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銀杏と書いて、イチョウと読む。美少年登場

大変お待たせ致しました。

美少年が登場します、ヒロインがとても残念なキャラになってきます。

「…入るか」

「そうね」


 香夜に後押しされて社の中に入ると、銀髪の黒い翼を持つ子どもに出迎えられた。

 髪と同じ銀の瞳が私を見上げニコリと微笑む。


「姫様ですね?お初にお目にかかります!私の名前はイチョウ。姫様の身の回りは任せて下さい!」


 一気にぺこりと頭を下げたイチョウ君はゲームキャラクターじゃない。ゲームしていた頃一度も出てこなかったのだ。

 え?え?やっっばいんだけど、何このきんきらりんの美少年。え?オカズか何かですか。わ、私にショタの趣味はない…と思ってました!いやぁ、穢れとか知らないその無垢な瞳。ぷっくりと色付いた頬はスリスリしちゃっても良い範囲ですか?桃色の唇はまだ味を知らないんだろうな。きっちりしているところを見ると、しっかり者なのかな?少しぐらいエロチックな部分があると、私がご奉仕しちゃいたくなっちゃうんだけど、残念ながらないみたいだね。うーん、残念だ。まっことに。いや、でも身の回りのお世話をしてくれるんだから毎日この天使くんに会えるんだね?天国か何かですか?翼は真っ黒だけど、そこがまた小悪魔で萌えます!!

 初めて見た美少年に私は言葉が出ない。


「相変わらず、気色悪いな」


 おっと出ていたようだ。横から香夜のドン引きしている顔がよく見える。さも美少年は小首を傾げた。私の言葉の半分も理解できなかったのだろう。可愛すぎるんだよおお!行動の一つ一つが!!

 うん、ごめんね。私はその純粋さが小悪魔に思えてくるよ。


「イチョウ、この馬鹿は無視していいぞ」

「え!?姫様にそのような言動は無礼ですよ!香夜様!」


 私の首根っこを掴んで、イチョウ君に距離を取らせる香夜をイチョウ君が慌てて宥める。


「そうだー、姫様だぞう!」


 イチョウ君に便乗して片腕を上げ抗議する私に、香夜は意気消沈したような顔になり私をおろした。


「気をつけて下さい?姫様は大切な血なのですから」


 おっとー?分かったぞう?君も蘭月同様、私の価値は血だけだと思ってるね☆

 両手の人差し指を向けてウインクする私に怪訝な表情をどうにか出さないようにしようと頑張っているイチョウ君。はい、ごめんなさい


「ーーもういい、さっさと座敷に通せ」

「は、はいっ!」


 香夜の苛立ちに怯えながらイチョウ君は見慣れた座敷に通してくれる。


「で、では、御用がありましたらお呼び下さいませ」


 言うや否やスタコラと廊下を早歩きで逃げてしまった。

 私はなおも横にいる香夜に向かって頬を膨らませる。


「香夜が睨んだりするから!」


 逃げちゃったじゃん!とぷいっと顔を逸らしてやった。香夜はガシガシと頭を掻いて、決まり悪そうに私の頭に手を置く。


「悪かったよ」


 下からのアングルでも香夜はかっこいい。ちくしょう、そのかっこよさに免じて許してやることにした。

 香夜も何やら用事があるらしく、座敷を退出して、1人では広く感じる座敷の真ん中で大の字で寝そべってみる。うん、暇だ。

 そのままゴロゴロと座敷を往復していると、何かに衝突した。


「蘭月!?」


 綺麗な鍛えられている足を見上げ、そこには香夜と同じ顔をした短い髪の毛を靡かせて金の双眼が私を見下ろしている。


「芋虫がいると思って排除しようと近付いてみたら、なんだ姫様でしたか」


 え!何気すごく酷いことをいわれてる!


「無防備だね、姫様は…」


 そう言って蘭月は私を跨ぎ、ガンッと頭を押さえ付けた。えっ、まって。乙女に与える強さじゃないよ!?何ですか??お怒りMAXでしょうか!?


 私の困惑に蘭月の綺麗な顔が容赦なく近付いて、その整った唇が私の首筋の押し当てられた。


「ツゥ…ッ!」



 強く吸い付かれ、頭を押さえ付けている痛みと共にわけが分からない。


「こんな無防備じゃあダメだよね、俺がしっかり躾してあげなくちゃ」


 いやいやいやいや!怖い怖い!なに!?躾っていったよ!?あっ……牙が


 グサリと私を突き刺した。香夜のばかやろう、何が大丈夫だ。だよ被害でたじゃねーか!痛い痛い。容赦なく血をすすられて行く。



「…ハァ、血だけは美味なんだよね。また…喰べに来るよ」



 たらりの流れる血を舐めとった蘭月は立ち上がり、切れ長の金の瞳を向けて去っていった。



「っ、2度とくんなああああ!!!」



 ユキノの叫びに蘭月が吹いたのは言うまでもない。

 蘭月は楽しいおもちゃを見つけた。と少し足取りを軽くして自室へ行ったのだった。

「蘭月様!血を……血をお与え下さい!このままでは、皆と同じように固まってしまいます!」


 差し出された半分固まりかけている少女を見て、蘭月は楽しい気分が一転としてくもった。


「あぁ。」


 頷くだけにして、脇目も振らずに自室へこもる。

 イライラするのだ。

 あの欲望が強く漲った大人達。子どもは建前で自分が美味しい汁をすすろうと思う魂胆が丸見えなのである。


「どうしたものか……」


 蘭月は頭を雑に掻き揚げて、これからの対策を練るのであった。

 心に思うのは反応が面白い黒髪黒目の姫様だけーーー。

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