痛がるところ見て楽しむ変態め。嫌いだ
すみません。休みすぎてしまいました。
忘れられていないか心配です。
少しグロテスクな部分があります。
お気をつけてご覧ください。
殺気を組み込んだ切れ長の真っ赤な瞳を目にし、ミカエルの側近ルートが揃った。
ミカエル・フランソワ。容姿端麗で冷めた印象を持つ紫の瞳。銀髪は肩ほどで切り揃えており、頭脳派のイケメンである。
ーー側近ルートは2つあった。
1つは、 側近であるミカエルが密かに主人公のことを想っていて、王子のシェルベートがミカエルを惨殺し、奈落の底へ突き落とすというシーンと、もう1つは側近が同性愛者のパターンである。これは王子ルートを攻略した際に分かることで、王子を一方的な同性愛の対象とした側近は、異性愛者の王子に愛される私を嫌い影で殺そうとするのだ。
王子に女の影が少ないのは、側近が殺しているからである。ストーリーの物語には出てこなかったが、閑話などのボイスストーリーでは側近ルートのことがあり、側近の従順な声で「王子に近付く女は排除した方がいいでしょう?」と軽々な声音で言っていた。
ゲームであった頃は、その閑話ボイスストーリーを聞いて、まじ最高っす!ミキャエルゥゥ!とホモ万歳三唱をやっていた時期もある。殺戮タイプキタァァア!とベッドにダイビングして枕に無駄にパンチした時期もある。
いや、だってさ。美形だよ?ヤンデレだよ?殺しちゃった☆ペロッて可愛らしく舌を出すような殺戮タイプだよ?
これが萌えないで腐女子が語れるかってんだよ!!
ホモ最高。王子ルート最高。なんてジーンと目頭が熱くなっていた時期もあった。
だが、現実ではノン殺戮!ノンホモ!いや、ホモ自体はいいけど、そのせいで私を殺そうとするのやめよう!?
全てを知った私は、ミカエルさんを一瞥してグルグルと思考を巡らし心の中で叫び声をあげる。
同性愛者に殺されて人生サヨナラなんてしたくない。ミカエルさんにとって邪魔なのは私だ。故に私が王子の前から消えればいい。
戦っても勝てる相手ではないことぐらい重々承知の助!私はそんなにバカではない!
…結局、また逃げるという選択肢だけどコレが1番いい判断だと思う。また捕まえられても、何かが変わるかもしれない。ミカエルさんだって、思い直せるかもしれない。
ただの理想だけど。
私は真っ直ぐ前を向いて、第二回チキチキ逃走deathゲームじゃぁああ!と右手を大きく空へ突き上げた。
「ユキノ、どうしたんだ?」
私を変に思ったシェルベートが小首を傾げて聞いてくる。
「ううん、何でもないよ」
ふんわりと微笑み、また貴方の前から消えるね。と心で言った。
ベッドから身を起こして、大量出血を起こした首を手で触る。
え、気持ち悪い。それはまだ完治出来てなくて、縫い合わせたような痕もあり私が少し押すだけで白い包帯が赤い血で滲むほどだった。
「…本当なら僕がユキノにその傷を負わせる筈だったのにね」
私の手を掴み、握りしめるシェルベート。
ん?あれれ?
「シェ…、シェルベート??」
「…痛い?ユキノ。そうだよね、あんなに血が出てたんだもの、ルシファーは勿体無いことをしたよね。もっとぐちゃぐちゃにして殺しておけば良かったかな?」
そう言ったシェルベートは私の怪我した首筋にソッと指を這わす。
そして、ぐちゅり…と回復していない傷の中に指を突き入れた。
「い、やぁああ!シェルベート…!痛い!やめて!」
生身で傷付いた皮膚に無理やり入れられた物体に想像を絶する痛みが私を押し寄せる。
考えてみて欲しい、転けて擦った膝小僧に指をぐちゅぐちゅと入れられるのだ。
死にそうなほどにヤバイ。痛すぎて頭が真っ白になる。
「ふふ、その歪んだ表情は堪らなく僕をそそらしてくれるね」
恍惚した瞳で私を見つめるシェルベートに対して、行っていることは余りにも酷く無慈悲だ。
あぁ、そうでした!所詮は乙女ゲームの世界。ヤンデレでしたね!こんなところ、さっさと抜け出して、普通の男と再婚してやる!
私は途轍もない苦痛に涙を滲ませ、そんなことを思っていたのだった。
私の新たな決意とは裏腹にシェルベートは色気のある声で私の上に乗ってくる。
「どうしよう、もう我慢出来ない」
漸く傷から指を離し、シェルベートは指の先端をペロリと舐めた。
「シェルベート…ま、さか」
「大丈夫、ミカエルなら下がらせたから」
にこりと微笑んだシェルベートに嫌な予感しかしない。
私の腰当たりに乗っているシェルベートは、今度は優しい手つきで傷に触れてきた。
予想がついてしまう。シェルベートはこの後、絶対に私をヤるつもりだ!
さすがに傷口から血は啜らないと思うけど、やだよ?無駄に抵抗出来なそうな上に、ルシファーが死んだっていう知らせの後…ヤる気分じゃないくらい察してよ!シェルベート!
そんな私の想いは届いていないというように、着々とシェルベートは服を脱がして行く。シェルベートも自分の上半身を脱ぎ、その美しい身体のラインに鼻血が出そうになったことは秘密である。
「ユキノ…」
私の名前を愛しそうに呼ぶシェルベートの瞳は既に陶酔しているようだった。
シェルベートの髪が白髪に変わり、瞳が赤く染まり、何度も何度も私の名前を繰り返すシェルベート。
一方的に口付けされ、それは長く、深く、甘い…。唇への口付けは次第に首筋、鎖骨、胸へと下におりていく。
「っは…シェル、ベート」
だらしなく口の端から流れる唾液すらも舐めとって、シェルベートの赤い瞳は、どこで血を啜ろうか悩んでいるようだ。
啜る場所が決まったのか、シェルベートは左胸に口付けをし、舐めた。
心臓に近い左胸、本能がそうしたのだろうか。
でも、ちょっと待って欲しい。胸って普通牙を立てないところだよね。舐めるのはあるけど…おっと。
私の心配はあれだ。胸って皮膚が薄い。イコール?痛いってことではないのか…と。
「シェルベート、待って。そこは…」
私がシェルベートの胸に手を当て、腕をつっかえ棒にしていると、パシッと腕を掴まれて頭上で一括りにされる。
「待たないよ。暴れないでね?痛いと思うから」
暴れるも何も、両腕はシェルベートの片手によって頭上で拘束されてまともに動けるはずがない。
私は為す術もなしにブツリ、とシェルベートの牙を受け入れたのだった。
「ッッ!」
「はぁっ、熱いね。沸騰してるみたいだ。ユキノの血は本当に美味で、癖になりそう」
それだけまた言うと再度同じところに牙を立てて啜られる。
ジュルジュルと卑猥な音が部屋に響き、ゴクゴクと飲み干す音まで聞こえた。
私の血を啜っている間、シェルベートは左手で私の胸を弄る。熱が身体にこもってきて、荒々しい息遣いへと変化していく。
「シェル、ベート…」
「いいね。興奮するよ、ユキノ」
私の高揚した頬に手を添えて、太ももを持ち上げたシェルベートはそのまま私の中へと入って行った。
かき混ぜられ、意識が飛びそうになる。
明日はまたシェルベートのルートに戻っているといいな。
でないと、予測できないシェルベートの行動に心身共に持つことができない。
甘い甘い口付けをされて、顔にかかっていた髪を払い美しすぎるシェルベートの顔が目の前にある。
自然とシェルベートの頬に手を添えて、その綺麗な顔を拝む。
はぁ、顔は物凄くタイプ。ゲームだった頃なら何されても許しちゃう!なんてくねくねと腰を動かしたものだ。
……しねよ。その時の私
私はシェルベートに抱きしめられたまま、深い眠りへと誘われた。




