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シルヴィ・ハートは魔王の子である。認知は多分されていない  作者: たけのこ
皇国政変編

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51.天使と名乗る者

最近マジで寒い……


 その一言により部屋中に緊張感が漂う。悪魔という単語に反応したのか、何かに手を伸ばし掛けていたシルヴィも顔を向け黙って対面のソファに座り込む。

 エルフの國での事を思い出したのか、ルゥールーは顔を顰め、優希はそっとシルヴィの袖を摘んだ。


「確信を得たのはつい最近だ、反魔王派の奴らが(オレ)に対して強気に出始めた事が疑惑を持った切っ掛けだ」


「……たったそれだけで?」


「はっ! 反魔王とか大袈裟な名前を付けられちゃいるが、アイツらの本質は臆病者なんだよ、(オレ)らを恐れているのさ」


 反魔王派とは、先代魔王を討伐した英雄である篠田(しのだ)将臣(まさおみ)の、現在の魔王の子孫であるシルヴィ達を排斥しようとする者たちの呼称だ。

 魔王への恐怖から、英雄が魔王となりその好感情が反転して、物事の判断が付かない幼子が未知の異能を振るう事に対する実害から、その他理由は様々だが人々は魔王の血を畏れているのは以前にジェシカが説明した通りである。


「中でも一番多いのが魔王の力への恐怖だ」


 魔王の子らは一様にしてちぃと能力なる異界の異能を受け継いでいる事が分かっている。

 その内容は様々ではあるが、殆どに於いて今の人類では再現不可能な天使や悪魔の振るう権能とほぼ変わらぬ出鱈目な力という認識だ。

 自分達では解析も対策も出来ず、かといって悪魔の様に人が人を封印する術など現時点では存在しない。

 そんな歩く決戦兵器のような存在が自分達と同じ目線で物を語り、政治を動かしている事に対して彼らが感じている恐怖は想像以上に大きいと。

 もちろん単なる差別感情、未知なる存在への不安なども存在する。


「そんな奴らは大抵二つに別れる――(オレ)らに従ったフリをするか、遠回しな方法で排除しようとするかだ。この内の前者が離反し、後者が直接的な手にも出て来る様になった」


 故にギルベルトは『魔王の子を恐れなくなった根拠があるのだろう』と考えた。

 そうして調べていく内に奴らの背後に悪魔、もしくはそれに準ずる存在が確かに居る事が判明した。


「どうやって判明したの?」


「……(オレ)がせっかくスカウトして他国から引き抜いていた兄弟達が何人か行方不明だ」


「それはっ……」


 ギルベルトが言うには彼ら彼女らはマトモな戦闘訓練は受けていないし、本人達も争い事は苦手で自身が死の危険に直面したとしても上手く動けないという。

 それでも反魔王派がそれを知る由はないし、ちぃと能力の内容だけを見れば大抵の荒事は解決できるうえ、対人に特化した者も居り、普通に考えれば自分達の戦力では手出し出来るなど考える筈もない。


「悪魔共は最強無敵の現魔王が敗北する事があるとすれば、それは(オレ)達兄弟が徒党を組んだ時だという事を理解してやがる」


「……だから襲った?」


「他にも何らかの企みがあるのかも知れんがな」


 悪魔にとってもちぃと能力を持つ魔王の子を襲う事はかなりのリスクがある行為の筈であるが、それでも断行したという事はそれだけ魔王の子を脅威だと思っているのか、また何か別の考えがあるのか。

 実際のところは分からないが、魔王の子が狙われているのは事実だとギルベルトは断言する。


「で、だ……そんな悪魔だが、どうやら(オレ)の事は怖いらしくてな? ちょこまかと逃げ回るんだわ」


「まぁ、ギルちゃんは魔王の子の中でも屈指の武闘派だって有名だしね」


 反魔王派の者を使って迂遠な方法で自分を排除しようとしているし、さっさと殴り殺しに動くと隠れ潜むとギルベルトは面倒くさそうに話す。


「なんで悪魔と手を組んでるの?」


「あん?」


「……魔王の子が怖いのに、どうして魔王の部下で魔王の子と戦力的に変わらない悪魔と反魔王派は手を組んでるんですかって聞いてます」


 シルヴィの言葉少ない問いにギルベルトが怪訝な表情を浮かべ、少し遅れて優希が翻訳をする……そんな一連の流れを見てジェシカは何かを、具体的にはこれまでの旅路での苦労を思い出したのか遠い目をする。


「はっ! 神や天使を騙るなんてのは悪魔の得意技だぜ?」


「むっ……」


「敬虔な奴には不快だろうが、実際に反魔王派には天使を名乗る人物が居る。そいつが悪魔かどうかは知らんがな」


 そこまで説明したところで、ギルベルトは自分の姉妹達に向かって注意事項を述べ始める。


「さて、ここまで説明したところでお前らに注意すべき事がある――親父の力は使うな」


 例え政敵であろうと、同じ国の民に魔王の力は振るわないという姿勢を見せ続ける必要がある。


「反魔王派の重鎮を何人か失脚させ、陰謀を張り巡らす天使を名乗るナニかを表に引きずり出す必要がある」


 どんな策士であろうと、馬鹿正直に一つずつ策を潰していけば手詰まりとなる。

 手詰まりとなった段階で逃げる可能性もあるが、それならそれでこの国から悪魔を排除できたという結果は変わらないので良しとする。

 だがギルベルトは自分が保護していた身内に手を出されたにも拘わらず、その原因であろう悪魔をただ見逃すつもりはなかった。


「絶対に逃げられない状況で悪魔の正体を白日の下に晒し、そして討つ……今日中にでも姉貴が城に居る事は奴らも知るだろう。魔王の子が増えた事に対し、何らかの動きがある筈だ」


「あぁ、だからさっさと着替えさせたんだね」


「見た目でわかり易くすんのが一番だろ?」


 相手に遠回しに伝える為にわざと道を選ばせたり、兵や侍女の配置を反魔王派に偏らせたりなど色々と小細工を弄したという。


「一ヶ月後にエルフとの和平を祝う式典が開かれる。そのエルフ側の代表として姉貴に出席して貰う予定だ」


「えっ、聞いてないんだけど……」


「そこで悪魔を引きずり出し、エルフとの戦争もコイツのせいだったという事で、スペード皇国とメリュジーヌ大樹海との間にある友好に何も変わりはないとアピールする目的もある」


「ギルちゃん? ねぇ聞いてる? お姉ちゃん何も聞かされていないんだけど?」


「族長のガァーラーとは文書で話を付けてある」


「本当に何も聞いてないんだけど……」


 ルゥールーは「ちょっとお祖父ちゃん、何で旅立つ前に言ってくれなかったの……」と分かりやすく頭を抱える。

 そんな重要な役目があるのなら予め言っておいてくれないと困ると、もしも「もう既に決まっていますから」と祖父に確認できないままエルフ側にとって不利な条約を流れで承認させられたら堪らないとルゥールーは小声で愚痴る。


「安心しろよ、悪魔に引っ掻き回された皇国に全面的に非がある事を認め、これから賠償の交渉に入ると宣言するだけだからよ」


「それなら、まぁ……」


 そうであるならば、いつも通り外交用のお姫様スタイルでやり過ごせば良いかとルゥールーはホッと安堵の息を吐く。


「私達は?」


 と、話が落ち着いて来たところでシルヴィは自分達は具体的に何をすれば良いのかと質問をする。


「お前らの事はぶっちゃけ知らんからな……なんだ、あれだ、悪魔の正体を看破する奇跡とか使えねぇのか?」


「時と場合による」


「あぁ?」


 シルヴィは細かい説明が必要な事を察し、また内容から優希に助けて貰う訳にもいかない為たっぷり数十秒ほどじっと押し黙り、頭の中で長文を作成する。

 急に何かを考え込むように黙り込んだシルヴィに、ギルベルトは根気強く待ちながらも段々とイライラし始める。


「目の前の存在が悪魔かどうか、は……判別できないけど、魔力の有無はわかる……あと、その悪魔が命に関わる行動を取ったら、えっと……たまに神様が教えてくれる」


「……悪魔を判別する都合のいい祝祷術はねぇが、相手が魔力を持ってるかどうかは分かるし、悪魔が命を狙って来たら啓示が降りるって事か」


「そう」


「なるほどな……啓示は悪魔に関する事だけか?」


「? いや、ユウキが死にそうになった時とかも教えてくれる」


「そうか」


 悪魔が関係せずとも、そして命の危機に瀕するのが本人でなくとも啓示が降りると知ってギルベルトは内心で気味悪がった。

 神様がそんな細かい事までわざわざ教えてくれるなんて話は聞いた事がなかったし、普通に考えてここまでの露骨な贔屓とも呼べるものは有り得ない。

 この正体不明の妹が持っているちぃと能力が関わってるのか、もしくは先代聖女の娘らしい事から母親が何かやってんのか……ギルベルトはそこまで考えて、今は後回しだと頭を振る。


「まぁいい、悪魔の正体を看破できねぇなら当初の予定通り自由に過ごして貰う」


「自由に?」


「あぁ、今夜のパーティーも含めて幾つかの行事にには出席して貰うがそれ以外は好きにしてて良い」


「なんで?」


「見た目はか弱い小娘二人でしかねぇからな、周囲に(オレ)やジェシカが居なければ何かしら接触してくるだろ……要するに撒き餌だな、何かあれば報告しろ」


 特にシルヴィの祝祷術の才能は第三皇子経由で向こうに広まっている為、何とかして仲間に引き込もうとするか、もしくは排除しようと動く事が予測される。

 特に反魔王派の奴ら自分達には天使が味方に付いてると思い込んでいるため、シルヴィもその存在を知れば自ずと自分達の味方になってくれると考えるかも知れなかった。


「お前らからは何か要求はあるか?」


「特にはないかな」


「別にない」


 ギルベルトの問い掛けにルゥールーとシルヴィの二人が即答し、その様子を見て少し言いづらそうにしながらも優希がおずおずと挙手をする。


「あの、法律とか裁判記録とか、星に関する本とかが閲覧できる場所はありますか?」


 その予想外の要求に、ギルベルトは目を細めて優希を眺める。


「……まぁ、いいだろう」


「あ、ありがとうございます!」


「ただしお前は一人になるな」


「ユウキは私が守る」


「じゃあそうしろ」


 ギルベルトは覚えていた。優希がその豊富な知識で策を練り、魔王軍とエルフの部隊を翻弄していた事を。

 次はまた何を魅せてくれるのか、自身の姉や妹よりも優希の要望は彼と好奇心と興味を刺激した。

一応優希ちゃんは弁護士志望で専門は法律関係です……計算能力とかバグってますけど()


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― 新着の感想 ―
[一言] このパーティーの頭脳にして要の優希ちゃんに興味を持つとはお目が高い
[一言] 別に理系って訳じゃないのにただ計算能力がバグってる優希ちゃん、そして普通に頭も良いって現代日本にいたら将来超有望だったろうに……神(たけのこ先生)に目を付けられてしまうとは……。
[良い点] 覚えられてた優希ちゃん! シルヴィちゃん能力と外見は最上級の餌だもんなぁ…なお中身 ルゥールーお姉ちゃんwww姉としての威厳が… 一般市民が掌ドォリルゥで悪魔は転がしやすそうだなぁww […
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