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勇者より最強な黒騎士  作者: 暁 桃香
三国武道大会編
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第18話 日常と面倒

第18話 日常と面倒




 とある世界の帝国。


 この世界、『エルドア』に来て半年がたった。


 現在の季節は秋。


 この世界に来た春とは風景が変わり、木々が紅葉こうようしている。


 秋と言えば『食欲の秋』とか『読書の秋』とか『昼寝の秋』とか言う言葉が有る。


 そして現在の私は。


「ハハハッ! ほらほら逃げてるだけじゃダメだろ~!」




――――ギャァァァァァア!




 魔導師隊の連中を、朔夜を持って追い回していた。


 『スポーツの秋』真っ最中。


 鬼ごっこを元に考えた訓練を行っている。


 内容は、まず私が鬼の役をし、魔導師隊を1時間追い回す。


 そして捕まった奴は容赦なく、朔夜の峰打ちで気絶させ、起きたら地獄の筋トレが待っている。


 武器の使用は勿論有り!


 ただし攻撃させる暇なんか無いけどね。


「おらおら! 逃げないとアイツ等みたいになるぞ!」


 私は追い回しながら、捕まえた奴等を指して言った。


 今回の訓練を受けているのは50人。


 その内30人位の魔導師が、気絶した状態で積み上がっている。


 それを見た残りの魔導師隊が、真っ青な顔で逃る。


 やべ、楽しいわコレ!


 残り時間15分。


 さて、どれくらい生き残れるかな。





・自室兼仕事部屋


 午前の訓練が終わると何時も通り、自室にてコンラットと書類整理。


 因みに何時も通り、アーメットは外している。


 相変わらずとんでもない量の書類にゲンナリするが、やらないとしょうがない。


「あ~、首痛い」


 首を回すとゴキゴキと凄い音が鳴った。


「隊長、もう少し頑張りましょう」


 コンラットが書類に目を通しながら言った。


 ん~、仕事をする男の人ってカッコイイな。


 イケメンで真面目で気配りが出来て周りを見る、まさに理想の男性。


 アリスや商店街の人達の話に聞く元不良とはとても思えない。


「何ですか?」


 コンラットを見ていると、視線に気が付いて聞いてきた。


「ああごめん。いやさぁ、アリスやバイロンさん達から聞いた昔のコンラットと、今目の前に居るコンラットが全然当てはまらなくってさ」


「……一体何を聞いたんですか」


 ジト目で私を見ながら聞くコンラット。


「たしか、不良チームのリーダーやってたとか、島争いやってたとか、女の人を見境な「もう良いです!!」……え? マジでやってたの?」


 私が聞いた話を上げて行くと、途中で焦ったように顔を真っ赤にして遮るコンラット。


 その様子からして、本当にやっていたのだと分かり驚く。


 このネタでおちょくろうかと思ったけど、コンラットの表情からしてそれが出来そうになかった。


 真っ赤な恥ずかしそうな顔で、世界の終わりだと言わんばかりの絶望しているのが分かる表情だった。


 そんな表情するくらい、知られたくなかったのか?


「ま、まぁ人間誰しも、ヤンチャな時代が有ってもおかしくないよ!」


 そんな事が有っても別に良いだろう。


 そう言えば、高校時代の兄さんもこんなんだったな。


 家に遊びに来るお兄さん達は、柄が悪そうだったし(でも皆さん優しかった)。


 彼女も1カ月ごとに代わってたりして。


 女関係以外は、良い兄だ。


 きっとコンラットもこんな感じだったに違いない。


「コンラット、私の兄もそんな感じだった事がある! 何もアンタだけがそうだった訳じゃないから!」


「兄?」


 兄と言う言葉に、キョトンとした表情になったコンラット。


 そう言えば話した事無かったな。


「兄上殿が居らっしゃるのですか?」


「ああ、2歳上のな。兄さんもちょっと前まで、まさに不良だったんだ。でも良い兄さんだよ。たまに外で見かける時、隣の女の人が変わっているのは如何かと思ったけど……」


「………(隊長の兄とは思えない)」


 何故かポカンとした表情で黙るコンラット。


 大方私から兄さんの性格が考えられなかったんだろう。


 結構似てる所、有るんだけどな。


「今、その方は」


「さぁ。兄さんもだけど、お母さんとお父さんも如何してるのやら」


「連絡を取っていないのですか?」


 コンラットが驚いた表情で聞いてきた。


 多分、私の事だから連絡を取っていると思っていたのだろう。


 でも異世界の、それも違う時間に居る人に連絡何て取れる訳が無い。


 天照様の話を聞く限り、二度と会えないだろう。


「……連絡、取れる様な所じゃないんだ。それに、もう二度と会えないよ」


「………」


 笑顔を作ってコンラットに言うと、黙ってしまった。


 私はコンラットから視線を逸らして、窓の外を見る。


 外は青空が広がっていた。


 地球と同じ色の空が。


 私は寂しい気持ちを感じながらその空を暫く見ていた。





**********





 俺は隊長の寂しそうな表情を初めて見た。


 連絡を取るどころか、二度と帰れない場所とは何処だろう。


 隊長と同じ色の髪や目をした人間が住んでいる場所。


 きっと海を越えた先の、誰も行った事のない所だ。


 そこには隊長の様なつわものが多いのだろうか。


 あの呪い竜『ファフニール』を倒すほどだ。


 隊長の年齢が17歳だから、兄上殿はもっと凄いのかも知れない。


 しかし、何故隊長はこの帝国に来たのだろうか。


 それも自分専用に作られたと言う、武器や防具を携えて。


 もしかしたら、何らかの目的が有るのだろうか。


 半年前の事件で分かった、魔族の怪しい動きが関係しているのか?


 そうだとしたら、隊長はこの異変を解決するために選ばれたのかもしれない。


 黒い一角獣ユニコーンに選ばれるほどだ。


 きっと国でも一、二を争う戦士だったのだろう。


 あの手も、剣の鍛練の末に皮膚が硬くなり、丈夫になったのだと思う。


 俺は書類を整理しながら、そう思っていた。





**********





 アレ?


 なんか今コンラット笑ってなかった?


 まさかと思うけど変な誤解されてるんじゃ……。


 例えば手とか。


 この手は単に親に連れて行かれた、登山と言う名の『本格サバイバル』のせいなんだけど。


 去年の夏休みは、大荷物とサバイバルナイフ持たされて、一人で山登りさせられたっけ。


 熊を見かけた時は、心臓が止まるかと思った。


 何で兄さんは楽しそうだったんだろう?


 理解不能だ。


 とまぁ、今は書類整理しないと。


 私は止まっていた手を再び動かすことにした。






「ふぅ~! 終わった!!」


「此方も終わりました」


 日が大分傾いてきた頃、私達は今日の分の書類を全て片付けた。


 部下の訓練するより、仕事した達成感が有るよ。


「お疲れ様です、黒騎士様、兄上」


 そう言いながら何時ものコーヒーを持って、奥からアリスが出てきた。


 先刻まで奥の掃除をしてもらっていたのだ。


「有難うアリス。最近日が沈むのが早くなってきたな」


 私はコーヒーを受け取りながら言った。


「そうですね、だいぶ涼しくなってきましたし、朝と夜は肌寒く感じますね」


 同意するようにアリスが言った。


 私はコーヒーをすする。


 うん、今日も美味しい。


 このコーヒーは私の癒しだ。


「ん?」


「どうなさいました、黒騎士様?」


 ベランダから知った気配を感じ取り、そんな様子の私にアリスが首を傾げる。


 コンラットを見ると、彼も気が付いていないようだ。


 彼が気が付かないとは、アイツも伊達じゃないな。


 思わずニヤけてしまいながら、アーメットを被り、窓まで移動する。




――――ガチャ




「町の様子はどうだった? クロード」


 窓を開けてベランダに出ると同時に、気配の主、クロードに声をかける。


「今のところは問題ない。お前が『ファフニール』を退治したのを見て、裏町の連中も大人しくしてるよ」


 ベランダの陰に隠れながら、壁に背を預けて腕を組み立っている。


 今の時間、日の角度でちょうど陰になる所だ。


 私はクロードを室内に入れる。


 此処は4階でそうそう人に見られる事は無いが、用心にこした事は無い。


「ああ、お前だったかクロード」


「こんにちは、コンラットさん」


 挨拶を交わすコンラットとクロード。


 言いながら鼻まで覆っていた黒いスカーフを、首まで下ろすクロード。


 この半年で随分仲良くなった2人。


 仕事仲間と言うより、兄弟の様に見える。


「あらクロードさん、こんにちは」


 アリスがニッコリ笑いながら言う。


 それに頬を染めながら、


「よ、よう! アリス」


 返事をするクロード。


 いつ見ても初々しいなぁ。


 私はアーメットを外し、生温かい視線を送る。


「……何だよその目」


 視線に気が付いたクロード。


「別に~」


 ニヤニヤしながら視線をそらす。


「……そんなんだから彼氏出来ねぇんだよ」




――――ピクッ




 ぼそりと呟かれたクロードの言葉に、頬が引きつる。


「今何つったぁ?」


 引くつかせながら、クロードに問いかける。


「言ったままだが」


 シレッと言うクロード。


 よし、コイツ殴ってもいいよな?


「ああ~、そう言えば隊長。お腰のベルトは何時から?」


 まさにクロードに殴りかかろうとした時、不意にコンラットが声をかけた。


 その言葉に3人の視線が朔夜を挿しているベルトを注目する。


 コンラットめ、喧嘩になる前に話を変えるとは。


「ああコレ? 1週間前にバイロンさんから送られたんだ」


「バイロンさんからですか?」


 アリスが首を傾げながら聞く。


 2人も似た様な反応だ。


「うん、ようやく私に合ったベルトが出来たからって。『ファフニール』の皮で作ったんだと」


 1週間前、一人で仕事をしていた時に、使用人さんの一人が届けてくれたのだ。


 受け取ったのは長細い箱。


 同封されていた手紙には、商店街の人達からの感謝と、納得がいくベルトが出来るまで半年もかかってしまったと書いてあった。


 箱に入っていたのは、私の鎧に合ったデザインで、ちょうど左腰に当たる部分には、朔夜を挿す筒が有り焦げ茶色のベルトだった。


 さっそくベルトを着け、朔夜を筒の部分に挿して鏡の前に立つと、鎧と凄く似合っていた。


 『ファフニール』の皮を使っているだけあって、頑丈そうだ。


 その時の事を話すと、3人は納得した表情を浮かべた。


「成程、そう言う事ですか」


 コンラットが頷きながら言った。


「それにしても、前は如何やってたんだよ? 鎧にくっ付いていたみたいだったぜ?」


 それに二人も訝しげな表情をする。


 確かに普通剣が、鎧にくっ付いていたら可笑しいよな。


「ああ~、何て言うか。『みたい』じゃなくて本当にくっ付いてたんだよ」


「「「はぁ?」」」


 声をそろえて首を傾げる3人。


 無理無いよな。


「前にも言ったけど、朔夜は私専用の武器で、そのせいか鎧じゃなくても私にくっ付くんだ」


 ポカーンとした表情で話しを聞く3人。


 朔夜は鎧を外した状態でも、私にくっ付く。


 最近分かり出した事だが、この刀には意志が有る。


 意志疎通ができる訳ではないが、聖剣の気と言うやつだろうか。


 そんなものが伝わってくる。


 このベルトが、相当気に入っているのが分かるくらいに。


「前から思ってたけど、まさかそれま「魔剣じゃないから心配すんな」……そうか」


 クロードが引きつらせながら言う言葉を遮って言うと、あからさまに安心した顔をする。


 確かに見た目は魔剣とか妖刀だと私も思う。


 だけど作ったのは神様で、纏っている気はまぎれもない神聖なもの。


 見た目とのギャップが激しいな。


「弱点をついたとは言え、あの『ファフニール』を一撃で切り裂いた剣。唯の剣ではなさそうですが」


 うっ、コンラット鋭いな。


 確かに、弱点とは言えドラゴンを切る事が出来る剣何て、魔剣とか聖剣くらいだし。


「まぁ、魔剣でない事は保証する! それより後1カ月だな! 三国武道大会!」


 何とか話をそらそうと、1カ月後に帝国で開催される武道大会の話題を持ちかける。


「そう言えば、今年は誰が出場するか決まったのか?」


「いや、1週間後に代表選抜戦をする事になっている」


 クロードの言葉にコンラットが返した。


 話の内容が変わって良かった。


 三国武道大会とは4年に一度、三国の何処かで開催される、地球で言うとオリンピックみたいなものだ。


 今年は帝国の都にある、闘技場で開催される。


 闘技場は城の敷地内にあり、この時は一般人も敷地内に入る事を許されている。


 そのため城や町の警備を強化する必要があるため、隊長、副隊長は大忙しだ。


 商店街では屋台なども出るため、実はちょっと楽しみだったりする。


「4年前は、コンラットが代表で出たんだったよな」


 4年前は聖国で行われ、コンラットは優勝したと聞いた。


 コンラットがマントを許されているのは、これが理由だ。


 この世界では5百年以上前までは三国が戦争していた歴史があったが、以降はこの大会で争っている。


 エルドアでの軍は、主に魔物退治や、魔族がらみの任務、事件解決と言った、分かりやすく言えば警察の様なものだ。


 軍にはそれぞれの隊長、副隊長の下に班長と言う者もいて、幾つかのグループに分かれている。


 班長は1つの隊に役30人位いて、それぞれの班に分かれている。


 任務時には各隊の班長が1人選出され、それから最も適した人材を隊長、副隊長と一緒に選び、任務に向かうと言うものだ。


 ごく稀に隊長、副隊長も同行する時もあるが、大抵はコレで十分だ。


「しかし、今年は隊長が出るでしょうね」


「え? 私?」


 急に私の名前が出た事に驚いた。


 いかん、考え事して話を聞いていなかった。


「ええ、だってドラゴンを倒す程の実力をお持ちなのです。まさに『最強』と言う言葉が相応しい、隊長が勝ち進むのは予想できますよ」


 すがすがしい笑みを浮かべながらコンラットが言った。


 これを勇介がやったら腹たつけど、彼がやったら全然違う。


 年上の魅力ってやつか?


「俺は前回の優勝者って事で、出場決定しています。隊長と手合わせ出来るのが今から楽しみです」


 コンラットが、うきうきしているのが見て分かった。


 代表選抜戦は軍の隊長、副隊長、班長が勝ち抜き戦を行う。


 実は1カ月前にも各班で勝ち抜き戦をやっており、勝ち残った者が班長である。


 そして1週間後に行われる代表選抜戦で各隊の現隊長、副隊長、班長が勝ち抜き戦を行い、各隊の1位が隊長、2位が副隊長と言う風に隊長、副隊長を決めているのだ。


 まさにこの世界は実力主義である。


 そして各隊の代表、隊長達が勝ち抜き戦を行い、代表を決める。


 やる事は簡単だが、面倒な事この上ない。


 しかし、隊長である以上参加しない訳にはいかない。


 面倒ではあるが、負けるつもりもない。


「そうだな、私もコンラットとは一度本気で手合わせしてみたかったんだ。いい機会だし、張り切って行きますか!」


 ニッと笑いながら言う。


「ほどほどにしろよチエ。お前が本気出すとヤバい」


 クロードが失礼なことを言った。


 まぁ、否定はしないけど。


 しかし、三国武道大会か。


 三国の代表はどんな人達なのだろう。


 他国の代表は非常に興味深い。


 出場するのは色々良い情報が手に入りそうだ。


 そう思うと色々楽しみになってきた私は、一週間後の代表選抜戦で勝つ事を決意するのだった。






 この時、今年の大会で大事件が起こるとは、私を含め誰も予想すらしていなかった。





To be continued

あとがき


第18話をお送りしました。


今回から『三国武道大会編』が始まりました。


今回の内容は主人公の現在の日常をメインとしたお話を書かせていただきました。


話をまとめるのに時間がかかってしまったので、次から出来るだけ早く更新していきたいと思います。


次回もお楽しみいただければ幸いです。

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