第9話 状況整理と仮説
第9話 状況整理と仮説
・智慧、寝室兼仕事部屋
コンラット達と別れて、自分の部屋に戻ってきた私は、今モーレツに恥ずかしがっていた。
いやさ、確かにあのアホ剣士に腹が立って思わず殴ってしまったり、筋肉兄さんの事背負い投げで地面に叩きつけたり、青長髪イケメンに刀付きつけたまでは、別に恥ずかしくは無いんだけど。
問題はその後!
大勢の前で大声出して叫んだ事なんて、今までの人生で全くと言っていいほど無かったから、何故かすっごく恥ずかしい!
しかも、頭に血が上ってたから、今思い出せば途轍もなく臭いセリフも言ってたような気が…。
そして極め付けが、私がコンラットに言ったセリフ!
何アレ?
私は彼を口説いてんのか!?
いやいや、単純に私は『自分』と言っているのが似合わないと思ったから『俺』にしてって言っただけであって!断じて口説いている訳ではない!!
こっこれはアレだ!
今まで人とコミュニケーションを取る機会が少なかったから、ついこんな言い方になってしまっただけだ!
と私が自分に言い訳していると。
――――コンコン
とドアをノックする音が聞こえた。
その音に正気に戻った私はドアを開けに行く。
いやさ、この部屋外の音は聞こえるんだけど、中からの音は外には全く聞こえないんだよ。
地球では外の音まで遮断しちゃうけど、この世界は魔法で色々設定可能だから便利だ。
今度、ノックした時だけ中の音が聞こえる様に、設定変更してもらおうかな。
こればかりは専門外だから。
ドアを開けると、資料室に帝国の地図を取りに行ってもらっていたアリスが立っていた。
「黒騎士様、地図をお持ちしました」
アリスは1メイト位の筒状に丸められた紙を私に渡す。
「有難う」
私はお礼を言って、アリスを中に入れる。
大きな仕事用の机に地図を広げる。
思った通り、現代の地球と比べれば詳しい地図ではない。
ゲームの付録に付いてきそうな地図だ。
「これが一番新しい地図です。これでよかったですか?」
「ああ、問題ない」
私はそう返す。
確かに、もう少し詳しいものの方がいいが、これで十分だ。
「それじゃアリス、コンラット達が来るまでに君の知っている事も聞いておきたい」
「構いませんが、軍の方達の方が詳しいかと?」
アリスは首をかしげながら尋ねる。
確かにそう思うかもしれない。
「いや、もしかしたら使用人が知っていて、軍の人間が知らない事もあるかもしれない」
「と言うと?」
私はアリスに説明する。
「自分たちが知っている事なら、一番詳しい人間が知らない訳がないって思いこんで、報告していない可能性がある。常に『もしも』を想定して考えないと、本当の答えは見えてこないものだよ」
もしもアレが原因だったら。
もしもアイツだったら。
もしもコレやアレが目的だったら。
もしも知っていたら。
こんな風に『もしも』の可能性を、私は前提として考え、仮説を立てる。
勇介に厄介事に巻き込まれたときに、よくやっていた事だ。
アイツ何でもかんでも首突っ込んでたからな…。
勇介ってホント何も考えずに私を掴んで、突っ走ってたから、アイツの思うままに行動してたら絶対死んでたよ。
で、無事生還出来てもいつも感謝されるのは勇介。
アイツは、敵をぶちのめすだけで、殆ど私が安全なルート確保してたってぇのに。
あ~腹立ってきた…。
「黒騎士様?」
「!?」
いかん、つい昔の事思い出してたら黙りこんでたみたい。
アリスが不思議そうに私を見る。
駄目だ駄目だ、今は誘拐事件の方が大事だ。
「ごめん。まぁ、先刻言ったように考えるのは基本だから」
私は慌てて謝罪し話を戻す。
「まぁ! 確かに考えてみれば、そう言う事があるかも知れません! さすがは黒騎士様!!」
またも褒められてしまった。
今日何回目だろう?
私は普通に考えているだけなんだけどな。
「私が知っている事は噂程度なのですが」
アリスが自分の知っている事を話し出す。
「先ほどバイロンさんの服屋で話した通り、各村や町で若い男女が行方不明になる事がここ3年続いております。年齢は10歳になったばかりの子供から20代後半の人間です」
「ちょっといい? 10歳になる前の子や30代以上の人間は無事なの?」
私はアリスに質問する。
「さぁ、私も噂程度ですので実際のところはどうか分かりません」
確かにそうだね。
「有難う、続けて」
「はい。よく行方不明者が続出しているのが、都から東に向かった先の数多くの村がある国境付近です」
アリスは地図で都から東に向かった先の、数多くの村がある王国との国境付近を指す。
「この辺りの特徴は?例えば人口とか何が盛んなのか」
私は村の詳しい情報を要求する。
「そうですね…人口は1000人程の小さな村ばかりで、主にポロンの実を栽培しています」
ポロンの実とは、赤い丸い形をした瑞々しい甘い実だ。
一般的にオヤツとして食される。
ケーキの材料にも用いられる実だ。
「成程。この国境付近は森に囲まれているから、闇ギルドより盗賊の可能性が高いな」
「私が知っているのはここまでです」
そこで、アリスの説明が終わる。
やっぱり、これだけじゃ仮説も立てられないな。
これはコンラット達が来るのを待つしか
――――コンコン
おっ!
グッドタイミング!
アリスが移動してドアを開けた。
私は、彼等を結界の中に入れるように『許可』をする。
「皆様、お待ちしておりました」
「アリスご苦労」
コンラットが部屋の中に入る。
「隊長、部下4名、各隊長5名を連れてまいりました」
「有難う、コン……隊長5名?」
5人ってことは……。
嫌な予感がする。
コンラットが室内に入ると続けて、他の人間が入ってくる。
「………」
入ってきた人間の中に居た3人を見て嫌な顔をする。
アーメットで顔は隠れているが。
「ハァ~…」
「な! 何だい君!? 僕達が入ってきて溜息をつくとは!」
そう言ったのはさっき、私が顔面を殴り飛ばした、金髪アホ剣士。
鼻にシップを張られていて、漫画に出てくる馬鹿なキャラクターみたいになっている。
「そりゃ溜息も付きたくなる。出会ってそうそう嫌み言う礼儀知らずのアホ剣士や、頭に血が上って冷静な行動がとれなくなった筋肉兄さんや、ちょっとした事でキレる青長髪イケメンに先刻嫌な思いさせられたばかりで、暫く顔も見たくなかったのに…ハァ~」
そう言って、また溜息を吐く。
それを聞き3人は顔を顰める。
返す言葉もないのだろう。
「申し訳ございません隊長、この三人がどうしても隊長を見極めると五月蠅くて」
コンラットがウンザリした顔で言う。
どうやら、彼らが無理やり付いてきたようだ。
それじゃ、仕方ない。
「分かった。まぁあんた等も隊長だったら、自分のするべき事は分かっているはずだよね? とりあえず自己紹介させていただく。私は黒騎士。昨日付けで騎士隊長兼皇族専属騎士に任命されました。このような怪しい格好ですが、この国の敵ではありません。素性を明かす事は出来ませんが今後もよろしくお願いします」
私は、普通に自己紹介した。
――――………。
すると、コンラットとアリス以外がポカーンとした顔をする。
「……何ですか?」
私は彼等に問うた。
自己紹介しただけで、何でその顔すんの?
この国の人達って驚き過ぎ。
「いや……あんたみたいな公爵が、そんな風に自己紹介するとは思わなかったから」
青長髪イケメンが言った。
その言葉に、私は何言ってんのこの人と思った。
「普通、自己紹介する時は相手に敬意をもってするものでしょう? それは身分が違おうが関係ない。人としての常識であって、さっきアホ剣士がしたのは明らかに、人間としておかしいと私は思っている」
「グッ…」
嫌味を込めてそう言ってやったら、顔を歪めたアホ剣士。
イケメンの顔が不細工になっている。
「ほら、私がしたんだ。貴方達もお願いします」
早く本題に入りたいため、早くするようにお願いする。
機嫌が悪いせいか、言葉使いが悪くなっている。
気をつけないと。
あと男口調も意識しないと。
まだ違和感あるからね。
「分かった。俺はアドルフ・アディンセル。弓兵隊長をしている」
青長髪イケメンが言う。
言葉使いは仕様が無い為、何も言いません。
むしろ、新参者に対して当たり前の態度だ。
「俺はブランドン・アダムズ。闘士隊の隊長だ」
筋肉兄さんが言う。
さっきは特に気にしなかったけど、この人大きいな。
よく私この人背負い投げ出来たな…。
それもこの身体の御蔭だろう。
「……僕はアデルバート・アバークロンビー。大貴族アバークロンビー家の跡取りで剣士隊長だ」
やけに『大貴族』を強調して言った、アホ剣士。
やっぱりアホだと思った。
「私はセレスティア・エイヴァリーと申します! 槍兵隊の隊長です! どうぞセレスと及びください黒騎士殿!!」
そう力強く言ったのは、ウエーブショートの金髪の美人な女性。
何でこの人、私に敬語で話してんの?
こんなに力強く。
「先程の隊長格3名をあっという間に、退けた腕前に感服いたしました!」
「は、はぁ~……」
どう返事すればいいのか分からない。
私はただ、アニメやゲームの戦闘をモデルに思い浮かべて、その通りに動いただけなんだけど。
「あの動きを見た時は衝撃を受け、その場から動けなくなりました! それまで貴方を疑っていた事が今では恥ずかしい!」
なんか熱く語り出した。
「そして、アデルを怒鳴りつけた時の言葉に心を打たれました! ご自分の事ではなく、コンラットへの侮辱にお怒りになられたと知った時、何と器の大きなお方だと!!」
「あ、あのセレスさ「セレスと! 後敬語はいりません!!」…セレス…悪いけど話はまた今度で…時間が惜しいから」
そう言って止める様に言った。
「ハッ! も、申し訳ございません…」
セレスが顔を真っ赤にして恥ずかしそうに言った。
美人がやると絵になるな。
私がやっても全然可愛くなんないだよね……。
なんか、悲しくなってきた。
「また今度ゆっくり話しようね……」
「はいっ!!」
友好的な人間は大事にしようと思って言ったんだけど、なんでセレス頬を染めて嬉しそうにしてるの?
声か?
声で兜の中身がイケメンの男であると盲想してるのか?
もしくは純粋に、私の戦闘能力に尊敬と言う気持ちを持ってくれているか……。
後者である事を祈ろう。
「わ…わた…し…は、エイ…ミー……アーノ……ルド…で…す。魔…導……師…隊……隊長……で…すっ!」
とぎれとぎれに言った赤いロングヘアーの丸メガネをかけた人が言った。
私と同じくらいか、少し上の歳だと思う。
「よろしくお願いします。アーノルドさん」
私は右手のガントレットを外して、手を差し出す。
さっきもアホ剣士に言われたけど、私の手って本当にガサガサしてるしゴツゴツだし、女としての自信無くすわ・・・。
もしかしたら、嫌がられるかと思ったが
「はっ…は…い! ……わ…たし…の…事…は……エイ…ミー……と。…普通……に…話…して…下さ…い」
嬉しそうに両手で確り握り返し、名前で呼ぶ事を許してくれた。
何、この可愛い人。
「分かった、エイミー」
私がそう言うと、花が咲いたような笑顔を向けてくれた。
この人絶対、癒しキャラだ。
でも、この人も頬を染めてるのが気になる。
こっちも、尊敬的な意味である事を祈ろう。
私にそっちの趣味は無い。
私もイケメン男子の方が好きだ。
「隊長、それでは行方不明者が多発している、今回の事件についてご報告いたします」
そう言ったのは、コンラットだ。
どうやら自己紹介は隊長陣だけらしい。
私はガントレットを嵌め直す。
「分かった。さっそく聞かせてもらう」
私がそう言うと、20代後半位の、茶色い短髪で茶色いローブの男が前に出た。
「まずは自分から報告させていただきます。行方不明者の年齢は10代から20代の男女。10代後半から20代後半の人間は、町や村の外に出て行ったきり戻らないと言う事です。10代前半の子供は町や村の外に出る事はありませんので、外部でなく内部で誘拐されたと思われます」
「10代以下の子供や30歳以上の人間は無事なの?」
さっきアリスにも質問した事を聞く。
「はい。行方不明者は10代から20代後半までです」
う~ん、年齢に何か意味があるのか?
次に、今度は10代後半位で、金の襟足位まで髪型をした濃い緑色のガンベゾンの男が言う。
「町や村の警備を強化しているのですが、強力な魔導師が雇われているらしく、全く足がつかめない状況です」
悔しそうに弓兵の男が言った後、20代前半の、水色の髪をホニーテールにし、鎧を着た女性が言う。
「以前追跡をしていたと思われる兵が、首を裂かれた状態で発見されました。おそらくアサシンもいると思われます」
「他に外傷は?」
「いえ、首を裂かれている以外、抵抗した痕跡すらありませんでした」
成程、殺し専門のアサシンなら納得だ。
おそらく、気付いた頃には裂かれていたんだろうな。
「帝国全土で行方不明者が多発しおりますが、一番多いのは都から南の方角にあるアズリ町と呼ばれる都の次に商業が盛んな町です。」
「え?」
茶色い短髪で鎧を着けた30代位の男性の言葉に、私は思わず変な声を出してしまった。
アリスも驚いた顔をしている。
他の人間は如何したのか分からない顔だ。
「隊長どうかしましたか?」
コンラットが聞いてくる。
「いや、さっきアリスから聞いた話では、都から東に向かった先の数多くの小さな村がある場所で行方不明者が多く出てるって聞いたけど?」
「何だって!?」
コンラットが驚き大きな声を上げる。
「それは本当なのかアリス!?」
青長髪イケメンがアリスに詰め寄る。
「は、はい。以前他の使用人から噂で聞いた話では。てっきり使用人の中で噂になっているものですから、軍の方達も知っているものと」
アリスは詰め寄る青長髪イケメンに言った。
「やっぱり、思い込みがあったって訳か」
「はい、黒騎士様の言う通りでした」
「どう言う事ですか隊長?」
コンラットが首をかしげながら聞く。
「コンラット達が来る前に、アリスが知っている事も参考に聞いたんだ」
「フッ! そんな必要何てある訳が「黙れアホ剣士」なっ!? アホとは何だ!」
鼻で笑ったアホ剣士の話を遮る。
人の話は最後まで聞け!
「『もしも』を想定してアリスに聞いたんだ。もしかしたら『使用人が知っているなら、軍の人間なら当然知っている』と思って、報告されていない事があるんじゃないかってね」
全員がハッとした顔をする。
私は説明を続けた。
「ようは思い込みだ。ちょっとした不注意だよ。それより、アズリ町はどの辺り?」
私は、地図の何の辺りかを聞く。
「この辺りです」
コンラットが地図に載っているアズリ町を指でさす。
指されたアズリ町の所を見て
「アレ?」
と、声を漏らす。
そこは聖国との国境付近にあったからだ。
「ここも国境付近?」
「はい、都や国境から離れた村や町では多少被害にあっていますが。軍の情報ではここが一番被害にあっています」
コンラットがそう答えた。
「………」
「隊長?」
黙りこんでしまった私にコンラットが話しかけた気がしたが、私は考え込んでいて返事をは返さなかった。
何だ?
何かが引っ掛かる。
何かが足りないような……。
「フム、この都でオークションが開催されているのは確かなはずなのに。この都を探しまわったが一向に見つからん」
「そうだな。しかもこの都の出入り口はたったの一か所。警備をどうやって回避したんだ」
筋肉兄さんとセレスが話す声が聞こえて、ふと気になった。
私は腕を組み、頭をフルに使って考える。
3年前からの誘拐事件。
若い男女。
国境付近の被害。
都の出入り口。
そして、オークション。
「!」
まさか。
私はある仮説を組み上げた。
「隊長?」
「コンラット、一つの仮説が立った」
私が言うと全員が首を傾げた。
まぁ、まだ引っ掛かる所はあるが。
「何故、国境付近が狙われるか。それはこの付近だから意味がある」
「意味?」
筋肉兄さんが聞く。
「それを説明する前に、私が立てた仮説について話そう。おそらく奴隷を売却しているのは他国の人間だ。彼らを相手に商売して利益を求めている人間は、この国の強い発言力を持った議会に属している人間だろう」
「奴隷を売却しているのが他国の人間なのは分かりますが、どうして発言力のある議会に属している人間だと?」
セレスが質問してきた。
「よく考えて。どうして3年間も誘拐事件が多発しているのに、軍の人間が一向に尻尾を掴めないのか。答えは誰かが情報を操作しているからだ」
ハッキリ言って、奴隷商人にそんな事出来ない。
「おそらく黒幕が雇った闇ギルドの連中が、証拠となるものを全て処分し、軍への情報を隠ぺいし、黒幕が情報操作しやすいようにしていた。このギルドは、暗殺、隠ぺいと言った犯罪行為を受け持つギルドだからね」
追跡していた兵士を殺したのもこいつらだ。
「この黒幕が資金を奴隷商人に提供したり、盗賊や闇ギルドの連中を動きやすくしていたんだ。そして、儲けのほとんどを受け取っていたんだと思う」
奴隷商人に、誰かを雇う資金があるとは思えないし。
情報操作が出来る人間何て、議会のお偉いさんくらいだ。
「次にオークションと都の出入り口。何故帝国の中でも警備が厳しい、この都でオークションが開催されているのに、尻尾がつかめないのか。当然だ、この都に誘拐された人間は一切足を踏み入れていないのだから」
「踏み入れいていない?」
青長髪イケメンが首を傾げながら聞く。
「ハッン! 何を馬鹿な事を言っているんだい? そんな訳「か…い…らい」……何だって?」
またも馬鹿にした様に言い出したアホ剣士の言葉を、エイミーが遮った。
よく頑張ったエイミー。
「カイライとは何だ?」
セレスがエイミーに質問するが、口ごもってなかなか話せないエイミーの代わりに私が説明する。
「傀儡とは『くぐつ』とも言われている。要するに操り人形の事だ。これを作る方法は、人型の人形に、モデルとなる人物の髪や爪を括りつけ、それに魔力を流すことで、モデルとなった人物と似た人形が出来る。本来儀式で使われるものなのだが、まさかこういう風に使うとは」
これなら、問題なく都の出入りが可能だ。
――――ぎ、儀式……。
『儀式』という言葉に、私とエイミー、魔導師の男以外の顔が引きつっている。
気持ちは分かるけど。
「こいつを使えば、本人が居なくても人間を見て選ぶ事が可能だ」
「じ、じゃぁ、誘拐された人間は何処に居るんだい!?」
アホ剣士がまともな質問をした。
普通の質問出来るんだ。
「それがさっき言った意味。誘拐された人達は国境付近に監禁されている」
それを聞いて驚きの表情を浮かべるコンラット達。
「それなら全てに説明が付く。おそらく国境付近以外の誘拐はここから注意をそらすため。都でのオークションもそうだ。こうする事によって監禁場所を隠していたんだ。どうして若い男女がさらわれるのかは、まぁ…余り想像したくないけど、奴隷商人が関わっている時点で碌なことじゃないのは明白だね。」
そこまで聞いて、全員が俯き苦い顔をする。
そりゃ、売られた人達の事を考えたらそうなるよね。
もっと早く助けたかっただろうに。
それにしても。
「こいつ等、軍を相当馬鹿にしてるな」
私の言葉に全員が顔を上げる。
「だってそうでしょ? 誘拐した人間を都に踏み入れさせていないにしても、堂々とオークションを開いている事をばらして。その上ちょっと集中して考えれば、監禁場所がすぐ分かる行動をとって。馬鹿にするのもいい加減にしろって思うよ」
「……申し訳ございません」
突然コンラットが謝った。
何故かは、分かっているため私はコンラットに言う。
「コンラット、別に謝る必要はない。気付かなかったのは、黒幕が動いて調査出来にくくしてたんじゃない?例えば調査隊の人数を極端に少なくしていたとか」
驚いた顔でコンラットを見る隊長達とアリス。
部下4名は苦い顔をしていた。
「……貴方なら、ここまで行き着いてくれると思っていました。その通り、調査隊は俺とカイル、それからここに居る4人だけです」
コンラットが静かにそう言った。
「やっぱりか……。おかしいと思ったんだよ、行方不明になった人間が多い場所の情報が軍と使用人、それぞれ違っていた事とか。この情報は調査する上で最も重大な所だ。調査隊の人数が多ければ、こんなミスは無かっただろう。でも、少数だったら…それが6人だけだったら情報が手に入らないのも納得だ。いや、むしろよくここまで集められたなと言うべきだね」
「はい、傀儡の事と行方不明者が国境付近に監禁されているとは思いませんでしたが、貴方が言った事は俺も大体予想はしていました。」
「だろうね」
だってコンラット、『傀儡』と『国境付近』の事以外で、他の人達はいぶかしげな顔してたけど、一人だけ真剣な顔して聞いてたんだもの。
「そこまで言うんだったら、もう黒幕が誰か分かってるんでしょ?」
「はい、ブラットリー・アクロイド議員。大貴族アクロイド家の現当主です」
「アクロイド議員!?」
青長髪イケメンが大きな声を上げた。
他の隊長と部下4名、アリスも驚愕している。
この反応からするに、相当権力があるな。
「彼の指示により、今回の調査隊の人数が制限されました。その事を疑問に思った俺は、独自に彼を調査をしました。簡単に出てきましたよ、彼の不正な行いの証拠が」
彼は空笑いしてそう言った。
「俺は、正式に彼を調査するように議会に訴えました。不正の証拠も勿論持って行きました。……だけど」
「聞き入れてもらえなかった…か」
無言で頷くコンラット。
彼は両手を握りしめ、悔しそうな顔をしながら続ける。
「『この程度証拠にはならん』だそうです。俺はこの時思いました、今の議員は腐っていると! 唯一の救いは、陛下でした。彼だけは、真実を暴くように俺に言ってくれたんです。それからですね、皇族を狙う刺客が現れ出したのが」
――――っ!?
その言葉に私とコンラット以外がハッとした顔をする。
思い当たる点があったようだ。
「俺は陛下達を守るためにも、大きく行動することができなくなりました。そのため、この事は俺と陛下だけの極秘とし、少しずつ俺一人で調査していたのです」
「成程。コンラット程頭の切れる人間が、苦戦する訳だ」
コンラットは冷静に分析すれば、簡単に真実にたどり着く事が出来る人間だと思う。
オーガ襲撃の後、私が色々推理したけど、彼なら私と同じ事を推理しただろう。
あの時は色々あった後だから、考える余裕が無かっただけだ。
「いっいえ! 俺は、そんなんじゃ!」
謙遜しながら言うコンラット。
私は事実を言ったまでだから、そこまで控えめになる必要ないと思うけど。
「いや、コンラットは凄いよ。私なんかよりずっと」
「………(この人無自覚か…)」
コンラットは右の手の平で顔全体を覆っている。
どうしたんだろう?
「ちょっと、どうしたの?」
「………ハァ~」
溜息つかれた!
「マジで何!? 私何かした?」
「フフフッ、黒騎士様はタラシでしたのね」
何故か微笑みながら、アリスが言った。
何タラシって!?
私は勇介と違って、そんな事出来ないよ!?
しかもコンラットみたいな超イケメン、私には勿体なさすぎるから!!
「いや! アリス、なに訳の分からない「ちょっと待ちたまえ!!」……」
私が反論しているときに、割り込んできたアホ剣士。
コイツに割り込まれるのはなんか癪だ。
「………何?」
私は不機嫌だと言う事が、分かる様な声を出した。
「っ………黒騎士は男だろ! どうして、タラシとかそういう話が出てくるんだ!?」
――――あっ!?
「「(ギクッ!)」」
私の不機嫌にビビりながら言った言葉に、隊長達と部下4名が『そう言えば』と言う顔をする。
コンラットとアリスは『しまった』と言う顔だ。
そんな中私は、兜の下でニヤリと笑う。
「あら? 私が男だなんて言った覚えはないけど?」
――――えっ!?
私が態と元の声で、女らしく言ってやったら、全員がビックリした声を上げる。
コンラットとアリスは『何やってるのこの人!?』と言う意味で驚いているだろう。
予想通りの反応有難う!
「おっ女!?」
青長髪イケメンが右の人差し指で私をさしながら言う。
「女とも言っていないが?」
今度は男の低い声で言う。
「どっちだー!?」
筋肉兄さんが頭を抱えて叫ぶ。
何だろう?
今まで人をからかう経験が無かったけど、なんか楽しい!
「まぁさっきアリスが言っていたのは、褒めるのが上手いって言う意味だと思うよ。だったら、単に照れていただけなんじゃないかな?」
「「……(分かって無い)」」
私は、アリスが言った言葉について、不自然が無いように仮説を立てて説明したんだけど。
何!?
コンラットとアリスの顔は普通に見えるのに、あの二人から何かを感じる!
あの二人、怖いんですけど!
「結局どっちなんだい!?」
他は、コンラット達の変化に全く気付いていないようだ。
アホ剣士がしつこく聞いてきた。
他も気になるようだが、私は教える気はない。
てか、おちょくってやる!
「さぁ~、どっちかな~?」
私は、ふざけている雰囲気全開で言った。
「あぁ~! やっぱりコイツ、ムカつくっ!!」
「ハハハハハッ!」
青長髪イケメンの苛立った声に、私は満足そうに高笑いをした。
その後、主に馬鹿3人をある程度からかって遊び、今後の事を話して解散した。
部屋から私とアリス以外が出て行く時、セレスとエイミーが
『たとえ正体が不明でも、私は貴方を尊敬するこの気持は変わりません!!』
『わ…わた…しも』
と、目を輝かせながら言って出て行った。
とりあえず、彼女達の気持ちが尊敬の気持ちであった事に、ほっとする私なのであった。
To be continued
あとがき
第9話如何でしたでしょうか?
今回の話を書いているとき、頭が痛くなりました。
手元にあるファンタジーと推理の解説書を参考に書いて行ったのですがどうでしたでしょうか。
今回、智慧が推理した事以外にもまだ秘密が残っていますので、今後も読んでいただければ嬉しいです。
それではまた次回!




