TWENTYSECOND:雪国
プレイ四日目。
朝早起きしてログイン。今日は寝坊しなかった。
場所は最初の街。椿のお務めを迎えに行ったからだ。
さてと、まずは榎の進化先見てみよ。
『深緑魔狼・成』 深緑魔狼の成体。体が成長し、魔力、体力が上昇する。
┗必要素材:深緑魔結晶 1個 上等肉 5kg
『深緑魔狼・無垢之童』 外見はそのまま、魔力が大幅に上昇し、深緑魔狼の自由度が増す。
┗必要素材:聖木の枝 1個 深緑魔結晶 2個
『深緑魔狼・翼子』 翼が生え、空を飛ぶようになる。
┗必要素材:飛竜核 1個 翼獣核 3個 深緑魔結晶 1個
『深緑魔狼・聖』 ????
┣開放条件:神獣に会う。
┗必要素材:真実(消費しない) 永遠(消費しない) 聖を纏う物 1個
うーん。意味不明。
少なくとも今のところは無理っぽい。
『聖』に関しては…聖を纏う物っていうのはこの眼とかで良いのかな。
真実はある。けど永遠?ほかにもイベントがあるのだろうか。
ま、私ではどうしようもないな。
どうするか…あ。
「あ、早いっすね。おはようございます!」
「あ、おはようございます。野良猫さん」
「いいっすよ敬語使わなくて。自分高校生っすから」
「でも一応先輩ですし」
「先輩…先輩かあ」
「で、野良猫さんは何を?」
「ああ。今お使いクエスト中で、この街の商人のとこへ行く途中っす」
「へえ。あ、そうだ。このアイテムって何処で手に入るか教えてくれません?」
「ん?どれっすか?」
進化先一覧を見せる。
「おお。流石テイムっすね。えっと…うわそこそこレアアイテムばっか。真実?永遠?なんだこれ」
「とりあえず深緑魔結晶というのは?」
「それなら結晶洞窟っすね。推奨レベル50のダンジョンっす。そこの宝箱にいろんな色の魔結晶が入ってる事があるのと、魔晶岩兵を倒すとドロップすることがあります。あ、魔晶岩兵は緑のを倒さないと深緑魔結晶は出ないっすね。いろんな色のがいるんすけど、こいつは岩小兵ではなく、デカいゴーレムっす。防御力が高いんでめんどいんで、普通は宝箱メインっすね」
「なるほど」
「場所は天境山脈の…このへんっすね。近くの街の『雪国アーマーデル』っていうとこに行けばすぐ分かるっすよ」
「けっこう遠い…」
「恋くんさんに頼むと一瞬っすよ。あの人、神エイムなんて次元じゃないっすから」
「迷惑じゃない?」
「俺らなら運賃取られますけど、柊さんならタダっすよ。メッセ送りますね」
7秒後、私の目の前に矢が刺さる。
直後恋くんが登場。
「わっはや」
「早すぎっすよ」
「ちょうど暇だったんですよ」
「その割にはちょっとダメージ受けてますし、矢も消費して…」
「さ、柊さん。何処に行きたいんですか?」
「え?あ、じゃあ雪国アーマーデルってとこまで」
「はい。では掴まってください」
手を握る。
「今度は失敗しませんから」
◆◇◆◇
ホントに一瞬で到着。狙撃手ってめちゃくちゃ便利?
いやたぶん恋くんの精度が凄すぎるだけだ。
「そういえば恋くん、学校は?」
「え?ああ、僕社会人ですよ」
「え?」
「今はプロゲーマーですね。僕結構有名人ですよ。普段はゲームの練習、大会ですけど、偶に配信もやってます」
「ああ、そのモジュールリアルと違うんだった」
「いや、外見はほぼリアルと同じですね。顔を覚えてもらわないといけないので。まあ髪色と目の色、ついでに髪型ちょっと変えただけです」
「ん?」
「ネットで調べれば出てくるんで言いますけど、22歳の身長146cm童顔男。だいぶ珍しいですね」
「年上!?」
「よく言われます」
まじか。あとで調べよ。
「因みにギルマスもウチの事務所所属ですよ。チーム名『戦国浪漫』でヒットします」
「へえ〜」
正面を見ると、大きな門。
その前には門番。
そして出るログ。
【状態異常:体温低下 LV2 を受けた】
【徐々にSPが減少】
寒い。とはいってもゲーム的な補助で耐えられないほどではないが、それでも寒いと感じる。
「恋くん。寒いんだけど…」
「え?あ、すいません!僕常時寒冷耐性あるんで忘れてました」
渡されたのは綺麗な腕輪。金を基調とした腕輪で、真ん中に大きな橙色の透き通るような宝石。
太陽の模様が宝石の中心に浮かんでいる。周りには草花のモチーフが施され、芸術品のようだ。
〔太陽明暖の腕輪 レアリティ:AA 品質:S 耐久値:30/30〕
┣効果:状態異常:体温低下 をLV3まで無効化
┣効果:氷属性耐性(中)
┗備考:あったかい
けっこう良いもののようだ。
少しブカブカだったが、腕を通すと縮んでピッタリになった
「ありがと。これ幾ら?」
「え?お金はいいですよ」
「いやそれは流石に」
「どうせ僕は使っても意味ないんで売るつもりでしたし」
「売ったら幾ら?」
「それはまあ3万ほどには…」
「はい。5万G」
「え?会話が噛み合ってない気が」
「ここまでの運賃も含めて」
「いやいや」
「私そこまで図々しくないから」
「…まあそこまで言うなら」
「さて、私はこの街回ってから落ちるけど、恋くんは?」
「あ、僕も少しこの辺りに用があるんで、別行動でいいですか?」
「おっけー」
「あ、あと…」
「ん?」
「…こ、この前の話は気にしないでください」
「了解」
「では」
◆◇◆◇
さて、美しき雪の都アーマーデル。
中世風の街だがところどころに雪対策の建築設備が見られ、街全体青を基調としたホントに綺麗な街。広場の中心には荘厳な魔導師の氷像が立っている。
看板を読むと「賢者アリアストルア」。嘗て絶凍龍フィリーゼスを永久凍土に封印し、世界氷結を未然に防いだ英雄らしい。
世界氷結ってなんだよ。
武器屋は氷属性ばっか。この短剣とかめちゃくちゃかっこいい。
凍竜牙の短剣とか、氷雪無影の弓とか。
ま、私には関係ないけど。私もかっこいい武器使いたいなぁ……
NPCに聞くと、結晶洞窟はこの街の更に北にあるらしい。
まあ洞窟は大学から帰ってからでいいか。
朝日とそれに映える雪は絵画のようだ。スクショ。
そのあとは街中をぶらつく。行く時間まではあと二時間くらいあるし、ワープポイント登録もしたから闘技場でも行こっかな…
『あのぅ…』
「え?」
振り返ると、赤い髪の女性。
NPCだ。
『この子、知りませんか?』
出された写真には、同じく赤い髪の少年。
「いえ」
『そうですか…やっぱり森かなぁ』
【ミニクエスト:雪の国のお姉さんの困りごと】
お、なんか出た。
受諾っと。
【受諾した】
『探すの手伝ってくれるんですか!?』
「ええまあ。とはいっても少し用事があるので、あと二時間ほどですが」
『ありがとうございます』
「それで、この男の子は?」
『私の弟の、トウカです。先日薪を取りに行ったっきり帰ってこなくて…』
「薪を取りに行く森とは?」
『すこし東の、雪狼王の森です』
「なんか狼モンスターがいそうなとこですね」
『いえ。雪狼はいないんですけど、昔から雪狼王が住んでいるという伝説がありまして…まあ目撃情報も無いですし、比較的安全です。奥に行くと入り組んでいてたまに行方不明者が出るってくらいの…』
いかにもなフラグ。
「森には捜しに行ったんですか?」
『はい。ですが浅いところです。奥には行かない様に言いつけているんですけど、どこにもいないのでやはり森の奥に迷い込んでしまったんだと…』
「わかりました。ではまず行ってみましょうか」




