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勇者より最強な黒騎士  作者: 暁 桃香
黒騎士誕生編
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第17話 後日談

第17話 後日談





 私が『ファフニール』を倒した次の日からが大変だった。


 まず議会の人間を捕らえ、事情聴取。


 新しい議会を設立するまで、陛下、宰相閣下、軍の隊長・副隊長達で政治を行う事になった。


 次にアクロイドの下で働いていた人間、クロードが入っていた闇ギルドの逮捕。


 そいつ等から、誘拐してきた人達の監禁場所を聞き出し、早急に救出。


 誘拐された時の事を聞き、故郷へ返した。


 でも、中には身寄りのない子供や、帰る場所が無いと言う人達もいて困った。


 そこで彼らを都に連れて帰り、陛下の許可を得て孤児院を建て、誘拐された大人達が子供の世話をしている。


 この孤児院には、裏町で生活していた子供達も入っている。


 ちゃんとした教育のもと、真っ当な人生をおくれる様にするのが目的だ。


 孤児院の資金は、城が経営する事で問題無く設立された。


 建つまでの時間、約1週間。


 魔導師と大工が協力し、あっという間に出来てしまったのだ。


 やっぱりこの世界の人間は仕事が早い。


 孤児院の事と同時に、他国の貴族や売られてしまった被害者達の事も話が進んだ。


 まず、他国の貴族達は帝国で裁かれる。


 この世界では、その国に居る以上、其処で裁くのが常識だ。


 よってたとえ他国のお偉いさん達が騒ぎ出しても、『この国で犯罪犯したんだから、その国の法律に従って裁かれるのは当然』と堂々と言い切る。


 一応裁判で弁護士を付ける事は出来るけど、事が事だけに証拠も揃っている以上、かなり重く裁かれるのは決定だ。


 それはこの国の元議員達も同じだ。


 悪い事をしたんだから、報いは受けて貰わないと。


 誘拐され売られた被害者達は、現在陛下が他国の王達に、帰国させる様に要求している。


 この事件は国際問題に発展しているだけあって、いろいろ大変だ。


 解決するまで長くなりそうだし、他国と関係は暫くギスギスしそうだ。


 そんなこんなで色々忙しかったせいで、陛下にクロードの紹介をしたのは、『ファフニール』退治から2週間後の事だった。


 その2週間の間もクロードに、色々動き回って貰っていたのも遅くなった原因の一つだ。


 陛下にクロードを紹介した時、ガチガチに固まっていたクロードには笑えた。


 私が陛下に事情を説明し、晴れてクロードは『隠密捜査官(仮)』から『帝国軍・隠密捜査官』になった。


 最後までガチガチになっていたクロードと、その晩は『ブレスの酒場』に行き、クロードの就職祝いを2人で行った。


 周りのお客達には、友人としてクロードを紹介した。


 その日、私がお酒ではなくノンアルコールのドリンクを飲んでいた事に、クロードから疑問を投げかけられ、渋々事情を説明したらクロードに大爆笑された。


 腹が立ち、素手の拳骨を喰らわせてやったら、口喧嘩に発展。


 なんだかんだで、楽しかった。


 あと、ビックリする出来事もあった。


 あのアホ剣士が私に謝罪してきたのだ。


 それも頭を下げて。


 アレには本当にびっくりした。


 何でもコンラットに今回の事件が解決したら、私を認めて謝罪すると約束していたらしい。


 私が知らない所でそんな約束がされていたとは。


 でも私は、アホ剣士の頭を素手の拳骨で殴った。


 それに抗議したアホ剣士。


 その時、胸倉を掴んで怒鳴り返したのをよく覚えている。


『私じゃなくって、他に謝罪する人間が居るだろう!!』


 と、コンラットを指しながら言ったのだ。


 呆けた顔をしたアホ剣士をまた殴り、私が怒っている理由を説明してやった。


 まだコンラットに謝罪をしていないのに、何事も無かったかのように接しているこの男に腹が立っていたのだ。


 それを理解したアホ剣士がコンラットに謝罪したのを見届けて、許してやった訳だ。


 因みに、アホ剣士と言うあだ名を撤回するように言われたが、すでに他の2人同様愛着が湧いてしまった呼び方なので却下した。


 何と言うか言いやすいんだよな、この呼び名。


 結果、泣きながら走り去ったアホ剣士。


 大の男が泣くなよ。




 そして、更に1週間がたち。




・孤児院


「おーい! おチビ達、お菓子持って来たぞー」


 約3週間ぶりの休暇を利用し、アリスと一緒に孤児院に来ていた。


「あっ! 黒騎士様ー!」


 一人の少年が声を出すと同時に、子供たちが集まってきた。


 初め見た時は、誘拐されたショックや、行き場をなくし路頭に迷っていた事で暗い表情をしていた子供達。


 それが今では徐々に明るくなってきていると聞き、孤児院の視察を兼ねて、お菓子の差し入れを持って来たのだ。


 明るくなったのは、職員の人達も同じ。


 子供の人数が多かった為、職員さんの人数も男女合わせて十人以上は居る。


「黒騎士様!」


「ようこそお越し下さいました!」


 孤児院の職員さん達も次々に出てくる。


 でもなんか固くなっている様に見える。


「そんな固くならなくていいですよ。コレ皆さんと一緒に食べようと思って、持ってきました」


 私は大量のケーキが入った袋を、職員の一人に渡す。


「まぁ! 来ると分かっていたら、お迎えに上がりましたのに!」


 畏れ多いと言った様な表情で言う。


「いえ、私達が突然来たのですし。お構い為さらず」


 両手を胸の前で振りながら、職員さんに言う。


 暫くそんな会話をしていると


「ワァ!」


 行き成りマントを引っ張られビックリする。


 後ろを見ると何人かの子供達がマントを握って私を見ていた。


「こっこら! 何やってんだお前達!」


「良いんです良いんです。如何した?」


 慌てて子供達を叱りつける男性職員さんに、気にしていないと言い、子供達に目線を合わせ尋ねた。


「あ…」


「ん?」


 何かを言いかける一人の男の子。


 それに首を傾げた。


「あ、遊ぼ!」


 勇気を振り絞った様に言った男の子。


 あまりの可愛さに抱きつきたくなったが、ぐっと堪える。


 周りを見ると、他の子達も遊んで欲しそうな表情をしていた。


「遊ぶか!」


 その一言に子供達は顔を輝かせ、私の手を引っ張り外へ連れ出そうとする。


「アリス、ちょっとこの子達と遊んでくるよ」


「はい、私はお茶のご用意をしておりますので」


 ニッコリと返すアルス。


 職員さん達はポカーンと、変な顔をしていた。


「頼んだってわわっ! そんなに引っ張ると危ないって!」


 子供達の強い力に引っ張られ、外の広場に強制的に連れ出されてしまった。





・孤児院の広場


 子供達に連れ出された私は、今困っている。


「騎士ごっこが良い!」


「嫌! おままごと!」


 見事に男女の意見が分かれてしまった。


「馬鹿! 黒騎士様が居るんだぜ、此処は騎士ごっこだろ!!」


 男の子達は騎士の私が居るからと言う理由で、騎士ごっこをしたいと言い張り。


「駄目! 黒騎士様には、順番にお父さん役やって貰うの!!」


 女の子達は交代でお母さん役をやり、お父さん役に私を抜擢した。


 それぞれ子供らしい可愛い意見だった。


 でも喧嘩になっているから、如何すればいいのか困ってしまっている。


 こんな状況は初めてだから、如何すればいいのか全く分からない。


「じゃ、黒騎士様に決めて貰おうぜ!」


「分かったわ!」


 困っていると、いつの間にか私が決めると言う事になってしまった。


「黒騎士様!」


「騎士ごっこと、おままごと!」




――――どっちが良い!?




 一斉に声をそろえて聞いてくる。


 困ったな、出来れば男女一緒に出来る遊びが良いんだけど。


 そうだ!


「皆、私の故郷の遊びをしないかい?」


 私が聞くと皆が首を傾げた。




**********




 私と職員の方々で、お茶のご用意をしています。


「あの~、宜しかったのでしょうか?  騎士様にあんな事をやらせてしまって」


 職員の男性が、申し訳なさそうに聞いてきました。


「大丈夫ですよ。むしろ黒騎士様は楽しそうにしておりました」


 ニッコリ笑って、男性に言いました。


 兜で見えませんでしたが、確かに黒騎士様は笑っておりました。


「それに黒騎士様は、何時も『自分は普通だ』と仰って、全く偉ぶるそぶりを見せないんです」


 その言葉に職員さん達全員が、キョトンとした表情をしました。


 それが可笑しくて、クスリと笑いました。


「あの方は、民に対し敬意を持って接して下さるんです。その性格から、都の平民達に『黒の旦那』と親しまれる様になりました。ですので、あの方の為にも、固く接する必要は無いんですよ。勿論今すぐとは言いませんが」


「……不思議な方なのですね」


 一人の女性職員さんが言いました。


 それに笑顔を向け、食堂の席にお茶とケーキを並べて行きました。







「皆さん、お茶の用意が整いましたよー!」




――――ワーイ!




 私の呼びかけに、勢い良く建物の中へと駆けだす子供達。


「こらこら! ちゃんと手を洗え!」




――――ハーイ!




 子供達の後ろから、黒騎士様が注意するように言うと、元気よく返事をした子供達。


「お疲れ様です、黒騎士様」


「有難う。あ~、子供の体力は凄いな~」


 背伸びをしながら、黒騎士様が言いました。


 子供達の様子からすると、楽しまれた様ですね。


「何をして遊んでいらしたんですか?」


 私は、何をしていたのか尋ねる。


 見た所、男女一緒に遊んでいた様ですが、何をやっていらしたんでしょうか?


 私が知っている限り、女の子はおままごと、男の子は兵士の真似事をして遊ぶのが普通だったと思うので、男女一緒にやる遊びは全く思いつきません。


「ああ、鬼ごっこって言う、私の故郷の遊びだよ」


「鬼ごっこ? それは魔物の真似をするのですか?」


 鬼と聞き、ゴブリンを思い浮かべる。


 何とも変な遊びです。


 よく女の子が混ざりましたね?


「ブッ!」


 しかし、突然黒騎士様が噴き出しました。


 必死に笑いを堪えているように見えます。


「あ、あの?」


「ごっごめん、確かに知らない人が聞いたらそう思うよな」


 黒騎士様は、肩を震わせながら言いました。


 私は首をかしげます。


「鬼って言っても、役の名称なんだ。誰か一人鬼を決めて、その人が十数える間に出来るだけ遠くに逃げる。でも決められた敷地の外に出ちゃダメだし、建物の中に入ったり、木の上に上がるのも禁止。十数え終わったら、鬼が逃げている人を追いかけて、一人にタッチすると、タッチされた人が次の鬼。また十数えて追いかける、その繰り返しの遊びなんだ」


 それを聞いて、如何して男女一緒に遊んでいたのか理解できました。


「成程、男女が仲良く遊んでいた訳です」


「初めは、喧嘩してたんだけど、この遊びを提案してやり出したら、皆ハマったみたい」


 おそらく、初めての遊びで興奮したのでしょう。


「確かに、この遊びはスリルが有りそうですね」


「スリルか……」


 一言呟くと、考える様に腕を組む黒騎士様。


「如何か、なさいましたか?」


「……私が鬼になって魔導師隊の連中追い回したら、体力が付くんじゃないかと思って。武器使用有りで」


 その言葉を聞き、想像してみる。


 剣を持って魔導師隊の方々を追い回す黒騎士様。


 ………。


「良いですね」


 ニッコリと笑って言いました。


 確かにこれならば効果が出そうです。


「だよな! よしさっそく訓練に取り入れよう!」


 黒騎士様は気合を入れる様にして言いました。


 頑張ってくださいね魔導師の皆様。




**********




「それでは、お茶にしましょう。皆様お待ちでしょうし」


「分かった、先行っておいて」


 私は手を洗いに行くために、アリスを先に行かせる。


 別れる前に、食堂に来るように言われた。


 井戸まで行き水を汲み、ガントレットを外して手を洗う。


 ついでに、汚れたガントレットを洗う。


 それにしても、あそこまで鬼ごっこにハマって貰えるとは思わなかった。


 アリスも言っていたけど、やはりスリルが有って子供は楽しめた様だ。


 魔導師隊連中の訓練に取り入れよう。


 勿論武器の使用有りで。


 コレは効果が期待できるし、何より私が楽しめそうだ。


 覚悟していろ魔導師隊。


 そんな事を考えながら、汚れた水を捨てる。


 さて、子供達を待たせる訳にはいかないし、食堂に行くか。


 私は食堂への道を歩きながら、今までの出来事を思い出していた。


 もうこの世界に来て、1カ月以上たった。


 思えば行き成り大きな事件を担当したな。


 魔王と魔族が議員達と手を組んでいたなんて、とんでもない事件だった。


 次の議員達を選ぶ時は、慎重に選ばなければと思う。


 最近は議員の仕事もやっていたから、休みが全く取れなくて、息抜きと言えばクロードと飲みに行ったくらい。


 疲れてたけど、今日の休みに此処に来てよかった。


 なんかあの子達が笑っているのを見て、良かったと心の底から思う。


 まだ売られた人達が帰国するまで、解決したとは言えないけど、それでも幸せそうな顔を見るのは悪くは無い。


 これからも大変な事が待っているのは確実だけど、私は一人で動いている訳じゃない。


 なら私がするべき事をする、それだけだ。


 考えながら歩くと、食堂の前まであっという間に着いた。


 ドアに手をかけゆっくりと開ける。


「あ! やっと来た!!」


「も~! 遅いよ!!」


 私がようやく到着すると、待っていた子供たちが口を開く。


「黒騎士様、一緒に食べよ!」


 一人の女の子が、私の手を引っ張り、席へ連れて行ってくれた。


 席に座ると左隣にアリスが座っていた。


「随分懐かれましたね、黒騎士様」


 ニッコリと笑って言うアリス。


「さあ皆、お祈りをしましょう」


 一人の女性職員さんが子供達に言う。


 すると子供達は両手を組んで祈りを捧げる。


 この世界の食事では、まず両手を祈る様に組み、十秒黙祷する。


 コレが日本の『いただきます』にあたる。


 しかし十七年日本に住んでいたせいか、つい何時も通りに


「『いただきます』」


 と両手を合わせて、日本語で言ってしまった。


 それに子供達や職員さん達が私を見る。


 アリスは何時もの事と言う様に、気にしていない様だったけど、大勢が沈黙している中で声を上げたのは恥ずかしかった。


 それが殆ど子供でも。


「あ、その」


「ねぇ、今何て言ったの?」


 如何声をかければいいか迷っていると、先刻私を引っ張って席に案内をしてくれた、右隣に座っていた女の子が質問してきた。


 周りの子供達は勿論、職員さん達も興味津々だ。


 どうやら初めて聞く言葉に興味を持ったようだ。


「いただきますって言ったんだ。私の故郷では命をいただきますって意味なんだ。野菜の命、動物の命をいただく。その事に感謝しながら言う言葉なんだ」


 それに感心したように聞き入る皆。


 因みにアリスには初めて会った日に言葉の意味を教えた。


「ねぇ! 皆で今の言葉、言おうよ!!」


 隣の女の子が皆に言う。


 それに頷く子供達。


「黒騎士様、よかったら一緒に言わせて下さい」


 職員さん達もやってみたいと言ってくる。


 隣のアリスも笑顔で頷く。


 よし、皆でやるか!


「それじゃ、私がやる事を真似して」


 そう言って両手を合わせると、周りも合わせる。


「『いただきます』」


私が日本語で言う。


そして、全員が言った。




―――『イヂャデァギュブアズ!』




 何言っているのか、分からなかった。


 この世界の人間にとって、日本語は発音しにくい。


 エルドアに来て、今日初めて知ったのだった。






『黒騎士誕生編』‐END‐

あとがき


第17話をお送りしました。


今回は後日談を書かせていただきました。


今後、章の終わりのお話の題名は全て『後日談』になります。


次回から新章に入ります。


それと、少しずつ『黒騎士誕生編』を修正していきます。


今後の展開もお楽しみください。

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