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灰と王国  作者: 風羽洸海
第三部 帰還
123/209

6-6. レーナの願い

 岬の向こうに夕陽が隠れても、まだ辺りは充分に明るい。長い夕暮れが続くこの時季は、紫水晶の空と黄金の海とがいつまでも抱擁を続けているかのようだ。

 フィンはぼんやりと、今でもデイアとアウディアは仲睦まじいのかな、などと考えながら、街の中を歩いていた。

 一歩一歩、祈るように光のしるしを地面につけてゆく。ナナイス全体をぐるりと囲むことも考えたが、あまり範囲を広くして守りきれなかったら、皆に危険が及ぶ。

(船に避難して貰った方が良かったかな)

 商船の乗組員達は、陸を目の前にしながら船で夜を越すことにしている。レーナの光を授かった角灯をともして、光も闇も及ばない大海のアウディアに抱かれている方が、陸地の上より安全というわけだ。

(やむを得なければ、荒っぽい方法も使うさ)

 レーナにお出まし願えば、仮住まいの周囲から闇の獣を遠ざけるぐらい、造作もない。あえてそうせずに何とかしようとするから、面倒なことになるわけで。

 点々と続く光の足跡を振り返り、こんなものか、とフィンは一人うなずいた。眩しくならないように、ごく弱く、けれど闇が無視できない程度にくっきりと。加減の難しいところだが、これなら上出来だろうと自分に言い聞かせる。

 それから彼は、見通しがよく、かつ壁にもたれられる場所を探して毛布を敷き、腰を下ろした。目を閉じると、意識が自分の足跡に通じているのを感じる。闇の獣がそこを越えたら分かるだろう。

 空は菫色に変わり、海は光を失って沈黙する。大地がゆっくりと紫紺の帳に覆われ、やがていつものように、冷え冷えとした闇がやって来た。

 憎悪は以前に比べて信じられないほど弱まっているが、それでもまだ、彼らが近付いてくると悪寒がした。明白な敵意、救いようのない絶望が、いつの間にか心の中に忍び込んでいる。

 フィンは小さく頭を振り、ゆっくり立ち上がった。崩れた城壁を越え、青い光点がぽつぽつと街の中へ入ってくる。獲物を探してうろついていた一頭の獣が、かすかな境界線に気付いた。険悪な唸りを漏らし、越えるべきか否か迷って行き来する。フィンはそちらへ向かって歩き出した。

 光の境界線は、闇の眷属があえて越えようとすれば越えられるものだ。松明や篝火のように土をかけたり台を倒したりして消すことは出来ないが、わずかな痛みを堪えさえすれば済む。一度越えたら、内側に光はないのだから。

 しかし、かつて人間達は闇の獣を駆逐するのに、この手の罠をよく利用していた。越えられる程度の境界線を引き、その内側に闇の獣をおびき寄せておいて、頃合を見て境界線を強固な結界へと変えるのだ。

 後はそのまま封じ込めて夜明けを待つか、簡単に消えない火を放てば良い。かつての人間にはそれが出来た。魔術師と祭司、それに竜侯の力をもってして。

 受け継がれた忌まわしい記憶のゆえに、細く弱々しい境界線に過ぎないものが、越え難い溝となって行く手を断絶する。

 そんな理由など露知らぬフィンは、不思議に思いながら無防備にそちらへ近付いて行った。境界線の前で竦んでいた闇がざわりと動き、青い光がサッとこちらを振り向く。瞬きする間もなく、黒い影が躍りかかった。

 体の前面を庇った腕に、鋭い爪と牙が食い込む。咄嗟に片足を引いて転倒は堪えたが、肉を食いちぎられたような衝撃を残して獣が飛び退ると、よろけて膝をついた。

 今度こそ本当に食われたのではないかと、恐る恐る右腕を見る。食いつかれた場所の感覚がないだけで、やはり一滴の血も流れていない。そんなことをしている間にも、獣は再び飛びかかろうと構えている。フィンは立ち直り、それに向き合った。

「来るな。ここから先は、放っておいてくれ」

 通じないと知りつつ言葉をかける。返事の代わりに、闇の鞭が唸りを立てて風を切った。

 夜が明ける頃には、彼は例によってぼろ雑巾のようになっていた。

 よろめきながら、それでもなんとか歩いて家に向かう。レーナが傍らに現れ、そっと肩を支えてくれた。

「うう……いつまでも懐いてくれない野良犬か、野良猫を相手にしている気分になってきたよ……。声をかけては吠えられ、手を出しては引っかかれ」

 くたくたに疲れながらも、フィンはそんな冗談をこぼした。俺は平気だから心配しないでくれ、と言う代わりに。だがもちろん、レーナに対しては無用の気遣いだった。

「フィンは諦めないのよね」

 分かっているから大丈夫、と、微笑が語る。フィンは苦笑し、そのはずみにがくんと膝が抜けてその場にくずおれた。

「駄目だ、家までもちそうにないな。この辺で一休みしてから戻るよ。皆に伝えて……」

 くれ、との頼みは言葉にならなかった。フィンは持っていた毛布をぐしゃぐしゃに抱え込むようにして、街路の端に横たわる。レーナはその体にそっと触れてから、ひらりと風に舞うように身を翻した。

 ややあって、泥のように眠っていたフィンがふと目を覚ますと、白くてふわふわした温かいものに包まれていた。まだ半分寝惚けたまま、もそもそと寝返りを打つ。と、体の下でふわふわがくすぐったそうに動いた。

「……?」

 それでようやく頭がはっきりし、フィンはむくりと起き上がった。いつの間にか、レーナが本来の姿でフィンの寝床代わりになってくれていたのだ。街路をすっかり塞いで丸くなり、規則正しい寝息を立てている。

 フィンがうんと伸びをすると、レーナもぱちりと片目を開けた。満月のような金色の瞳が数回瞬きし、のそりと首をもたげて欠伸をする。フィンは枕代わりにしていた脇腹の毛並みを申し訳程度に梳かし、おはよう、と苦笑した。

 空は薄雲がかかっていたが、白っぽい光が隙間から降り注いでいる。その位置からして、もう正午近くらしい。空に手をかざすと、傷がすっかり消えているのが分かった。と、フィンのその仕草を真似るかのように、レーナも立ち上がり、翼を大きく広げてうんと伸びをする。長い尾の先が、崩れた家屋の端にひっかかって土埃を立てた。

 思わずフィンは笑い、レーナの足をぽんと叩く。

「君がそのままの姿でも走り回れるように、通りをもっと広くしなきゃならないかな」

「それは、しない方がいいと思うわ」

「通りの拡張?」

「じゃなくて、走り回ること。どんなに道を広くしても、私が走り回ったらきっと、屋根瓦が全部吹き飛んでしまうわ」

 冗談事ではないのだが、フィンはその光景を想像してしまい、声を立てて笑い出した。レーナは少しばかり傷ついたような、複雑な顔をして小首を傾げる。それから彼女は、ふわりと少女の姿になった。

「それに」言いながら、笑ってフィンに抱きつく。「この姿だと、こうしてフィンをいっぱい感じられるもの。だからいいの」

 いつもと同じようでありながら、絆を通して伝わる感情は少し雰囲気が違う。フィンは何食わぬ顔でレーナの頭を撫でてやったものの、なぜか妙に気恥ずかしくなってしまった。さり気なく身を離し、家に向かって歩き出す。

「昨夜は最後まであの境界線を越えられなかったかな」

「ええ。越えようと思えば越えられるけれど、罠じゃないかと警戒していたみたい」

「罠? そうか、なるほどな」

 具体的な説明はなくとも、なんとなく彼女の言わんとするところが分かり、フィンはふむと唸った。

「だったら、いずれはあの境界線を越えられてしまうだろうな……罠じゃないと判ってしまったら」

 その時はどうすれば良いだろうか。それまでに、彼らが近付いて来ないように仕向けられるだろうか。

 フィンがあれこれ考え込んでいると、不意にレーナが呼びかけた。

「ねえフィン」

「うん?」

「今そうやって頑張っているのって、この街に新しい人が移り住めるように、ってことよね」

「突き詰めればそうなるかな。どっちにしても、闇の眷属を遠ざけておけたら助かるし……どうかしたのかい?」

 様子がおかしいな、とフィンは気付いて立ち止まる。レーナも足を止めたが、珍しいことに、フィンと視線を合わせようとしなかった。行く手の煙った水平線を見つめたまま、考え考え、ゆっくり言葉を口にする。

「たくさん、人が来るのかしら」

 つぶやきを耳にして、フィンはようやく彼女の不安の理由を察した。手を伸ばし、ぽんぽんと優しく頭を撫でてやる。

「大丈夫、君が苦痛に感じるほどの人数は来ないよ。それに、たとえどれほど大勢が来ても、君の力ばかりを当てにさせたりしない。君に怖い思いはさせない。約束する」

 彼が誓いのしるしに右手を上げると、やっとレーナは振り向き、少し辛そうに微笑んだ。両腕を投げかけるようにして、ぎゅっと抱きつく。

「ありがとう。私も、もっと人間に慣れるように頑張る。だからフィン、……あのね、お願いがあるの」

 思いがけない言葉に、フィンはきょとんとなった。絆を結んだ時の『死なないで』を除けば、レーナが今までフィンに何かを『お願い』したことなど、記憶にない。よほど悩んだ末のことなのだろう。

 フィンはそっとレーナの両肩に手を置いて体を離し、腰を屈めて彼女の顔を覗きこんだ。

「何だい?」

 彼女が遠慮しなくてもいいように、穏やかな声で促す。

 ――返事は、本当に小さな声だった。

「あの、……私、……フィンの、……お、『奥さん』に、して?」

「…………」

 聞き間違いだろうか。それとも何かまた、久々にすっかりまったく噛み合っていない勘違いした会話になってしまったのだろうか。

 フィンは石になったように固まり、しばし絶句する。

 あんまり長い間そうして彼が沈黙しているので、レーナが心配そうに、そっと心に触れてきた。慌ててフィンは後退り、ちょっと待て、と手で制する。

「レーナ、ええと……それはどういう意味か、訊いてもいいかな。つまりその、あー……」

 弱った。何をどう言えばいいのか分からず、フィンは困惑して頭を掻く。レーナは真っ赤になって、もじもじと無意味に指を組んだりほどいたりしながら、たどたどしく補足説明した。

「だから、あの……つまり、私、フィンの、あの、……っ、ええと、そう、フィンと結婚したいの! こ、これで合ってる?」

 俺に訊かれても。

 フィンは軽い眩暈をおぼえ、眉間を押さえた。またしても黙り込んでしまった彼に、レーナがおずおずと問いかける。

「フィン……困る?」

「いいや」

 反射的にフィンは首を振っていた。困ると言えば、彼女の『お願い』を否定することになってしまう。お願いの内容はこの際置いておくとして、ともかく無下に拒否したくはなかった。

「その、困っているわけじゃないんだが、びっくりして……ちょっと、頭が働かなくなったみたいだ。すまない」

 言っている内に、何やら自分が情けなくなってくる。フィンはちょっと頭を掻いて、

「時間をくれるか?」

 当座しのぎの姑息な回答をした。それでもレーナはほっとした表情になり、大きく息をついてこっくりうなずく。

「驚かせちゃってごめんなさい。ええ、別に、すぐってわけじゃないの。ただ、あの……人がいっぱいここに来たら、フィンはもしかしたら、そっちの方が大事になってしまうんじゃないか、って」

「俺が新しい住民の中から相手を見つけて結婚すると思ったかい?」

 気が早いよ、とフィンは苦笑する。すると意外にもレーナは、フィンの言葉の意味がよく分からない様子で目をしばたいた。ちょっと考えてから、ああと思い当たった顔になる。

「あ……ええと、あのね、フィンがもし人間の女の人と愛し合って結婚するなら、それはいいの。素敵なことだわ。そういうことじゃなくて、つまり……」

 説明しようとして言葉を探し、レーナはまた赤くなる。上気した両頬に手を当てて、あー、うー、などと小声で呻いた。

「私、欲張りよね。フィンとは絆を結んでいるのに、それだけじゃ、足りない気がして。フィンが、人間のひとたちばかり大事にしたらどうしよう、私のこと、構ってくれなくなったらどうしよう、って……そうしたら、やっぱり、あの、結婚したくなって」

 独り言のように言い訳するさまが何とも微笑ましくて、フィンは驚きが引いていくと、今度は笑いを堪えるのに苦労するはめになった。

(寂しがりなんだな。やっぱり子犬みたいだ)

 くすくす笑いを押し殺し、そんなことを考える。だがしかし、レーナの言葉にはまだ続きがあった。

「それにね、フィン、昨日名前のことを話していたでしょう。家門名と家族名のこと。新しいフィンの名前が、子供に受け継がれるんだ、って」

「え? ああ、うん」

 急に話が飛んだもので、フィンは目をぱちくりさせる。が、話題は脱線したわけではなく、終点まで突き進んだだけのことだった。

「その時に思ったの。やっぱり私、フィンと子供を育てたい、って」

「――……っっ」

 今度こそ堪えきれず、フィンはその場にしゃがみこんでしまった。

「ちょ……っと、待ってくれ。いくらなんでも気が早すぎないか? 君達は結婚も子育てもゆっくりなんだと話さなかったか?」

「ええ、そうよ? だから、今すぐって話じゃないんだけど。あの……いけなかった?」

「…………」

 いけなかったも何もいけるとかいけないとかいう話でさえないような。じゃあ一体どんな話だと言うと、もはや何がなんだか分からない。

 フィンはよろよろと立ち上がり、心配そうなレーナに手振りだけで謝った。

「すまない。やっぱり、今は頭が働かないから、……また今度」

 まったくもって情けない限りだったが、それだけ言うのが精一杯で、彼は痛む頭を抱えて家に向かう。レーナは少し悪かったと思っているのか、一緒には来ず、ただ見送っていた。


 仮住まいに入ると、中ではフィンの家族が三人揃って、商船から買った荷の中身を点検していた。他の面々はいつものように、家を建てたり資材を運んだりと力仕事に精を出しているのだろう。

 やつれた顔で戻ってきたフィンに、ネリスが眉を上げた。

「お帰り。なんだか疲れた顔してるね。道端で寝てたんじゃなかったの?」

「ああ、寝てたよ。それとは別件で疲れた」

 フィンは戸口によりかかって呻いた。家族の顔を見ると、今しがたの出来事を自分ひとりで何とかしようという考えは思い浮かばず、彼は困り果てた顔でつぶやくように言った。

「どうしたらいい?……レーナが、結婚したいって」

 即座にふたつの叫びが上がった。

「ええっ!」

「誰と!?」

 ファウナは目を真ん丸にし、ネリスは腰を浮かせて噛みつかんばかりに問う。フィンはまだ半ば思考が停止したまま、ぼそりと答えた。

「……俺と」

 途端に、部屋の空気が一気に白けた。なんだこの反応は、とフィンが訝る間もなく、

「なぁんだ」

 ネリスが失笑して、浮かせた腰を元通り落ち着けた。ファウナも苦笑し、フィンに向かって、しょうがないわね、とばかりに言う。

「驚かせないでちょうだい。レーナちゃんが竜のお婿さんを連れてきたのかと思ったじゃないの」

「えっ……」

「いまさら何を慌ててるんだかねー。うちのお兄は本当、どうしようもないね! レーナがお兄一筋なのは前から分かってたじゃない」

 馬鹿馬鹿しい、とネリスは両手を広げ、何事もなかったかのように作業に戻った。フィンは当惑し、助けを求めてオアンドゥスを見る。が、こちらもやはり、息子が何をそんなに困っているのか分からない、といった表情だった。ありがたいことに、一応、相手はしてくれたが。

「まあ、今すぐという話じゃないんだろう?」

「それは、もちろん。そうですが」

 もごもご答えたフィンに、ネリスが豆の麻袋からゴミをつまみ出しつつ、

「だったら、のんびり準備すればいいんじゃないのー?」

 ついでのように応じる。

 まさかこんな、自分以外の誰もがとうに了承済み、のような反応を返されるとは思っていなかったので、フィンはすっかり気力が果てて、敷居にずるずる座り込んでしまった。

 しばし放心してから、彼は誰にともなく呻いた。

「想像つかないんだ。俺が……」

 結婚、だなんて。今すぐでないにしても、レーナと結婚して、しかも子供まで?

 頭を振ったフィンに、ファウナが同情的な言葉をかけた。

「若い頃はそういうものよね。自分が歳を取って、親やほかの大人達と同じように人生を歩んでいくんだってことが、現実として考えられないものよ。実感がないのね」

 言われるままにフィンはぼんやりとうなずき、それからはっと気付いて表情を変えた。

 実感がない、どころではない。事実、自分は少なく見積もってもまだあと何十年かは、親と同じようにはならないのだ。結婚して、子供を育てている両親と同じようには。

(年齢の数字だけは増えても、今のおじさんみたいにはなれない)

 暗い顔になったのを隠すように、立てた片膝を抱え込み、顎を埋める。気付いているのかいないのか、ネリスがあっけらかんと言った。

「そう? あたし、お兄なら簡単に想像つくけどなぁ。結婚はともかく、子育ては普通にやってそうじゃない。赤ちゃんのおむつ換えたり、ちびっ子の手を引いて買い物してたり」

 言いながらもう、自分で笑い出している。フィンは半眼になって相手を睨み、げんなりと唸った。

「それは、俺が所帯じみてるってことか?」

「あれ、自覚なかったの?」

「…………はぁ」

 ため息。フィンは頭を振って立ち上がった。まったく、この妹にかかると、ことごとく物事が単純になってしまう。悩んでいたのが馬鹿らしくなって、フィンはネリスのそばへ行くと、金髪の頭をくしゃくしゃにかきまわしてやった。

「何よ、ちょっと、やめてよもう」

「俺が所帯じみてるとしたら、その何割かはおまえのせいだぞ。自覚しろ」

 ああもう、何だっていいか。

 そんな気分になって、フィンは苦笑をこぼした。と、それを待っていたように、ふわりと傍らにレーナが現れる。

「フィン、元気が出たみたいね。良かった」

「ネリスのお陰でね」

 皮肉っぽく応じ、フィンは仕上げにもう一回、妹の頭をかき回す。怒ったネリスに手をはたかれたが、痛くはなかった。

(まだ、いいじゃないか。まだしばらく、このままで)

 急ぐことはない。急ぎたくもない。

 せめてもうしばらく、この家族の一員として自然に溶け込んでいられる間ぐらいは。

 フィンは胸の痛みを隠すように、笑った。

 

 ――それから半月ほど後。

 月が明るい時期を選び、移民の第一陣が到着した。

 希望を胸に抱いた人々がナナイスの土を踏み、若い竜侯に歓迎されたのは、一〇八七年、五月のこと。

 その日付は、新しいナナイスの始まりとして、後々まで長く記憶されることになる。とはいえ当時はまだ誰も、そうと予想はしていなかった。



(第三部・完)

次の頁から閑話(番外)が3話と四部の人物紹介とが入ります。

(第一・二部同様、元々は「幕間」も入っておりました)

本編の続きは「第四部 1-1.三年目」からになります。

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