予選・1日目、騎士隊(前編)





・闘技場


 現在私を含めた隊長6人、副隊長5人、班長約180人が各隊ごとに隊長を先頭にして、闘技場のグラウンドに整列していた。


 グラウンドを囲んでいる観客席には、帝国の貴族や民達で埋め尽くされている。


 そして私達の前には皇族専用の観賞席があり、皇族一家が座していた。


「これより! 三国武道大会出場者予選を開催する!」




――――ワァァァァァァ!




 緑髪の宰相……レイズ閣下が整列している私達参加者の前に立ち、開催宣言をすると観客達は一斉に歓声を上げた。


 今日から4日間、代表選手を決めるための闘いの幕が上がった。









・選手控室


 今私は騎士隊に与えられた控室に、班長達約30人と自分の試合待ちをしていた。


 今日の試合スケジュールは、騎士隊と剣士隊の代表者決めの試合だ。


 何しろ予選出場者の人数が半端なく多い予選大会。


 1日に全員の試合をするのは無理な為、1日2つの隊が代表者を決め、最終日に各隊の代表者が闘い代表選手を決める。


 因みに、それぞれの予選日はくじ引きで決め、今回は1日目が騎士隊と剣士隊、2日目が弓兵隊と槍兵隊、3日目が闘士隊と魔導師隊となっている。


 今日は騎士隊が試合をし、その後に剣士隊の試合になっている。


 始まったのが10時ぐらいで、夜遅くまでかかる。


 一種のお祭りの様なもので、闘技場の周りには屋台なんかが沢山出ている為、お腹がすいたり喉が渇いても問題なく観戦できる。


 早めに予選試合が出来るのは、私自身かなり嬉しかったりする。


 早く終われば終わるほど、心おきなく他の隊の試合を観戦できるから。


 それに、あの事もあるし……。


「騎士隊長、ルーク騎士班長。試合準備をしたら入場門にお越しください」


 おっと、どうやら私の番が来たようだ。


 私は少々不格好な木刀を持って、入場門に移動するのだった。






**********






・軍人関係者専用観客席


 現在俺はアドルフ、セレスティア、ブランドン、エイミーと共に軍人関係者専用の観客席に居る。


 アリスは学校の友人達と一般観客席で観戦すると言っていたため、今日は別行動だ。


 クロードは何処に居るか分からないが、何処かで観戦している事は間違いないだろう。


「毎回の事だが、凄い賑いだな」


 隣に座っているアドルフが呟く。


「確かに。と言うか、前回よりも多くないか?」


 ブランドンが腕を組みながら言う。


 確かに今回は観客数が4年前に比べて多いらしい。


「当たり前だ! 今年は黒騎士殿が出場するのだからな!」


 当然だと言う様にセレスティアが言った。


 それに同意するように、エイミーが頷く。


「それもそうか。今じゃ黒騎士は、ドラゴンをたった一人で倒した帝国の英雄だ。英雄の勇姿を見たい奴が集まったんだろう」


 アドルフが納得する様に言った。


 その言葉を聞いて、俺は自分の事のように誇らしい気持ちになった。


 やはりあの方は凄い。


 時々呆れる事はあるが……。




――――ワァァァァァ!




 突然歓声が上がった。


 如何したのかと思ったが、入場門から入場してきた選手を見て納得した。


「お! 次は黒騎士か」


 ブランドンが隊長の姿を見て言う。


「ん? 黒騎士が持っているのは木剣か? 変わった形をしている様だが……」


 アドルフが首を傾げる。


 無理もないだろう。


 一般の木剣は十字型の物が主流だ。


 しかし、隊長のは緩いカーブがかかった長い棒。


 良く見たら『サクヤ』に似ている。


「アレは『木刀』と言うらしい。以前隊長が教えてくれてな、普段刀と言う剣を使用しているためか、十字型の木剣は使いづらいと言って、今日の為に自分で造っていたようだ」


 俺は簡単に説明をした。


「自分で? 木剣職人に言わなかったのか?」


 アドルフが質問をする。


「言ったそうなんだが、上手く伝わらなかったらしい……」


 以前、隊長が木刀を工作用ナイフで削りながら話してくれた時の事を思い出す。


『朔夜を見せながら説明したんだけど、全然想像つかなかったみたいで……結局私が自分で造る事になった』


 説明が下手だったのか? とぼやきながら肩を落として作業していた姿は、かなり落ち込んでいたようだ。


「しかし、ゴツゴツしているな」


 ブランドンが木刀を見ながら呟く。


「ブランドン、それ隊長には言うなよ。本人はそれをかなり気にしていたんだ」


 出来上がった木刀を見て溜息をついていた姿を思い出す。


「気にしてる? 細かい所を気にしない様な性格してるのにか?」




――――ベシッ!




 アドルフの言葉を聞いて、シバいた。


「何すんだよ……」


 後頭部をさすりながら、恨みがましい視線を送ってくるアドルフ。


「あの人は結構デリケートな所があるんだよ」


 例えば『自分は普通だ』と隊長が言っているのに対して、周りがそう思っていないと俺が言ったとき、微妙に気にしていた。


 他にもこの半年で色々な所を見てきて、変な所を気にする事が分かった。


 アリス曰く、


『性別を隠していても、やはり女性なのですね』


 と、微笑みながら言っていた。


 どうやら、男の俺には理解するのが難しいようだ。


 そうアリスに言ったら、


『……兄上は乙女心が分かっていません』


 半目で言われた。


 何だったんだ?


「「(クスクス)」」


 何故か、セレスティアとエイミーが笑っていた。


「か…かわ…いい」


「ホントに」


「「「は?」」」


 女性2人が言っている事が分からない俺達は、首をかしげるのだった。





**********





・とある一般観客席


「黒騎士様です」


「ああ、やっとアイツか」


 俺クロードは、偶然居合わせた使用人姿のアリスと、学校のダチと言う3人と一緒に観戦している。


 今日は仕事が休みと言う事で、俺は私服をきている。


 今日の俺の服装は、クリーム色のズボンに黒い皮のブーツ、黒いシャツに焦げ茶色のジャケットを着ている。


 以前俺の私服を見たチエが、


『お前、私服は普通だな』


 と言われた事がある。


 俺だって私服ぐらいは普通の格好するっての。


 そう言うアイツの私服何て男物じゃねぇか。


 と言いたい所だが、チエは私服で外に出られないんだよな。


 正体隠す以前の問題で、アイツの髪と目の色が真っ黒のせいで、隠さないといけないらしいし。


 つか、アイツってホント何処から来たんだよ。


 あんな色した髪と目の人間、噂でも聞いたことねぇし。


 何処かに隠れ住んでいた民族かなにかか?


「クロードさん? 如何かされましたか?」


 考え事に夢中になっていた俺に、アリスが話しかけてきた。


 駄目だ駄目だ、せっかくアリスと仕事以外で一緒に居られるのに、余計な事考えるな俺!


 大体、チエの事は考えるだけ無駄だ。


「いや、悪い。何でも無いんだ」


「? そうですか?」


 俺は誤魔化すように笑って答える。


「それより、アイツの相手可哀想だ。一戦目でアイツと当たるとか」


 誤魔化し序に話題を振る。


 まぁ、本心から出た言葉だ。


「確かに。たとえ班長と言えど、黒騎士様の足元にも及びませんね」


 さらりと、言ったアリス。


 ホントアリスって、主人第一に考える侍女だよな。


 正直チエが羨ましい。


「あの~……」


 俺とアリスの話に、アリスのダチの一人、青いショートヘアーの眼鏡をかけた少女が声をかけてきた。


 序にアリス達の服装は、アリスが城の侍女が着る使用人服、後の3人は使用人学校の制服である茶色のワンピースの上にフリルエプロンを着けている。


 アリス達の様な、使用人もしくは使用人学生はお洒落として、使用人用の服を普段から着ているらしい。


 中でもアリスが着ている黒いワンピースに白いフリルエプロンは、使用人達の間ではブランド物らしい。


 確かに可愛いが。


 とまぁ、それは置いといて。


「ん? 如何かしたの、アーシェ?」


 青髪ショートの少女はアーシェと言うらしい。


 らしいと言うのは、互いに挨拶をしただけで、名前を教えていないからだ。


「先刻から気になっていたのだけれど、そちらの殿方は黒騎士様とどう言った御関係で? 失礼ですが、貴族の方でも無いようですし、軍の方とも違うようですが? 」


 アーシェの言葉に同意の様で、他の二人も頷く。


「そうよ! それにアリスともかなり親しいみたいだし!」


「そっちもどう言う事?見た所教養も碌に受けていなさそうだけど?」


 赤い肩ぐらいまでの長さの髪を黒いカチューシャで止めた少女の言葉の後に、緑色の長い髪を後頭部でお団子にしている少女が言った。


 この二人は気が強そうだ。


 正直俺の苦手なタイプだな。


 俺お淑やかな女が好きだし、アリスは完璧だ。


 たまに怖くなるけど……。


「アリス、こいつ等ってお前の学校の友達か?」


 俺が何となく尋ねてみた。


 すると、赤毛カチューシャの女が、


「『こいつ等』ですって! レディに向かって何よその言い方!?」


 何故か真っ赤な顔して、キレだした。


 思った通り気が強い。


「まぁまぁ、カレン落ち着いて。クロードさんこの子は友人で使用人学校のクラスメートのカレンです」


 赤毛カチューシャ……カレンを苦笑を浮かべ落ち着かせようとしながら、ダチの紹介を始めたアリス。


「それから此方の青い髪の娘がアーシェ、緑髪の娘がローナです。二人も友人でクラスメートです」


「初めまして、アーシェです」


「ローナよ」


 3人の紹介をされて思った。


 なんか、性格が全然違う。


 アーシェは静かな雰囲気の年相応な感じの少女で、アリスのダチって言うのは理解できる。


 だが後の2人は何となくませていると言うか、気が強いと言うか、アリスとアーシェのダチって言うのを疑いたくなる。


 ローナは思いっきり俺を見下したような態度で見てくるし、カレンは直ぐにキレるタイプの女だ。


 マジで不思議な組み合わせだなおい。


「3人とも、此方はクロードさん。黒騎士様とは御友人で、黒騎士様の紹介で知り合いました」


 アリスが3人に俺を紹介する。


 嘘は言っていない。


 事実俺とチエは仕事仲間であると同時に、ダチだ。


 そのチエを通して知り合ったのが、アリスとコンラットさんだから。


「ご、御友人? この野蛮人が?」


 カレンが顔を引きつらせて俺を指差しながら呟く。


 失礼だなこの女。


 他の二人も目を見開いて驚いている。


「んだよ……。俺がアイツのダチで悪かったな」


 俺は軽く睨みながら言い返した。


 予想していた反応だが、なんか腹が立つ。


「ア、アリス? いくらなんでも冗談ですよね?」


 今度はローナが震えながらアリスに問う。


 本当に失礼だなこのアマ2人!


「ちょっと、二人とも……」


 そんな中アーシェが2人を抑えようとしていた。


 コイツは常識人だ。


「いえ、冗談ではなく本当です」


 そんな彼女等に笑顔で言葉を返すアリス。


 お前スゲーよ、こんな気の強い女2人に何でも無いように振舞えて。


 普通の女は気が引けるぞ。


「そんな事より、静かにしてくれねぇか?アイツの試合は確り見ておきたいんだよ」


 俺は五月蠅い女2人に声のトーンを落して言う。


 それに一瞬ビクついたアリス以外の3人。


 気の強い女2人は何か言いたげだったが、こいつ等もチエの試合は見たいようだ。


 それを確認し、俺はチエに目を向ける。


 グラウンドの真ん中辺りで木刀って奴を軽く振りながら、始まるのを待っている。


 ハッキリ言って、結果が如何なるのかは予想出来る。


 絶対アイツが代表になると断言できる。


 だから今回は応援しに来た訳ではなく、チエの戦闘を確り見ておくためだ。


 俺とチエだけの秘密だが、俺達は一度殺し合いをした。


 アイツとダチになった後何て、訓練の時は俺が相手をしている。


 いや、そうじゃないな。


 チエには俺、俺にはチエしか訓練相手が居ないんだ。


 主にチエは教導官を務めているため、自分自身の訓練時間は日が落ちた後しかない。


 当然その時間はコンラットさんを始め他の軍の人間も訓練相手をしてもらうのは難しい。


 そして俺は、極秘任務専門『帝国・隠密捜査官』であるため、一応軍に所属はしているが、俺の存在を知っているのは、チエと陛下、コンラットさんとアリスだけだ。


 そんな俺が一般訓練に参加できる訳なく、必然的に互いしか訓練相手が居なくなってしまったのだ。


 だからアイツの戦闘スタイルは俺が一番知っている。


 しかしだからこそ、俺はチエが人との1対1の戦闘は見たことが無かった。


 何度か極秘任務で、チエと2人で盗賊討伐と言う長期任務に出た事がある。


 その時は、表向きチエだけで魔物討伐に出た事になっている。


 盗賊討伐だから当然、複数の人間達相手の戦闘だったから、1対1の闘いを拝めなかった。


 よって、今回のこの予選大会は俺にとって、絶対に見なければならない貴重な物だった。


 悔しいが俺はアイツに勝った事が無い。


 と言うか、アイツの本気を見たことが無い。


 つまり俺は、アイツの戦闘を一番知っているが、アイツの本当の力を知らないんだ。


 盗賊討伐の時も、チエに助けられてばっかりだった。


 冗談じゃねぇ!


 こんなんでアイツのダチでいられるか!


 アイツはそんな事気にしないだろうけど、俺はアイツと対等でいたい。


 初めての任務の時、アイツの不安で押しつぶされそうになった姿を思い出す。


 部下達の前では必死に見せまいとして、一人で項垂れていたあの姿。


 正直見てられなくて声をかけた。


 つっても、直ぐに元に戻ったけど。


 まぁ、そんな所を見たせいか、俺には分かる。


 アイツはスゲェ奴だって。


 それはこの都に住んでいる人間全員が理解している事だろうけど、全員が思っている凄さとは違う物を俺は知った。


 コンラットさんやアリスも都に居る人間より理解しているだろうが、それ以上に知っていると自慢じゃないがそれは確信している。


 そう思うからこそ、俺はアイツに近づきたい。


 アイツと背中を預け合う事が出来る様になりたい。


 コンラットさんも同じ事を思っているかもしれないが、あの人は部下としての思いだ。


 似ているようで違う想い。


 それが俺の今の目標。


 そして、どうしようもないアサシンだった俺に『友達』って言葉をくれ、本当の居場所をくれた親友ダチへの恩返しだ。





**********





 現在、私はグラウンドで不格好な木刀を持ち、対戦相手であるルークと向き合っている。


 このルークと言う青年、髪は濃い金のウルフヘアー、身長は大体180クアメイト位。


 イケメンとまではいかないが、凛々しい顔立ちで普通にカッコイイと思える。


 鎧はプレートメイルを装着していて、兜はしていない。


 持っている武器は十字型の木剣だ。


 この予選大会、一応死者が出ないように、本物の刃物の使用は禁じられている。


 魔導師に関しては、リミッター魔具と呼ばれる腕輪が支給される事になっている。


 まぁ一応お祭りだし、なおかつ仲間同士の殺し合いなんかしても誰も楽しく無い。


 その為に今日までに大急ぎで木刀を作ったのだ。


 出来栄えはかなり不満が残るけど、工作苦手だから仕方が無い……。


「隊長! よろしくお願いいたします!!」


 不格好な木刀を軽く振りながら、不満だと考えていると、ルークが如何にも『緊張しています』と言った感じで頭を下げてきた。


 おいおい、今から試合だって言うのに大丈夫か?


「こらこら、試合前からそんなに緊張していたらちゃんと戦えないぞ?」


 リラックスするように促すが、


「すっすいません! 隊長!」


 ………。


 駄目だ、完全に上がってる。


 仕方が無い、本当は普通の勝負がしたかったけど、今後の彼の為に予定変更!


 班長たるもの、時として私達隊長やコンラット達副隊長に代わって現場の指揮を取る事はしょっちゅうある。


 と言うか、任務で隊長や副隊長が指揮を執るのはかなり危険な任務だけで、ゴブリン位の小級モンスターの討伐任務は彼等班長がリーダーを務めるのが普通だ。


 それなのに、いくら隊長相手とはいえ真剣勝負で緊張なんかしてたら、討伐任務の時部下に的確な指示が出せるのかと不安に思えてくる。


 まぁ、それはルークがこの間班長になったばかりだからかもしれない。


 剣の腕前はかなりのもので、班長として申し分ないんだけど、人の上に立つと言う経験が無いのも原因かもしれない。


 でもそこは、経験あるのみ!


 今は、どんな相手でも緊張しないようにしてやるのが先決だ。


「それでは両者! 構えてください!」


 審判のおじさんに言われ、ルークは剣を構える。


 構え方は右手に剣を持ち、体勢を低くすると言う感じだ。


 彼は普段ロングの片手剣を使う。


 私達騎士は騎馬することが多い為、片手で武器を持つ者が多い。


 私とコンラットも騎馬する時は聞き手に剣を持ち、手綱を握っている。


 中にはランスを使う騎士もいるけど、ほとんどは剣を使っている騎士が多いかな。


 そんな事を考えながら、私は木刀を強く握りしめて。


 と言っても、両手は下におろし、右手に朔夜を握って、はたから見ればただ立っているようにしか見えないのだけど。


「あ、あの……」


 審判が構えない私に困惑しながら声をかけてくる。


「審判号令を」


 そんな審判に一言言い放つ。


 そして同じく困惑しているルークを見て言った。


「ルーク、号令と同時に打ち込んでこい」


「え? でっでも」


 私の言葉でますます、困惑するルーク。


「良いから……全力で来い」


 最後の方は声のトーンを落として言った。


 それに気が付いたのか、困惑した顔から引き締めた顔付きに変わった。


 戦闘態勢に切り替わったらしい。


 うん、それでいいい。


「……それでは……始め!!」


 審判が号令を出した。


 ルークは言われた通りに、地を蹴って私に切りかかってきた。


 剣を上から振りかざし、私に攻撃をしかけてくる。


 そこらの軍人やギルドに所属している人間なら、避ける事は難しいと思われるその動きとスピード。


 だが私は、後ろに引くことで回避する。


 それは予想の範囲内だったのか、直ぐに次々と切りかかってくるルーク。


 上から、下から、右から、左から、色んな斬撃を私に当てようとしかけてくる。


 それを私は全てかわす。


 なんだ、ちゃんと戦闘出来るじゃないか。


 これなら大丈夫だな。


「それじゃ、そろそろきめるか」


「!?」


 一言いってから、強めにジャンプして少し後ろに距離を取った私。


 攻撃をかわしながら、一瞬で距離を開けた私に驚いたのかルークに隙が出来る。


「おいおい、こんなんで驚いて隙を作ったら駄目だろ!」


「!? しまっ!」


 隙を作った事に駄目だししながら、一気に前へと踏み込む。


 そして


「………参りました」


 ルークの喉元ぎりぎりの所に剣先を寸止めした私に、降参の声を上げる。


「しょ勝者! 黒騎士!!」




――――ワァァァァァァ!!




 驚きを隠せず戸惑いながらも、審判は勝者の名前を大声で叫ぶ。


 それに観客は盛大な歓声を上げた。


 私は木刀を下し、


「有難うございました」


 と、ルークに軽く頭を下げた。


「あ、有難うございました!」


 それに習ってか、ルークも頭を下げる。


 私の令が45度くらいで、ルークは角度は90度くらいまで頭を下げた。


 日本では90度まで頭を下げるのは謝罪をする時なんだけど、此処は日本じゃないから気にしないでおこ。


 文化の違いというもので、この国では令をする時の頭の角度何て決まっていない。


「もう少し冷静に判断できるようになると良い」


「! はい!!」


 そう言ってグラウンドから退場するため歩き出した私の背中に返事をするルーク。


 その声を聞きながら、グラウンドを後にした私は、兜のせいで外からは分からないだろうけど、安堵の表情を浮かべていた。


 クロードと訓練しておいて良かった!


 天照様から貰ったこの身体になった時から、相手の動きが遅く見えるようになったけど、戦闘何てした事無かった私は、いくら身体能力が向上したからと言って、直ぐに的確な動きが出来る訳では無かった。


 人間より体力や筋力が上になったからと言って、何でもできる訳ではない。


 皆には秘密だけど最初のころは、何となく気配を読んだり、行動を見たりして必死に逃げていただけだった。


 元々地球での経験上、逃げるのと相手の隙を見つけるのは得意だったから、何とか誤魔化せたけど。


 まさか勇介に巻き込まれたり、学校での日常がこんな所で役立つとは思わなかった。


 後はアニメや漫画やゲームの戦闘を思い出して、形だけを作っていたのだ。


 それらを戦闘に組み入れ、任務や訓練で身体を慣らしていき、ちゃんとしたスタイルに仕上げられたのはクロードのおかげだな。


 実は訓練の時、貰った知識を最大限利用して、アドバイスする事に時間を費やしているせいで、自分自身の訓練を行う時間が取れなかった私に、夜誰も居ない時間に訓練を持ちかけてくれたのはクロードだった。


 これはもう願ったり叶ったりの申し出だったから直ぐに了承した。


 正直時間の事もそうだけど、軍の人間と訓練するのは遠慮したかった。


 別に、嫌いとか見下しているとかでは断じてない。


 ただ以前クロードと戦闘をして、人間との戦闘がどう言うものかを理解してから、軍の人間達のレベルだと不安になってしまっていたからだ。


 決して彼等が弱いと言う事ではない。


 隊長、副隊長との実力差はかなり開いているが、それでも一般ギルドに所属している人間よりは実力はあった。


 それでもクロードと比べてしまっては、実力差は一目瞭然。


 と言うか、クロードは隊長達と互角に渡り合えるだけの実力がある。


 いや、確実に上だ。


 流石にコンラットには劣るけど、運が良ければ引き分けに持ち込むぐらいは出来ると考えられる。


 それは一度、本気で殺し合った事のある私だから分かる事だった。


 そんな彼だからこそ、互いの為に一緒に訓練しようと思えたのだ。


 実際彼と訓練するようになってから、段々身体が馴染んでいくのが分かった。


 彼の最大の武器はスピードと身軽さ。


 アクロバティックな動きと、時々見失ってしまうあの速さは、時にヒヤッとくる事がある。


 訓練の時は本物の武器を使用せず、クロードはナイフ位の十字型木剣、私は朔夜の鞘を使っていた。


 因みに、周りに結界を張って、外側から見えないようにし、鎧は外して私服で訓練を行っている。


 何時も鎧着てたら、鎧の防御力に頼ってしまうし、それだと訓練にならないからだ。


 だから、たとえ木と言えど的確に急所を狙ってくるクロードには時々恐怖を感じる。


 そして勉強になる。


 コレが経験豊富な人間との闘いなのだと。


 クロード自信は気付いていないかもしれないけど、模擬戦では一応私が勝っているが、何時も必死になっているのは私の方だ。


 彼は何時も悔しそうにしているけど、悔しいのは私も同じ。


 彼には何時も助けられてばかりで、メンタル的にも彼の方が強い。


 コンラットとアリスも心の支えになってくれているが、やはり上司と部下と言う関係上、私は頼られる方の人間だ。


 クロードが居なかったら、自分の地位に何時押しつぶされてもおかしくない。


 そんな私と『友達』と言う形で頼れる存在なのはクロードだけだ。


 だから彼とは対等でいたい。


 今の私は偽物の強さかもしれないけど、経験を積んで、彼と背中を合わせられるようになりたい。


 それが今の目標で、初めて『親友』と呼べる存在に私が出来る精一杯の事だから。


 私は控室に戻りながら、持っている木刀は強く握りしめた。







To be continued

あとがき


皆様、大変お待たせしてしまい申し訳ございませんでした!


第19話ようやく投稿できました!


今回は予選一日目の騎士隊の代表者決め前半のお話で、智慧とクロードの互いの『親友』に対しての思いを書かせていただきました。


本当は騎士隊の予選を最後にしようか悩んだのですが、この話を呼んで貰って分かると思いますが、『三国武道大会編』は智慧とクロードの友情をメインにした話しですので、今後の展開上、騎士隊を早めに終わらせる事にしました。


夜中には投稿したかったのですが、咳が止まらなくなったので、遅くなってしまいました。


誤字が多いと思いますが、楽しめていただけましたでしょうか?


次の投稿はもっと早く乗せたいと思いますので、今後もよろしくお願いいたします。

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