第十七話 暗躍する日本諜報員&惑星『アース』の男性事情
アメリア合衆国連邦 ニューヤング州 ホテルガンツ
アメリア合衆国連邦のニューヤング州。首都クルセイダーが政府の中核であるならニューヤング州は世界最強の列強国アメリア合衆国連邦の基盤を支えるアメリア合衆国連邦最大の商業、金融、文化の中心の経済都市である。アメリア合衆国連邦の中では超高層ビルを中核とした街並みはアメリア合衆国連邦の強大な国家である事を一目でわからせる印象を各国に与える。政治の中心である首都クルセイダーよりも人口が多く、経済の中核を意味するニューヤング州は、総人口一億六千万人を誇るアメリア合衆国連邦の中では六百万の人間が住んでおり、その数は40以上の州の中ではアメリア合衆国連邦最大の人口を誇っている。
そんな惑星『アース』で世界経済の中核ともいえる大都市には色々な肩書を持った人間がいる。その大多数はアメリア合衆国連邦の経済を支える商人達であるが、各国の経済人達もニューヤングに拠点を置いて活動している。そんな経済都市に一人の日本人男性がホテルの一室を借りてアメリア人女性と一晩を共にしていた。
「やれやれ、見た目な割には随分と肉食なお嬢さんだったな」
アメリア産のウィスキーを飲みながら高層ビルの夜景を眺めて呟く一人の日本人男性。彼の名はレオン・鈴木。日本人の父親とアメリカ人の母親を持つ日本生まれのハーフである。惑星『アース』の国家転移で日本滞在の半数以上の外国人は消滅したが、日本人として法的に認められた又は長く在籍していた人間は消滅を免れており、レオン自身も彼の母親もその一人である。そんな彼は惑星『アース』最強の国家であるアメリア合衆国連邦に支部を置いている日本人商社の社員という対面で来ているが、それは表向きの肩書である。
彼の本当の顔は日本政府の諜報機関の所属するスパイの一人である。偽名でソリッドを名乗って活動している彼の任務はアメリア政府や経済の表に出せない裏情報の入手と、アメリア合衆国連邦の重要情報の早期入手に基盤を整える事である。
惑星『アース』は世界総人口で93%が女性で占められている。そのため政治、商業、金融関係で重要な情報を入手しているのは殆どが女性である。地球で多くの政治家が綺麗系や可愛い系の女性に騙されてハニートラップに引っかかって重大な情報を奪われた様に、女性が大多数を占める惑星『アース』のハニートラップ要員は男性である。そのためレオンは重大な情報を保有している女性と接触して情報を入手する事が任務であった。
(情報入手を得るには少し時間がかかると思ったが、こんなに早く重大な情報を入手している女性と接点を持つ事が出来るとはな……)
初めは当たり障りのない様に身近な情報を入手する所から始まる。アメリア合衆国連邦に来てからレオンは自分から声をかけるまでもなく多くの女性達から声をかけられて誘われた。事前に惑星『アース』達の男性基準が酷いこともわかっていたレオンは惑星『アース』達の女性達が好感度が良くなる行動を取っていた。そのためレオンは自分が隠れ蓑にしている日本商社近辺では女性達の間では知らない人はいないくらいの人気者になり、アメリア合衆国連邦のニューヤングを本拠地に置く大手商社の重鎮の女性と関係を持つまでになっていた。
『……ソリッド』
『なんだ、起きてたのか?』
『……うん』
レオン・鈴木の偽名であるソリッドの名を英語で呟く裸の女性。アメリア合衆国連邦の公用語は地球の英語と変わらない為にレオンも英語で喋っても問題なく会話が成立していた。
そんなレオンは重大な情報源を提供してくれる若いアメリア人女性に微笑んでキスをする。女性の方もキスをしてくれた嬉しそうに笑顔になる。
『でも、俺なんかに身体をゆるしてよかったのかエミリー?』
『何でソリッド?』
『お前も知ってるだろ?俺はいくつもの女性達と関係を持ってるんだぜ』
レオンが言っている事は本当であり、レオンはエミリー以外にも多くの女性達と肉体関係をあった。『日本』で言葉が悪ければヤリ〇〇野〇と言われても仕方がない行為をレオンはやっていた。しかし、エミリーはそんな事を気にしてないと首を横に振って答えた。
『本当にソリッドは女性に優しい……私はそんな些細な事を気にならない位にとっても幸せなの。ソリッドは私に女性の幸せをいっぱい提供してくれてるんですもの』
エミリーは本当に気にしていなかった。実際に惑星『アース』では男性が大勢の女性と関係を持つ事は嫌悪感を持たれる事はなく、逆に推奨しているくらいだからだ。男性の数が極端に少ない為に『日本』の様な一夫一妻よりも一夫多妻が望まれる為、レオンの様に女性を口説いてくる男性など逆に惑星『アース』の女性達からすれば感謝する人が多いからだ。
『そんな事を言われたら男として引くわけにはいかないな……今夜は寝かせないよエミリー』
『あ……』
そして再び始まった男女の営み。ベットの軋む音と女性の色っぽい声が部屋全体に広がる。『地球』にいた時から諜報員として活動してきたレオンは惑星『アース』の女性達の男性に対する免疫のなさに感謝した。まさかこんなに容易く逆ハニートラップに引っかかってくれるとは思いもなく重要情報を入手出来たからだ。まあ、多少は思い込みが激しくて直ぐに結婚しようと迫ってきて愛が重い女が多い事には驚きはしたが、そこは諜報員としての経験によって相手の思考を誘導する様にして回避はしているが……。
こうしてレオンは今日も親日国家を作る為、日本政府に重要情報を届ける為にアメリア合衆国連邦の人種や経歴問わずに女性達をハニートラップにかけて活動している。
ーーー。
『アメリア合衆国連邦』のニューヤング州の都心部より少し離れたとある家庭。広い庭を持つアメリア合衆国連邦では一般的な住宅。地球出身でわかりやすく言えば『アメリカ』の郊外住宅と言えば想像しやすいだろう。そんな『アメリア合衆国連邦』一般的な一軒家には、数少ない男性が住んでいた。
「早くお菓子を持ってきてよ。本当に使えないな!」
その少年に言われた通りに無くなったポテトチップスやコーラといった『アメリア合衆国連邦』ではポピュラーなジャンクフードと炭酸ジュースをこの家庭に雇われた女性メイド達が持ってきた。
一般家庭にメイドを雇う事は経済的に難しいが、『アメリア合衆国連邦』では貴重な男性を世話をするために男性がいる家庭には政府から補助金が入る為に、この家庭には働き手の母親と姉が家に帰ってくるまでは数名のメイドが滞在しても苦しくない程度には補助金が入って来ている。
「僕の世話を任されてるだけでも名誉なのに、どうして気が利かないかな……!」
イライラした様に呟く十代半ばのアメリア人男性。見た目は金髪と不摂生を繰り返した様な体型のこの男性がイライラしているのは現状の自分の待遇に不満があるからだ。それは惑星『アース』では最近になって一般家庭にも出回ってきているブラウン管タイプの白黒テレビに写っているテレビ内容も含めて彼はイライラしていた。
『ハーイ、今回は世界が注目している男性国ニホンの生活をお送りします』
アメリア人のニュースキャスター達はニューヤング州と同じ位の規模を誇る高層ビルが並び立つ『日本』の首都東京から始まり日本の生活風景を撮影していく。スーツを着た男性サラリーマンが電車に急いで乗り込んでいき、制服を着た日本の学生達は男性だけで話し合う人もいれば男女と楽しく話して歩いているグループも映し出されている。
『この様にニホンは男性達が当たり前の様に学校に通い、働く事が当たり前と我々からすれば驚愕する内容ばかりですが、ニホン男性達はそれを不満に思うような事はないから驚きです』
そうだ、何故不満に思わない。あんな腐るほどいる雌犬共と同列に扱われて不満に思わないのか?テレビニュースを何回も見ても彼は不思議でしょうがなかった。そんな男としての誇りを捨ててる彼らニホン人が周りからチヤホヤされてる事も彼には我慢ができなかった。
今まで自分は気まぐれに学校に行けば自分は女性達から黄色い声をかけられて誰からも尊敬されていた。同い年の女性、学年が上の女性、そして先生からも自分は選ばれた人間としての扱いを受けてきた。しかし、日本が国家転移してから彼の立場が変わり始めた。無論、彼と視線を合わせれば挨拶を返してくる事は変わりない。だが、前と比べて自分に対する敬意がなくなった様に感じて自尊心が人一倍高い彼には我慢できなかった。
それは彼が今まで学校に登校して教室に入って群がってきたクラスメイト達が、自分に挨拶するだけで他の話題に持ちきりであるからだ。それは、世界で最も注目を集めて有名になった男性国『日本』に対する話題でクラスメイトの女性達は白熱していた。
「今週のニホン特集の雑誌買った?」
「買った買った!雑誌特集にニホン男性のアイドルグループがアメリアにコンサートを開く予定て書いてあったわ」
「それ本当!もし本当だったら絶対に学校休んでチケットを買いに行くわ!」
『日本』が転移するまで惑星『アース』で生の男性を扱った特集はないに等しかった。実際に映画やドラマでも男装が似合う女性が男性役を演じている事が殆どであり、男性の写真集なんて、気難しい惑星『アース』の男性達が許可する事も本当に稀であった。そんな状況で『日本』の男性アイドル特集や写真集が惑星『アース』に出回ると、男性達に飢えていた女性達は餌を与えられた飢えた獣の様に求めて雑誌や写真集に飛びついた。実際に日本男性の特集を組んだ雑誌や写真集は発売と同時に即完売という現象が起きている。
「私には〇〇様がいるわ!」
「結婚は出来ないけど、〇〇様がいるなら他の男に走るより〇〇様の親衛隊に入って見守った方が幸せ!」
この様に日本男性アイドルや俳優の追っかけとなった方が幸せと考える惑星『アース』の女性達が急増していた。それが逆に男性に飢えて犯罪を犯す犯罪率の大幅な低下という現象もあって、各国共に日本男性関係のグッズの規制をする所は少なくなっていた。
更に惑星『アース』の男性は横暴な男性が多いと言うが、女性達の飢えた獣の様に自分達を見ている事に恐怖を覚えて女性に対して臆病になって家に引きこもっている男性も多い事も事実である。そんな女性達から怯えて無気力に過ごしている男性達からすれば、当たり前の様に社会で働いている、アイドルや俳優としても活躍してる男性が大勢いる日本男性達に憧れて前向きになっていく惑星『アース』の男性達もおり、今では世界中の女性だけなく、男性からも多大な影響を『日本』は与えていた。
「何でだよ!……僕は世界一の男だ。何で女性に媚を売ってる奴らばかりが注目されてるんだ!」
別に彼は無視されたり虐めを受けているわけでもない。学校や家庭での生活は親や姉妹からは一人の家族としての愛情は受けている。メイド達からは主人として敬意を接している。だが、それでも彼は、異世界から転移してきた女性に媚を売ってる様に見える男性達に自分が敗北している様に写っており、それが彼の人一倍高い自尊心故に我慢が出来ずに暴れていた。




