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 どこから話したら良いのか困惑するルナに、マティーは「ゆっくり話しましょう」と自分の部屋からワインを取りに戻ると言ってルナの部屋を出た。ルナは立ち上がり花束を抱えたまま壁に掛けられた鏡の前に立った。


 鏡に映るルナの目の色は、昼の碧い目から濃い紫色に変化している。普通と違う自分の目の色への嫌悪感で身震いわした。


「このホテルで何か起きるかも知れない……でも、私にはどうするも出来ない……」


 花束に目を落とすと、ルナの目の色に合わせてアレンジされていた。フィンリーの気持ちに堪らなくなって涙が大粒となって零れ落ちた。


「私は自分が普通じゃない事が怖くて、自分さえ良ければとそればかりを考えている。見なくてもいいものをフィンリー様の横で見るのは嫌……もし……」


 もし、フィンリーの身に何かが起きる前触れを知ってしまったら……何も出来なかった時に心が耐えられない。受け入れられない……そう思うと、好きな人の側にいてはいけないとルナは思っていた。


 古い血を受け継いで異能の力がある事を恨めしく思っているのに、フィンリーが自然に受け止めようとしているのが、ルナには幸せで辛い。


 ルナはマティーが戻る前に顔を洗おうと目線を周りに広げると、窓の外の異変に気がついた。


 すっかり暗くなったはずの外が白んでいる。白んでいるものは#濛々__もうもう__#と下から上に向けて#烟__けぶ__#っていた。


ーーー火災


 ルナは窓の側に寄って確かめようとすると、窓ガラスに赤い炎が這い上がって来た。窓ガラスの隙間から煙が入り込んでくる。


「ルナ!!開けて!!」


 ドンドンッと、ドアを叩く音がしてルナは慌ててドアの鍵を開けた。マティーが飛び込んできて、ルナを抱きしめた。


「マティー!! 」


「無事ね!? 」


 マティーは濡らしたシーツをルナに被せると、辺りを見回した。廊下の向こうから黒い煙が天井を這う様に向かって来ている。


「頭を下にして! 逃げるわよ!」


 メインの階段付近にはもう近寄れない。マティーは追いかける黒煙から逃れる様に、突き当たりの外階段に向かった。


「ゴホッゴホッ……」


 ルナを守る様にして進むマティーが煙を吸い込んで、膝を落とした。


「マティー」


「ごめんなさい。まだ大丈夫よ」


 あと少しで外階段のドアの前、今度はルナがマティーの背中を引っ張りながら這いずりドアに向かう。もう、ルナとマティーの周りにも煙が立ち込めていた。ドアに辿り着くと、


ーーードアが開かない!!


「鍵がかかっている……」


 絶望を感じながら、咳き込むマティーは髪ピンを鍵穴に差し込んでカチャカチャと鳴らしたが、ドアの鍵穴は無情にも反応しない。


 マティーは床ギリギリまで頭を下げると、意識が混濁し始めた。マティーの命の光が弱々しくルナの目に見えた。


「ダメよ! この人を死なせたら! 」


 ルナは#彼ら__・__#に向けてそう叫ぶと、空気が止まった。


 ルナの口から歌が溢れる。燃え盛る炎の轟音の中を、ルナの歌声が響き渡る。


『ルナ! きこえる? 』

『ルナ、ありがとう~~』


 妖精たちがルナとマティーの周りをキラキラと旋回する。


 ルナはグッタリとしたマティーを強く抱きしめ、ドアを背に歌い続けた……


 幼い頃、それとも知らず歌っていたような記憶……どんな意味か言葉かも知らない#古__いにしえ__#の歌。

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