表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/12

第12話:魔神が愛したオムライス

【回想・カイトと住んでいたマンション】







 深夜2時。






 ――ガチャ

 玄関が開く音。




ソラ:

 あ、おかえりなさい。





 遅かったね。今ご飯、温め直すね。





カイト:

 あぁ? 飯?






 いらねーよ。


 




 叙々苑行ってきたんだから。








 腹いっぱいだっつの。







 カイトはネクタイを緩めながら、




  ソファに倒れ込む。




ソラ:

 え……でも、電話したじゃん、




  帰ったら食べるって……



カイト:

 しつけーな!



 だいたいお前の飯、






 貧乏くせえんだよ。














 ――ガシャーン!!










カイト:

 ……おいソラ、片付けとけよ。

 





【現在・ソラの部屋】



《配信中》



◼️タイトル:【引っ越し】荷造りします!




 部屋中、段ボールの山。




ソラ:

 ……というわけで、

       だいたい片付きました!



 お昼休憩にするので、

       一旦配信切りますねー。



 また夜に……



ティアグラ:

 ……ソラ、腹が減った。


 手が止まっているぞ。



ソラ:

 あ、はい! すぐ何か買ってきますね。



【コメント欄】

: ん?

: 切れてないぞ

: 画面斜めってるw

: 放送事故くる?



ティアグラ:

 買う? なぜだ。

 そこにキッチンがあるだろう。

 私は、お前の作った



    『オムライス』



      が食べたいのだ。


ソラ:

 え……

 わ、私の手料理なんかでいいのですか?




 不意にフラッシュバックする記憶





 ――ガシャーン!!





  あの日、カイトに投げ捨てられた私の



  ――手料理



ティアグラ:

 お前が作るものがいいのだ。



 ティアグラはじっと私を待っている。



 でも、怖い

 もし食べて、不味いと言われたら

 また、お皿を投げられたら



【コメント欄】

: ソラちゃん?

: なんか怯えてないか

: 様子がおかしいぞ


 ……ううん。


 ティアグラさんは、カイトとは違う

  私は震える手を押さえつけ、

   フライパンを握った。



 バターの香り 

 ふわとろの卵



 チキンライスの上に


  黄色い布団を乗せる


   仕上げに


    ケチャップで文字を書く




 『マ王』




ティアグラ:

 ……っ!!



 ……美味い。



 卵の甘みと、酸味の効いた米が――



 ……口の中で踊っているぞ!




 パクパクと、

  すごい勢いでスプーンが進む。



ティアグラ:

 天才か?


 お前は宮廷料理長になれるぞ。


  いや、魔界の食材を使えば、


   神をも唸らせるかもしれん。


ソラ:

 ほ、本当ですか……?


 貧乏臭いとか、思いませんか……?



ティアグラ:

 は? 何を言っている。


 これは至高の黄金比だ。


 ……おいソラ、おかわりはないのか?


 これなら鍋一杯分はいけるぞ。


 空になった皿を突き出される。


 一粒も残っていない。


 綺麗に、全部食べてくれた。


 【コメント欄】

 : 優しい世界

 : ティア様ベタ褒めじゃん

 : てぇてぇ……

 : 尊すぎて泣く


ソラ:

 ……う、ぐすっ……


 涙が溢れた。

 止めようとしても、

 ポロポロとこぼれ落ちる。



ティアグラ:

 む? なぜ泣く。



ソラ:

 嬉しくて……

 捨てられなくて、

 よかった……っ



 私が泣き崩れると、

  ティアグラは困ったように眉を下げ

   やがて優しく

    私の頭を撫でてくれた



ティアグラ:

 ……捨てる? 誰がだ。



 ティアグラの声の温度が下がる。

 静かな、けれど絶対的な憤怒。



ティアグラ:

 こんな至高の糧を粗末にする


  愚か者がいたら言え


   私がその国ごと消し飛ばしてやる。


    その過激で、不器用な優しさに。



 私の胸のつかえが

  溶けていくようだった。



【コメント欄】

: !?

: 国ごとwww

: さすが魔王様

: スパダリすぎる

: 「捨てられなくてよかった」って重いな……

: 前の男か?

: 許さん

: 全力でソラちゃんを推すと決めた





【数時間後・マンション前】



 部屋は空っぽになった。



 私は一度だけ振り返り、

  ポストに銀色の鍵を入れた。



 ――コトン



 軽い音がした。


  カイトとの思い出も、

   惨めだった日々も。


   全部、この部屋に置いていく。



ティアグラ:

 行くぞ、ソラ。



 新居しろが待っている。



 ティアグラが手を差し出す。



 私はその手を強く握り返した。



ソラ:

 はい!



 体が浮き上がる。

 眼下には、灰色の街並み。

 私たちは雲を突き抜け、

 真っ青な空へと飛び出した。



 ――段ボールの隙間に挟まったスマホが、


    空へ飛び立つ二人の後ろ姿と、


     青空を映し続けていた。



【コメント欄】

: 行っちゃった

: 神回だった

: 末長く爆発しろ

: 切り抜き班仕事しろ

: ありがとう

: 88888888



(第12話 完)

(第1章 完)


これにて第1章は完結となります。


第1章をダイジェストにした

 同じタイトルの短編も

  ご用意致しました。

   そちらも宜しくお願い致します。


続く第2章では、新キャラも登場し、

 さらに物語が動いていきますので、

  ぜひご期待ください!!m(_ _*)m


また、

 【評価★ ★ ★ ★ ★】

 【ブックマーク】

 【ご意見・ご感想】


などを頂けます様、

 心より宜しくお願い申し上げます。

伊部 拝(ᴗ͈ˬᴗ͈⸝⸝)ペコリ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ