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「本当に、さっきは何だったのかしら? 今は体調が良いみたいね」


「ええ。ありがとう、マティー」


 冬の空気に晒されてルナの頬と鼻は少し赤らんでいる。ルナの長いまつ毛を瞬かせる瞳は、お人形のようにだとマティーは思った。


 ホテルの周りにはブティックや商店、土産物屋が軒を連ねて、外国からの観光客も多く見られた。


 ルナとマティーは、ホテルからすぐ近くのデパートに入った。この街で暮らすのに困らない衣料品や日用雑貨を購入する為に。


 マティーは、自分の買い物を楽しむように次々とルナの衣服を選んでいく。その手際の良さは『鬱陶しいほどのお節介焼き』を豪語しているだけあった。鬱陶しいというよりも、頼もしさそのものだった。


「こんなに要らないわ」


「あら? 貴女の荷物、トランク一つだけだったわよね。この街で毎日生活するのには余りにも少ないわよ? 」


「私、あまり物に執着が無くて……」


 それは、新しい職を見つけたら直ぐに出られるように手荷物を少なくしておきたくて……とは、言えない。不安そうな顔をするルナに、マティーは気合を入れて言い放つ事にした。


「ルナがフィンリーからの脱走癖があるのは聞いているわよ。突然消えたりしないでね。残されたフィンリーの相手をするのはとても面倒だわ!? 」


 マティーのパワフルな口調に、ルナは目を見開いて驚いた。


「そんな事まで、仰っていたの? 」


 マティーが目を細めてルナを見た。


「仰ってるって……さすが、ルナ、聞きしに勝る堅物ね。フィンリーでも、これは骨が折れそうだわ」


 呆れた様子を見せるマティーにルナは恥ずかしくなる。マティーは買い物をする手を休めない。タンスが一つ二つと埋まる様な買い物が済むと、ホテルに送り届ける手配をした。


 ルナはオークラルドにきた思惑をフィンリーにバレていた事にショックを受けていた。どうやってフィンリーから消えたら良いのかまでは、考えに至っていない。


 手早く買い物が終わると昼をわずかに過ぎて、マティーはルナをカフェに連れて行った。


 ホテルからもデパートからも少し離れ、閑静な住宅街に近い落ち着いた通りに面しているカフェで、窓際の木目の美しいテーブルの席に案内されると、軽食と珈琲を注文した。


「私もね、看護士をしているの。分かると思うけど、ウォルカーとは不釣り合いなのよ」


 マティーはウォルカーとの馴れ初めの話と、結婚の話をし始めた。


「ウォルカーのご両親には恋人としては公認扱いにしていただいているけれど、結婚については首を縦に振ってもらえていないわ」


 マティーはそう告白すると、珈琲を一飲みした。


「だからね、今日はとても楽しんだのよ。私の中で結婚準備って、こんな感じなのかしらと。予行練習にでもなれば良いと思って。何にしてもイメージは大事よ。例え夢が叶わなくてもね……」


 マティーは雫が滴っている窓ガラスの外に目を向けた。朝の時の陽気が失せた空を雲が覆って、今夜は雪が降る様だ。ルナは、マティーの話が続くのを見守った。


「ルナ、ウォルカーの妹のリーザの事だけど、一人では相手にしないでね」


「え……」


「嘘をついてでも、構わないであげて」


 ルナには、リーザについて何かを判断するには迷いがあった。深く聞いていい話なのか、躊躇った。


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