第11話:アンケで引越し先決めるよ
【回想・中級ダンジョン「湿り気の洞窟」】
《クエスト更新:ルート確保》
[難易度:C (推奨Lv.15〜)]
《⚠ WARNING : MASS OUTBREAK》
[MOB] スケルトン ....... 10
[ Total Threat: C (Fatal) ]
カイト:
――チッ、
おいソラ。行ってこい。
ソラ:
え……?
で、でも、
カイト:
うるせえな。
いいから行け!
――ガツン
背中を蹴られた。
暗闇の奥から、
カタカタと
骨が擦れる音が聞こえてくる。
怖い
助けて
私は、使い捨ての「警報機」兼「囮」
◇
【現在・未踏破区域】
――ガサッ!!
岩陰から音がした。
私はビクリと身構える。
(何か来る……!)
あの時と同じ、肌を刺すような殺気。
トラウマが蘇りかけて、足がすくむ。
飛び出してきたのは、
獅子と山羊の頭を持つ怪物――キメラ。
推定レベル80超えのSランクモンスター。
ソラ:
ひっ……!
――ギャオオオオオン!!
キメラが咆哮を上げ、
私に飛びかかろうとした、
その瞬間。
ティアグラ:
……あ?
隣を歩くティアグラが、
不機嫌そうに一瞥した。
ただ、それだけ。
――ピタッ
空中でキメラの動きが止まる。
――次の瞬間
「キャイン!?」
と情けない声を上げ、
尻尾を巻いて脱兎のごとく逃げ出した。
ティアグラ:
チッ。近隣住民の質が悪いな。
新居の庭で騒ぐなと言っておかんと。
ソラ:
……(ポカーン)
魔王様の「睨み」だけで、
深層が散歩コースになってる。
私はホッと息を吐き、
改めて隣の彼女を見た。
今の私は、捨て駒じゃない。
最強のパートナーの、
隣を歩く「オーナー」だ。
ソラ:
よし……行きましょう、ティアグラさん!
最高の物件を探しに!
《配信を開始しました》
◼️タイトル:【新居探し】深層エリアで物件内見ツアーします』
【コメント欄】
: タイトル二度見した
: 深層で内見www
: 不動産屋も来ない場所だろ
: 命がけの家探し
(視聴者数:6,000人 ↗)
ソラ:
今日は、ティアグラさんの希望で、
ダンジョン内に拠点を
構えることになりました!
候補は2つ!
まずは一つ目です!
◇
【物件No.1:水晶の地底湖】
視界が開ける。
そこは、巨大なドーム状の空間。
壁一面に生えた水晶が青白く発光し、
中央の湖を照らしている。
ソラ:
わぁぁ……! 綺麗……!
見てくださいこれ!
天然のイルミネーションですよ!
ティアグラ:
ほう。水質も悪くないな。
これならいつでも水浴びができる。
水晶の魔力密度も高い。
美肌効果がありそうだ。
【コメント欄】
: 幻想的すぎる
: 映えスポット確定
: ここに住めるとか羨ましい
: 湿気すごそうだけど魔王様なら平気か
◇
【物件No.2:天空の浮遊遺跡】
次は、さらに奥へ進んだエリア。
広大な縦穴空間に、
ラピュタのように浮かぶ古代の遺跡群。
私たちは飛行魔法で、
その一番大きな
「浮遊島」
に降り立った。
ソラ:
た、高い……!
でも見晴らし最高ですね!
誰にも邪魔されないし、
まさに「秘密基地」って感じです!
ティアグラ:
うむ。
下等生物どもを見下ろして
暮らすのも悪くない。
【コメント欄】
: 男のロマン!!
: 秘密基地感やばい
: ここなら絶対安全だな
: 眺め最強
◇
【選択の時】
ソラ:
どっちも素敵すぎて選べません……!
うーん、どうしよう……
私が悩んでいると、
ティアグラが私の顔を覗き込んだ。
カイトの時とは違う。
私の意思を、待ってくれている瞳。
ティアグラ:
ソラ、お前が決めろ。
ソラ:
えっ? 私が……ですか?
ティアグラ:
そうだ。
お前が
『綺麗だ』
と笑って過ごせる場所。
それこそが、私の城に相応しい。
ソラ:
……っ
(全肯定……!)
私が決めていい
私の
「好き」
を、ティアグラは叶えてくれる
なら、みんなにも相談してみよう。
ソラ:
視聴者のみんな、アンケします!
私たちの「新居」、どっちがいいですか?
《アンケート機能を使用します》
〜Q. ソラと魔王様の新居はどっち?〜
①『水晶の地底湖』
②『天空の浮遊遺跡』
【コメント欄】
: ①!水着回期待
: ②だろ!ロマンの塊
: 迷うわww
: ティア様には②が似合う
ソラ:
ふふっ、みんな迷ってますね。
じゃあ、結果が出るまで……
ここでお昼ご飯にしましょうか!
私はリュックから、
タッパーを取り出した。
中身は、
今朝早起きして作ったオムライス。
ティアグラ:
おお!
ついに来たか!
私のオムライス!
クールな魔王様が、
尻尾を振って目を輝かせる。
こんな幸せなピクニックが、
ダンジョンの最深部であるなんて
私は、
心からの笑顔でケチャップの蓋を開けた。
(第11話 完)




