王子も通常通り変態。思い出せないのです
少し短いです。
流血シーンが御座います。
お気をつけください。
「おはよう。ユキノ、君は本当に素敵だね」
朝起きて、清々しい顔をしているシェルベートを拝むのは良しとしよう。
朝日が差し込んできらめく髪は、一層シェルベートの美形さを際立たせているし、何よりヤッた後だから…は・だ・か。なんだよね。
私はぐふふふ。と変な笑い声が聞こえないように目の前のシェルベートに頬を染める。あぁ、いつ見ても良い。この引き締められた筋肉…胸筋なんて特に私好みの形だし、鎖骨なんて何それ!水入れてほしいの!?ペロペロしちゃうよ!?ってぐらいの綺麗な鎖骨!
息遣いが荒くなるのは仕方のないことだけど、今の現状にみるみるうちに冷めて行く私。
「シェルベート、私の手首と足首についている物を取ることって可能かな?」
そう、あろうことか私の願いを聞き入れてくれたかのようにシェルベートルートに戻っていたのだ。
しかも、先程のシェルベートの発言からコレは第二章の幕開けである。
私の今の現状は勿論、縄で縛られている緊縛プレイ真っ只中。
シェルベートは縛ってある縄に指を添えてにこやかに笑った。
「不可能だよ」
ですよねー。淡い期待は砕かれ、私はこの後のことに頭を巡らした。
第二章は確かシェルベートが少し離れたところに視察に行って、付いて行くのと残るというルートがあった。付いて行くルートを選ぶと、視察に行く場所は生誕祭をしていて、主人公がそこでナンパされシェルベートがヤキモチ&怒るだったはず。
逆に残るルートを選ぶと、ミカエルが私を殺そうと庭園の池に突き落とし嘲笑うシーンだった。
うん。今2月級の寒さなのにミカエルは鬼畜だよね。そこにゲーム当時は惚れてたんだけど…。
私は考える。
よし、シェルベートに付いて行こう。
シェルベートについて行った方が違う土地で逃げれる可能性があるはずだから。これが最後のチャンスだと思おう。
腹を括って顔をあげた。
「ユキノ、僕はこれから視察に赴かなければいけない。君は僕に付いてくる?それとも残る?」
サラリとしたシェルベートの髪が私の頬を撫で、優しげな瞳が縛られて身動きできない私の顔を覗く。
怒りだけは買わないように安全選択でこの場を回避。
「もちろん、付いて行くわ」
私の返答にシェルベートは当たり前だよね、と言った風に顔にかかった髪を退けてキスをしてくる。
その長さに身を捩るがシェルベートは赤ん坊をあやすように頭を撫でて縛られた私を舐め回すように見た。
髪の先から足のつま先まで身終えるとうっとりと頬を高揚させて、こう言うのだ。
「さぁ、出掛ける準備をしようか。足の縄は解いてあげるからね」
誰もが見惚れる最上の微笑みを浮かべながら、この王子は手の縄は解いてくれないらしい。侍女らが部屋に入ってきて早々に準備を整え始めた。それに見向きもせずに私の足首に巻かれた縄を解くシェルベート。
悪魔か…!
足首には赤黒くなった縄の痕があり、シェルベートはそれさえも愛おしく撫でる。
「赤くなっちゃったね、痛い?」
そう問うシェルベートの爪が私の赤くなった縄の痕に突き刺さった。その一瞬に顔を歪ませはしたものの、我慢する。ツゥ…ッと赤い血が浮き出てシェルベートは楽しそうにその血を啜り出す。
髪色はいつの間にか白くなり、瞳は真っ赤になっていた。
一国の王子が違う世界で普通の高校生やってた女の足首の前に跪いて舐めるなど、どんな絵空事だろうか。
普通の絵本よりもディープ過ぎて子どもに見せられないぞ。まったく!
舐められ啜られキスをされ、私の足首を好き勝手やらされながらプンスカする私もどうかと思うが、シェルベートが満足するまでその行為は続いた。
「あ、ついつい時間を忘れてしまったよ。ユキノの血があまりにも美味しくて…ごめんね?ユキノ」
ずるいぞ、その顔は。この確信犯め!
艶やかな笑みに私は声を出せず、シェルベートによってベッドから降りた。その刹那、ドアを軽くノックする音が聞こえる。
「ミカエルか」
「出発のご用意が出来ております。」
「ユキノも同行することになった」
「左様でございますか。」
ミカエルさんは私を一瞥し、残念そうに眉を寄せた。
あったあった!このシーン!ゲームではミカエルの心情もあったんだよね。確か「チッ、残ると仰って頂ければ、私が優しくお相手させてあげたというのに。悲しいですね」と色艶に言っていた。いや、もう鼻血ブーだ。
まぁまぁミカエルさんよ、そんな睨まないで私は視察に行ったときに消えるからさ。寧ろ喜んでよね?
そんな思いを込めた眼差しを向けるが分かるはずもなく、ふいっと部屋を出て行ってしまった。
私はミカエルさんの行動に気にも止めず、頭を整理してこれからのことを思い出す。
まず視察場所に着くと、渋々だが王子は主人公の手の自由を奪っている縄を解く。そして、生誕祭をしていると王子が告げ民と混じって少しの間踊る。
そのあと…あれ?確か主人公がナンパされるはずなんだけど詳細が思い出せない。
唯一の逃げ道が思い出せないのであれば仕方が無い。詳細がなくとも、逃げれる時に逃げてやる。
ただ…どうして急に思い出さなくなったのだろうか。
僅かな疑問を胸に、その疑問は視察場所に着くまで晴れなかった。
そして、詳細も思い出すことはなかったーーー。
次回は違う土地で遊びラブラブし、逃走します!
読んでくださりありがとうございます。
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