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第10話:【外配信】お買い物デート


【回想・カイトの部屋(深夜)】



 底冷えするフローリングの冷たさが、

  薄いカーペット越しに伝わってくる。



カイト:

 おいソラ。お前はあっちの床で寝てろ。



 俺のベッドに入ってくんなよ、

  狭くなるから。



ソラ:

 ……うん。わかったょ。



 おやすみ、カイト。






 硬いょ 



 寒いょ



 でも…




 私にはここしか居場所がないから


……………


………


……



.




【現在・ソラの部屋(朝)】


ソラ:

 ……ん、ぅ……



 目が覚める。

 背中が――痛くない?



 いや、重い

 けれど、ものすごく温かい



ティアグラ:

 ……むにゃ。動くな、抱き枕。

 


 狭い万年床の上で、



   ティアグラが私に手足を絡めて



             熟睡していた。




 ツノは隠してる方が好きかな



 無防備で、可愛らしくて



ソラ:

 (あっち行ってろって、言われないんだ……)



 じんわりと胸が温かくなる



 と、ティアグラがぱちりと目を開けた。



ティアグラ:

 ……おはよう、ソラ。



 しかし、この寝床はどうにかならんのか。



 床板の硬さが直に伝わってくるぞ。



 拷問か?



 不満げに腰をさする魔王様。



 確かに、煎餅布団一枚じゃ限界がある。



ソラ:

 そうですね……あ、そうだ。



 ティアグラさん、今日、



 買い物に行きましょうか。



 私、買いたいものがあるんです。





【高級家具店・ベッドコーナー】



 店内に並ぶ、煌びやかな家具たち。



 以前の私なら、

  値札を見ただけで逃げ出していただろう



ティアグラ:

 ほう。



  人間にしては、

   なかなか良い趣味をしているな。




 ティアグラが一直線に向かったのは、

         店内で一番高いエリア。




 『王室御用達』

 



 のポップが飾られた、超高級ベッド。




 お値段、なんと200万円。



ソラ:

 に、200万……!?



 て、ティアグラさん!



 こっちのセール品なら5万で……



ティアグラ:

 却下だ。



 おいソラ、ここに乗ってみろ。



 ――ボンッ



 ティアグラに腕を引かれ、

 私はキングサイズのベッドに倒れ込んだ。



ソラ:

 ふあ……っ!?



 雲だ



  体が優しく沈み込んで、



   包まれるような弾力



    今まで私が寝ていた



    「床」とは、次元が違う



ティアグラ:

 どうだ? 悪くないだろう。



 これなら、私が抱きついても狭くない。



  ティアグラが隣に寝転がり、



   私の腰に手を回す。



    店員さんが顔を赤らめて見ている。



ソラ:

 あ、あの、

  ティアグラさん!

    お店ですから! ( ˶ ̇ ̵ ̇˶ )



ティアグラ:

 ふん、知ったことか。



 ソラ。


  お前は昨日、



   寒そうに身を縮めていただろう。



    私が管理する以上、



     所有物おまえの健康管理も



      義務だからな。



 何それ。



  優しすぎる。



   ――ズキュン



  って、



   いつから私が管理される側



    になったの??



  まいっか。



ソラ:

 ……買います。これ、ください!



 私は震える手でカードを出した。



 一括払い。



 カイトに搾取されていた頃には



  想像もできなかった



   私だけの選択





【同日夕方・ソラの部屋】








《配信を開始しました》








◼️タイトル:【ご報告】スパチャで魔王様のベッドを買いました!』





ソラ:

 はーい、ソラです!




 みんな、

   昨日はたくさんのスパチャありがとう!




 そのお金で……じゃじゃーん!




 買っちゃいました、超高級ベッド!




【コメント欄】

: おおおおお!

: いくら?

: 200万!? すげえww

: ソラちゃん出世したな(涙)

: ティア様への貢ぎ物か

: 一緒に寝るの!?

: 早く見せろ

: 早く見せろ

(視聴者数:5,200人 ↗)



ソラ:

 今、配送業者さんが下まで

           来てくれてます!




 もうすぐ届きますよー!




 ティアグラさんも楽しみですよね?




 カメラを向ける。




  部屋の真ん中を片付けて、


   待機しているティアグラ。


    ワクワクしているのか、


     尻尾(隠せているつもり)


      がパタパタ揺れている。



ティアグラ:

 まあな。



 あの雲のような寝心地……悪くなかった。




 今日からは熟睡できそうだ。




 ――ピンポーン



ソラ:

 あ、来ました!



 はーい!



 私はスマホを持って玄関へ走る。



  ドアを開けると、



   作業着のお兄さんたちが



    困った顔で立っていた。



配送業者:

 あー、すみませんお客様。



 ちょっと……無理っすね。



ソラ:

 はい? どうしました?



配送業者:

 これ、入りませんね。



ソラ:

 ……はい?



配送業者:

 いやこれ、


  どうみてもこの


   ――狭い部屋


    には居ないっすよ。



ソラ:

 え……



 ええええええ!?



 そ、そんなぁ!



【コメント欄】

: wwwwwwwww

: 【悲報】入らない

: クッソワロタ

: サイズ確認しろよwww

: 1DKにキングは無理だろw

: 返品? キャンセル料?

: 無計画www

(視聴者数:8,000人 ↗)



ソラ:

 ど、どうしよう……!

 ティアグラさん、入りません!



ティアグラ:

 ……なんだと?



 私の安眠が、



  この



   ――薄汚い扉



    ごときに阻まれると言うのか?



 ティアグラがゆらりと立ち上がる。



 右手に、

  黒い稲妻がバチバチと音を立てる。⚡️⚡️



ティアグラ:

 なら、壊せばいいだろう。



 空間ごと拡張してやる。



ソラ:

 だ、ダメです!!



 ここ賃貸! 敷金! 違約金!



 私の信用情報が死にます!!



 必死でティアグラの腕にしがみつく。



配送業者:

 あ、あのー……



 とりあえず今日は持ち帰りでいいすか?



ソラ:

 はい……すみません……うぅ……



 ――バタン



 ドアが閉まる。



 残されたのは、



  片付けられて何もない部屋と、



   ――煎餅布団だけ。



ソラ:

 終わった……



 ベッド代200万……



 がっくりと膝をつく私。



 コメント欄は大爆笑の嵐――



ティアグラ:

 ……ふん。



 全くだらしない家だ。



 王の寝具ひとつ受け入れられんとは。



 ティアグラが部屋を見渡し、

  ふと何かを思いついたように言った。



ティアグラ:

 おいソラ。



 こんなウサギ小屋、引き払ってしまえ。



ソラ:

 え?



 でも、急に引っ越しなんて……



 物件探しとか審査とか……



ティアグラ:

 審査?



 いらん。



 土地ならあるだろう。



 誰にも邪魔されず、



  どんな大きな家具でも置ける、



   広大な土地が。



 ティアグラが指差したのは――



 テーブルの上に置いてあった、



  ダンジョンの地図



   その奥深く



    誰も立ち入れない



    『未踏破区域』


ソラ:

 ……え



 まさか、ダンジョンに住むんですか!?



ティアグラ:

 当然だ。



 私が、最高キングサイズの城を作ってやる。



【コメント欄】

: ファッ!?

: ダンジョン移住計画www

: その発想はなかった

: 新章突入か

: 魔王城建築編、楽しみすぎる

: ワクワクしてきた



 こうして。



 入らなかったベッドをきっかけに。



 私たちは



  「マイホーム」



   を建てることになった。



(第10話 完)


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